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わたし、異世界でも女子高生やってます  作者: 小織 舞(こおり まい)
ノーマルルート
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壊れたオルゴールの中に?

 朝、わたしはパッチリ目を覚ました。

 昨日はアイスくんに会って、ひどいこと言われて、そのまま泣きつかれて眠っちゃったみたい。頭もクラクラしてたしね。夢でお父さんに撫でられた気がする。


 ベッドはやっぱりクリーム王子のもので、王子さまは今日もグッスリ眠っている。こうしてると、ちょっと栄養状態の悪い子どもなんだけどなぁ。


 起き上がってビックリしたのは、首や足に包帯が巻かれていたこと。包帯を取ると、ガーゼが貼ってあって、はがすと薬の何とも言えない臭いがした。枕元の机には、水が入ったタライと布があった。もしかして、看病してくれたのかな?


 廊下に顔を出すと見張りの軍人さんがいたから、わたしの着替えを持ってきてくれるようお願いした。シャワー浴びたいもん! ここ、トイレとお風呂が一緒になってるんだよね。水洗トイレなんだけど、紙がなくて、ホントに水洗なんだよね……シャワーがあって助かるわぁ。でも、ウォシュレットはもうちょっと進化してくれていいよ。


 わたしが最初に落っこちたジルヴェストとは別の意味で文明がすごい。向こうは魔力で動く魔工機械ばっかりだったけど、こっちはぜんぶ電化製品! どこかに発電施設があるんだわ。精霊がいて、奴隷もいるような世界なのにね。


 シャワーを浴びてスッキリして、時計を見たら朝の六時半だった。でももう、お腹ペコペコ。さっさとクリーム王子を起こして、朝ごはん食べたい。今度こそ、食堂で美味しい朝ごはんをね!


 王子の服を取りに行こうとして、ふと、オルゴールに気がついた。宝石箱みたいにキラキラしてて、手回しの取っ手がついてるやつ。こんなの、前からここにあったっけ?


 どんな曲が入ってるのかな……。

 ちょっと気になる。


 わたしはちょっと大きめの、横が三十センチくらいあるオルゴールを手に取った。取っ手を回そうとしたら回らない。開けてみても鳴らない。これは……なんか噛んでるだろ〜。


 わたしは底から開けて、オルゴール部分を確認することにした。机の引き出しを探って、先が細くて丈夫な棒を探して……と。


 開いた!

 部品が壊れてるとかじゃないといいけど。


 中にはやっぱり物があった。

 これは……写真?

 折りたたまれたそれは、白黒の、古いスナップ写真みたいだ。


 中を開いてビックリ。わたしは思わず自分の口を押さえていた。そこには、アイスくんによく似た大人の男のひとが写っていたから……。


 写真の裏には何も書かれてはいなかったけど、オルゴールの内側には『クリエムハルトへ、愛をこめて』というメッセージがあった。


 このオルゴールは確かに王子さまの物で、それなのに、アイスくんの家族なんじゃないかと思われるひとの写真が入っていた。これって、どういうこと?


「ん……」

「!」


 そのとき、王子さまが起きた気配がしたから、わたしはとっさにスカートのポケットに写真をつっこんでしまった。オルゴールは……いいや、見せよう。


「何を……してる」


 眠そうな声がする。もしかして起き抜けに弱いのかな。


「おはよう。昨日はありがとう」

「…………」

「わたしはさっき起きて、シャワー浴びたとこ。食堂に行く? あ、そうそう、オルゴールだけど……」

「触るな!」

「ごめん、もう触った。直ったよ」


 クリーム王子はベッドから飛び降りて、こっちへ走ってきた。そして、わたしの手からオルゴールを取り上げた。底蓋はまだ開いたままだ。


「壊したな!」

「壊してないよ、ここ、開けただけ。中を綺麗にしたから、また鳴るようになったよ」

「そうか……」


 クリーム王子はじっとわたしを見上げている。

 なんだねなんだね。


「その……怒鳴って、すまなかった。…………がとう」

「どーいたしまして!」


 すっごく小さい声で、よく聞こえなかったけど、きっとこれは「ありがとう」だね! うんうん、いい子!


「頭を撫でるな!」

「ごめ〜ん。着替えてごはん行こうよ」

「……お前、具合は?」

「もうすっかり良いよ。大丈夫」

「アイスシュークのことはいいのか」


 ……良くはないけど。

 それはもう、仕方がないかなって思ってる。


「もう、どうにもならないことだからね……」

「そうか。ならもう悩むな」

「あのね」

「工場は、止めた。一時的にだぞ。別に、お前に言われたからじゃない」

「へぇ〜! そっか!」

「嬉しそうにするな。お前のためじゃないぞ」


 そりゃ、別にわたしのためにはならないことだけどさ〜!


「それで、空が青いのね!」


 格子越しに見上げた空は、とても青くて綺麗だった。

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