表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
わたし、異世界でも女子高生やってます  作者: 小織 舞(こおり まい)
ノーマルルート
81/280

すべては風の赴くまま?

 うう、本当はこれから先のことについてとか、お願いがあって話を振ったのに、クリームくんの生い立ちを聞いて泣かされてしまった……。


 この世界、過酷すぎない!?

 特に、頑張ってるひとたちの方がつらい目にあってる気がする。


「そろそろ仕事に行く。お前は部屋にいろ、アスナ」

「ま、待って! ひとつだけお願いがあるの……」


 立ち上がったクリームくんに、待ったをかけるわたし。

 このお願いが、重要なんだよ〜〜〜。


「言ってみろ」


 座りもせずに、クリームくんはわたしを見下ろしてきた。視線が冷たい……。


「あのね、ジルヴェストにいる友達に、無事を伝えたいの。だから、伝書機、貸してくれませんか」

「…………」

「ダメ?」

「伝書機って何だ」

「えっ!」


 わたしは伝書機についてクリームくんに説明した。途中から座って話を聞いてくれたんだけど、返事は素っ気なかった。


「無理だな。あちらの国まで手紙を届けるのに、現状、風船か何かを使うしかない。あちらは孤島だし、海路は暴れ海竜によって封鎖されている。そして、その空路を使う手段だが、結界によって断絶中だ」

「あうう〜〜〜」


 結界は!

 もうないんですけど!

 そんなことは言えない!


「あきらめろ」

「う〜〜〜。じゃあ、ね、外に出てもいい?」

「…………ダメだ」

「ちょっとでいいから! お願い! 逃げないから〜〜」

「ダメだ。俺様の部屋にいろ」

「ケチっ! じゃあ、見張りの人は部屋の外にいさせて!」

「……俺様の部屋で何をするつもりなんだ? ひとに言えないようなことか?」

「気が散るの!」


 クリームくんは「わからない」っていう顔をした。

 そこはわかれ!


「外に出してくれないなら、せめてひとりにして! クリームくんの部屋でオルゴール聞きながらお菓子かじって本でも読んでるからぁ!」

「……子どもか」

「子どもでいいもん!」


 わたしの主張にクリームくんはやれやれと首を振って、呆れた顔で許可してくれた。


 くっそう!

 でもこれも、ソーダさんと連絡を取るためなんだ!

 アイスくんが来てくれてもいいし! 殴るけどな!


「アスナに何か菓子をやれ。毒が入っていないものをな。この女を殺しても、俺様の損にはならんぞ」

「ここにいるひとたちのことは信頼してるんでしょう? わざわざそんなこと言わなくてもよくない?」

「勝手に聞いているかもしれないヤツに言っているんだ。俺様が憎くとも、この女を殺すタイミングは俺様に任せたほうがいいぞ。この国を少しはマシにしたいならな!」

「死刑宣告やめて!?」


 このカス〜!





 カス王子もといクリームくんがお仕事に行ってから、わたしはその王子さまの部屋にこもった。部屋の掃除をじっと眺めていたのも、毒殺対策と思うと涙が出てくるよね。


 わたしはワゴンいっぱいにお菓子とジュースを用意してもらって籠城だ! 窓を開けてソーダさんを呼ぼう!


「ソーダさぁん! いるなら来て!」

「いるさ」

「いたぁ!」


 いたよ!

 ギター片手にめっちゃ浮いてる!


「よかった〜〜〜」

「人間ちゃんは、あんまりよろしくない状況みたいだね」

「わたし、アスナです」

「そうだったそうだった」


 大丈夫かなぁ、このひと……ひと?

 でも、来てくれてよかった。わたしがクリームくんに「殺す」宣言されてもパニック状態に陥らずに済んだのは、こうして、助けに来てくれる当てがあったから。事実、来てくれたしね。


「ソーダさんにお願いがあるの」

「いいとも。だがその前に、君に謝りたいっていう子が来ているよ」


 だれ……?

 もしかして、アイスくん?


「おいでよルキック。今こそ言うべき時ってやつさ」

「ふえ〜〜〜ん、ごめんね、アスナちゃ〜ん!」

「えっ、なに?」


 いきなり足に抱きついてきたのは、アイスくんと一緒にいた三歳児くらいの、金髪の子だった。確か……光の精霊、クッキーくん!


「泣かせちゃって、ごめんね! アイスがひどいこと言ったでしょ? ボク、止めたかったんだけど、どうしたらいいかわからなかったんだよ〜〜〜!」

「あの場にいたの? 見えなかったけど……」

「隠れてたの。本当にごめんね。アイスのこと、嫌いにならないで〜」


 ……それはちょっと。

 無理かな。


 クッキーくんを撫で撫でしながら、わたしは何も言えなかった。


「アイスのこと許してあげて! じゃないと、あのまま出られなくなっちゃう〜〜」

「どういうこと?」


 その質問にはクッキーくんじゃなくてソーダさんが答えてくれた。


「昨日、アスナが大泣きしていただろう? それがアイスのせいだと知って、クォンペントゥスが怒ってしまったのさ。だから、彼は今、洞窟に閉じ込められているよ」

「ええっ、コンちゃんが?」

「そうなんだよ〜。だから、許すって言ってよアスナちゃ〜ん!」


 なるほど……。

 それは、ビックリだ。


「わかった、許してあげる。だから、クッキーくんはそれをコンちゃんに伝えてくれる?」

「ありがとう、アスナちゃん! さっそく行ってくるね〜」

「いってらっしゃ~い」


 パアッと笑顔を浮かべたクッキーくんは、金色の髪を揺らして、すごく嬉しそうに消えていってしまった。コンちゃん、これで許してくれるかなぁ?


「ソーダさん、あのね」

「おっと待った。説明役は苦手なのでね。ちょうどいい先生をお呼びしたよ、アスナ。闇の精霊、グルニムエマ・カロンさ!」


 ソーダさんはパチンとウインクひとつ。

 相変わらず、軽い! チャラい!


「あのね、それより、お願いがあるの。わたしの無事を、ゼリーさんに伝えてくれない? 詳しいことはさておき、とにかく、無事だってこと。伝書機は受け取れなかったの。今すぐここを動くことはできないけど、とにかく、ジルヴェストには帰るつもり。それから、向こうのことだけど……ううん、とりあえず、伝えてくれる?」

「お安い御用さ」

「もしかして、ゼリーさんからも同じことを言われてる……?」

「いやぁ、あれからジェロニモには会ってないよ。私も色々忙しいしね〜。アスナの声はよく聞こえるから、ルキックと一緒に来てみたけれどね」

「そう……。何度も来てもらうのは申し訳ないなぁ。伝書機、もう一度飛ばしてくれるように言ってもらっていい?」

「う〜〜ん。この城の作りじゃ、難しいかもだよ。さっきもひとつ、拾ったし。ちなみに、魔力切れでメッセージは消えているよ」

「あるの!? ちょうだい、次の連絡に使うから!」

「いいとも」


 リボンチョーカー型の最新機……!

 良かった、これで次に連絡したいときに使える!


「じゃあ、私も行くね」

「ありがとう、ソーダさん!」

「ふふっ、すべては風の赴くまま、さ」


 その風はアンタでしょうが。赴くまま、じゃなくて、さっさとゼリーさんのとこへ飛んでって!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ