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わたし、異世界でも女子高生やってます  作者: 小織 舞(こおり まい)
ノーマルルート
90/280

ルート分岐 5

 キャンディの部屋では、また四人で集まって、今度はギースレイヴンでの話をした。わたしの身に起こったことじゃなくて、主にあっちの文化や見聞きしたこと、地図から読み取れた情報を話した。


 その後は久しぶりに会ったチョコとキャラメルに体当たりで抱きつかれたり、部屋に隠れてるアイスくんのためにコッソリ夕飯を運んだり、ちょっとしたことが楽しかった。


 キャンディの部屋で、一緒のベッドで寝た。ふたり、おしゃべりしながら遅くまで起きてた。いい加減に寝ないとって言いながら。


 だから、これは夢なんだと思う。

 わたしは真っ暗な海岸にいた。どうして海岸ってわかるかって、空には月、押し寄せる黒い波の音、そして目の前には流木に腰掛けて焚き火をしているお婆さん。


「ようこそ」

「えっ。あの、こんばんは。でも、わたしはべつに、ここに来たかったわけじゃなくて……」

「私が呼んだんだよ。異世界の、少女……」

「ええっ!?」


 わたしはお婆さんのことを改めて見てみた。古いフェルトのショールを全身に巻きつけているからよくわからないけど、裸足で、髪の毛もゴワゴワしている。しわくちゃのお婆ちゃんだ。でも、真っ赤な目がキラキラしていて、そこだけすごく若く見える。


「あの、わたしはアスナっていいます。お婆ちゃんは?」

「私は火の精霊、ジフ・オン。……氷の城に行きたいんだって? 本気で?」

「本気です。だって、そこには大事な友だちがいるから。会って話を聞きたいの」

「そう……。今すぐ、会いに行けるなら、行きたい?」

「それはもちろん!」

「じゃあ、頼んで」


 そっか、精霊はお願いを勝手に叶えられないんだっけ?


「わたしを連れてって、お願い!」

「わかった」

「あ、そうだ、行くなら皆も一緒に……」

「ダメだよ。連れていけるのは、そう、貴女の他にはひとりだけ。誰かひとりなら、連れていってあげようね。どうする? 精霊が気まぐれなのは知っているはず、今この機会を逃せば、次はないよ」

「……夢、じゃ、ないの?」

「まだ夢だよ。だから、今すぐに決めて」


 うう、誰かひとり、かぁ。ひとりって言われたら、逆に悩む〜!

 わたしは……


▶ひとりで行く

▷キャンディと行く





 ひとりで行こう!

 パパッと行って、パパッと帰ろう!


「決めた。わたし、ひとりで行きます! 支度するからちょっと待っててください」

「いいよ。それに、敬語なんかやめておくれ。なんだか、くすぐったいよ」

「じゃあ、普通にしゃべることにするね。着替えて、ハリセン持って、伝書機持っていくだけだから、すぐすぐだよ」

「あったかい格好をしておいで。一応、私の能力があるとはいえ、周りは氷ばっかりなんだから」

「ありがとう、シフォンさん! ところで、ひとつ聞いてもいい?」

「なんだい」

「シフォンさん、ここで何してるの?」

「ヘドロを焼いているんだよ。これで無害になるわけじゃないけど、そのままにしておくと臭いじゃない」

「確かに」


 ヘドロは嫌だよね。でも、溜まっちゃうともっとダメだもんね。でも、なんでシフォンさんが?


「ところで私からもひとつ聞いてもいいかい?」

「うん」

「その……、シフォンっていうのはいったい……」

「あ。ごめんなさい、ジフォンさんって名前が、あんまり聞き慣れないもんだからつい、知ってる発音に寄っちゃって!」

「はぁ。まぁ、いいけどね……」


 よかった!

 水の精霊も名前呼びづらいよね。シャーベットさんだっけ。シフォンケーキとシャーベットって、相性悪そう。


「水の精霊シャーベ・スベルベルトはシャーベットなの?」

「言いにくくて……。っていうか、なんでわかったの?」

「夢だからだよ。さ、起きて支度して。一階に降りてきて。玄関の蝋燭の前にいるから……」


 その言葉を聞いた途端、わたしはキャンディの寝ているベッドの中にいた。本当に夢だったんだ……。そーっとベッドを抜け出して、ハンガーにかかっている制服に着替える。


 上着になりそうなものは……う〜ん、クリームくんにもらったマントくらいかな? 首周りにファーがついてるし、青い布部分はけっこう分厚い。


 リボン型の伝書機を着けて、ハリセンを持って、と。

 よし、準備オッケー!


 ごめんね、キャンディ。


 わたしは心の中で謝って、そっと一階まで降りて行った。すると、そこにはヒッソリとシフォンさんが立っていた。


「シフォンさん」

「シーッ、さ、おいで。蝋燭の火を通って、海岸まで一気に移動するから」


 わたしもシフォンさんも囁き声になる。シフォンさんと手を繋いだら、火の粉がふわっと舞い散って、見とれている間にさっきの海岸まで来ていた。焚き火が燃えてる。


「ここからは歩きだよ」

「えっ!」

「私は風の精霊ソダールのようには移動できないからね。さぁ、行こう」


 シフォンさんは焚き火の側のランタンを拾って海へと一歩踏み出した。

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