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わたし、異世界でも女子高生やってます  作者: 小織 舞(こおり まい)
ノーマルルート
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王様・俺様・お馬鹿様?

 わたしが途方に暮れていると、遠慮がちなノックが聞こえた。

 ドアを開けると、その向こう側に見える映画のセットかというくらい豪華な部屋にも驚いたけれど、素敵な服を着た若い女の人が立っていて、「国王陛下がお呼びでございます」と落ち着いた声で教えてくれた。


 わたしは迷った。王様が呼んでいる、ということは行かなくちゃいけないんだろうなと思う。でも、寝起きだし、ちょっとシャワーでも浴びたいなぁというのが本音。せめて顔を洗って歯磨きして、髪の毛をとかしたい。シワになったスカートは諦めるから。


 メイドさんだかコンシェルジュ? だかわかんないけど、お姉さんはにっこり笑って、


「まずはゆっくりお支度を整えられるよう、お手伝いすることがあれば何なりと、お申しつけくださいませ。ご要求に答えられるよう精一杯のご用意をさせていただいております」

「あ、ありがとうございます……」


 うん、そう答えるしかできなかった。

 そこからはちょっとしたお菓子と紅茶でホッとひと息、歯を磨いたら大きくて素敵なバスルームに通された。なんだか花びらの浮いたお湯に浸かり、体を洗って出てみればシャンプーとリンスと爪のお手入れをされた。全身もなんだかお手入れされてしまい、仕上げにメイクアップとドレスアップ、ついでに髪型もアップに!!


 すごく贅沢な時間だった。

 断ろうとは思ったんだよ? でも、断るごとに「ではこちらにいたしましょうか?」って言われて傷ひとつないホールケーキがわたしのためだけに三つも四つも切り分けられたり、バスソルトの封がバンバン開けられたり……。


 あれは、あれは一種の脅迫だよ。断り続けることができる人なんているのかな。


 そんなわけで、自分がどうなったのか見せてもらえないまま、真っ赤なドレスに真っ赤な靴のわたしは王様の待つという部屋に連れて行かれた。


 王様については聞いても一切答えてもらえなかったんだよね。でも、王様っていうくらいだからナイスミドルだったりロマンスグレーだったりするのかな! 洋画に出てくる渋いオジサマだったら……! きゃ~!!!!


 いけない、いけない、顔がゆるんじゃう……!

 絨毯が敷かれた廊下の先、真っ白い扉には細かな模様を組み合わせた金属で飾られている。そして、その両脇には槍みたいな物を持った、まるでクルミ割り人形みたいな、おもちゃの兵隊さんのような格好をした男の人が二人。すごい……人形じゃない、本物だ!


「お客人のご到着でございます」


 思わずビクッとするくらい大きな声で、兵隊さんたちは完璧に言葉を重ねて叫んだ。すごい連携プレー。内側から扉が開いて、わたしは招き入れられた。ドキドキする、緊張の一瞬。


 中に居たのは、普通じゃ考えられないくらい真っ赤な髪の毛をした、わたしと変わらないくらいの男の子。そして銀髪だかよくわからない水色のうねった長髪を腰まで垂らしたお兄さんだった。…………ナイスミドルは?


「ディース、これが(くだん)の娘か」

「ああ、そうだよ。気に入ったかい?」

「まぁまぁ見れる顔をしている。いいだろう、その線で進めてくれ」

「ふふふ、わかったよ、オースティアン」


 赤髪の彼氏はまるで海のように深い青い瞳をしていた。

 傲岸不遜を形にしたようないけ好かない顔をしている。そもそも会話が気に食わない。いったい何の話をしているんだよっ!! 身長は180になるかならないか、きっとこのままつっこんで行けば顎に頭突きをお見舞いしてやれる、そんな高さだった。


 ディースと呼ばれた方は赤い髪より少し背が低い。こっちは何だか意地の悪そうな顔をしている。んっ? それってつまり両方性格が悪いってことなんじゃない? 女性に見えなくもないけどやっぱり男だ、声でわかるもの。そして……耳がちょっと、変わった形をしているような? 髪の毛に隠れてよく見えない!


「遠いところからよく来たな、異界の娘。アスナ……と言うんだったな」

「どうして、わたしの名前……!」


 ここに来て、わたし誰かに名前を言ったっけ?

 確か、自己紹介したのはアイスくんにだけだった気がする。


「ここにいるディースがお前の来訪を予知したんだ。だが、どこへ現れるかまでは正確な予測が立てられなかった。すぐさま騎士たちを向かわせたが、遅くなってすまなかった」


 赤髪のオースティンさんとやらが、わたしの目の前まで歩いてきた。さっと右手が伸びてきて、わたしの顎に添えられる。…………振り払いたい!!!


「ま、待って、あなたは……」

「ああ、紹介が遅れたな。オレはオースティアン、この国の王だ」

「…………!!」


 そ、そんな……!

 目の前のすかしたチャラ男が、王様!? うっそでしょう!!?

 じゃあ、じゃあ、わたしの理想のオジサマはどこよ~~~~!!!


 思わず口を開けて固まったわたしに、すかし男は言った。


「さぞかし心細かっただろうな。さ、こっちに寄れ、頑張った褒美にキスしてやろう」


 はぁっ!?

 頑張ったご褒美? キス? あったま沸いてんのコイツ?

 は~~っ、どんだけ自分に自信があるんだよ、このお馬鹿様は!! イケオジでもないくせに!!!


「ん~~、チェンジで!!」

「………………は?」


 あっ、いっけな~い、口に出ちゃってたか~!!

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