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わたし、異世界でも女子高生やってます  作者: 小織 舞(こおり まい)
ノーマルルート
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首輪の効果は絶大です?

 う〜〜〜ん?

 シャリさんは千年前に結界を作って引きこもってた。それはたぶん、確かだ。本人も似たようなこと言ってたし。


 それが二百年前に暴れ海竜を放流してギースレイヴンをめちゃくちゃにしたって? なんで?


「シャリアディースはなんでそんなことしたの?」

「俺様が知るか」

「それもそっか」


 っていうかね、さっきから情報量が多すぎるんだよ。

 奴隷が来てないとか、新兵器とか、魔力値の測定とか。工場のことも気になるし。


 そこへ千年前の誘拐事件のこととか暴れ海竜って言われてもね……。

 正直、どこから手をつけたらいいのかわかんない。


 ため息をついていたとき、クリーム王子がわたしに向かって右手を突き出してきた。「止まれ」ってやるみたいに。


「なに?」

「シャリアディースの庇護下にあったのだろ? あの男に関するすべてを、吐け」

「えっ、そんなこと言われても……困る」

「言わなければ魔力で作った氷の槍がお前を貫くぞ」

「!」


 脅し!?

 こいつホントにカスだ〜〜!


「……何が知りたいわけ」

「だから、すべてだ、すべて!」

「それはいいけど、具体的に聞いてくれたほうが答えやすいでしょ! あ、あと、わたしの質問にも答えてくれる?」

「断る」

「即答!?」


 くっそ〜〜、顔色ひとつ変えない! 暴君め!


「わかったわよ。シャリアディースは、あの国で宰相をやってるの。誰にも破れない結界を張っていて、この国からの攻撃を警戒してた。ここは魔力の枯渇した死の国で、兵器を作って、他の国を侵略してるんだ、って。魔力を奪い返すって言ってたけど、シャリアディースが溜めた魔力はあの国のひとたちから吸い上げたものだよ? それに、結界を維持するのにも苦労してたみたい。この国の魔力の枯渇は、本当にアイツのせいなの?」

「……魔力がどこから来たものかなんて、どうでもいい。アイツが溜め込んだ魔力が必要なんだ」

「シャリアディースに奪われたから? 他の方法じゃ無理ってこと?」

「うるさい! お前はただ俺様の質問に答えてればいいんだ!」

「暴君!」


 わたしの言葉に、意外にも王子さまはひるんだ。

 そして、顔を真っ赤にして怒り出した。


「黙れ! 何も知らないくせに!」

「知らないわよ! 知らないもん……! そっちだって、わたしのこと知ろうともしないくせに……」


 我慢していた涙が、ひと粒ポロッとこぼれちゃった。

 わたしはあわててそれを袖でぬぐって、カス王子に向き直った。


「アンタはわたしの血と心臓を使って、大地を浄化するつもりだろうって、この国の人間が言ってたわ。さっき、わたしの言葉を否定しなかったもんね。そういうことなんでしょう? シャリアディースから魔力を奪って、この土地を甦らせたいの?」

「……そうだ」

「そう。残念だけど、それは無理だと思うよ」

「何故だ」

「結界を破れないでしょ?」


 カス王子はムッとした表情で黙った。図星だね。

 本当はもう結界はないけど、そう思わせておいたほうがいい。今は。


「魔力がどうとかは知らないけど、この国を何とかしたいなら、まずは工場を止めたら? ひどい空気だもん。それにきっと、水も汚染されてるはず。大地が死んでるのは公害のせいじゃないの?」

「……コウガイ?」

「そう。工場から出る煙や排水のせいで人間の住める土地じゃなくなっちゃうのよ。今は建物の中にいるから感じないけど、外はひどかった。病気になっちゃう」

「…………。少し席を外す。どこへも行くなよ」

「はいはい」

「結界について知っていることを話してもらう。よく思い出しておけ」


 そう言って、こっちを見もせずにカス王子は行ってしまった。

 難しい顔して、何か考えてたけど、どうするつもりだろう。


 それにしても……、泣くつもりなんてなかったんだけどな。

 誰もいない部屋で、つい、ため息が出ちゃう。わたしは両手で頬をバシバシ叩いた。


 泣いても解決なんかしない。

 殺されるかもしれないけど、それに怯えてちゃ前に進めない。


 そうでしょ?


 きっと、助けが来る。

 きっと……。


 もしかしたら、ソーダさんかコンちゃんが来てくれるかもしれないし。……アイスくんが、連れ出してくれるかもしれないし。

 

 だから泣いてる場合じゃないの。

 ここで起きることのすべてを、見て、聞いて、そして……ジルヴェストに帰ってから皆に伝えなくちゃ。


 いざ本当に殺されそうになったら、こっちが先に花瓶で殴っちゃうんだからね! その気概でいかなくちゃよ!


「よしっ! そうと決まれば!」


 わたしは部屋の中を見回して武器になりそうなものを探した。ちょうどいい具合に折りたたまれた新聞紙があったから、それでハリセンを作った。持ち手の部分は、細い紙紐があったからそれでグルグル巻きにする。不格好だけど、不思議と手に馴染む!


 武器を手に入れたから、あとは首輪がどこまで効力を発揮するかも調べておかないとね。カス王子の命令は「どこへも行くな」だったから、とりあえず部屋から出てみよう。


 鍵は……うん、かかってない。

 わたしはそのドアを開けた。


「ん……、ダメ、だ……」


 足が動かない……! あと一歩で廊下に出られるのに!


 やっぱり、この首輪のせいだよね……。けっこう、効力あるんだ、これ。どう頑張っても、動けない。


 そうだ!

 誰かが、魔力をこめれば首輪が外れるんじゃないかって言ってたよね!? じゃあちょっとやってみよう!


 魔力をこめるっていうのがよくわかんないけど、わたしは「外れろ、外れろ!」って念じた。わたしの魔力はとても多いみたいだし、ちょっとくらいやり方が悪くても、結果が出たり…………しないな。しないじゃん! 嘘つきぃ!

 

「あ〜あ。どうしよう……」


 わたしは近くにあった椅子に座り込んだ。そうすると、つい、ため息が出てしまう。うつむいてしまう。そんなとき、小さくわたしを呼ぶ声がした。

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