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わたし、異世界でも女子高生やってます  作者: 小織 舞(こおり まい)
ノーマルルート
74/280

奴隷始めました…?

 誰かの苦しそうな声で目が覚めた。

 ここ、知らない部屋だ……。


 寝ぼけた頭で周りを見回して、ふっと、ベッドの中にもうひとりいることに気がついた。カスタード色の髪の毛……王子様だわ。ウンウンうなされてる。頭をヨシヨシしてあげたら、少し収まったみたい。


 今がチャンスかな。

 ベッドを抜け出そうとすると、ぐっと抵抗がある。振り向くとクリーム色の王子様がわたしのパジャマを握りしめていた。


「行かないで……父上……」

「……しょうがない、か」


 わたしは諦めてベッドに入り直した。クリームくんを安心させるように背中をポンポンして、ステータスを呼び出す。昨日は結局、見られなかったもんね。まずはクリームくんのを確認しようかな。


挿絵(By みてみん)

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

【名前】クリエムハルト

【性別】男

【年齢】12

【所属】ギースレイヴン国

【職業】王子

【適性】恐怖政治

【技能】◆この項目は隠蔽シールされています◆

【属性】暴君

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥


 ……いやこれ、まんまじゃん。

 なにこの、適性。恐怖政治ってダメじゃん。ああ、でも、国民を奴隷にしてこき使ってるんだっけ?

 っていうか12歳……。12歳でこのステータスは、もう色々手遅れっぽいなぁ。どういう教育されてきたのよ?


 あと、属性が暴君なのがホントまんますぎて笑えない。その暴君に捕まっちゃったんですけど!

 

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

【名前】久坂 明日菜

【性別】女

【年齢】17

【所属】ギースレイヴン

【職業】奴隷

【適性】※※※

【技能】お菓子づくり

【属性】ツッコミ

【魔力】5/100(%)

【備考】シャリアディースによって連れてこられた・クリエムハルトの奴隷


 ☆ ☆

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥


 ぎゃ~~~~~~~!

 わたし、奴隷になってる~~~~!?


 嘘でしょ……こんな、首輪ひとつで……。

 わたし、どうなっちゃうんだろう。これが外せなかったら、このままずっと、ここに……?


「そんなのヤダ! 考えよう、どうするべきなのか……」


 わたしはステータスを確かめた。所属と職業、それから備考欄が変わってる。嬉しいことに、一度結界の外に出て底を尽きかけていた魔力が、ここにきて一番回復してる! どうして!?


 それから、星が増えていた。

 白の星ってことは、さらに開いて中を見ることができる! わたしは白い星をタップした。

 

 挿絵(By みてみん)


「これって!」


 ステータス画面に表れていたのは、たぶんギースレイヴンの地図だ。大まかでしかないけど、前にシャリさんに見せてもらったのと同じ。わたしがいるのは、この、黒いモヤの中だな……。もうひとつの星には、わたしがいたジルヴェストの地図があった。スノードームみたいな、あの国の。


 まあ、そっちはいい。

 問題はこのギースレイヴンの地図ね。見えにくいけど、モヤの中に丸い点がある。きっとこれが今いるお城。前に、ソーダさんが連れてきてくれた丘が、地図の一番左端……縮尺けっこう大胆だなぁ。丘の向こうに林があって、その先はすぐ海だったんだね。ここが西に夕陽が沈む世界だとすれば、この地図の上がそのまま北だ。


 わたしが連れて行かれた村の位置はよくわからない。建物が書き込まれている場所はあるけど、規模が掴めないもん。わたしもあの村に長くいたわけじゃないし、ちゃんと見て回れなかったから。


 兵器を作ってるっていう工場は、この、モヤが一番濃いところかな? できればこの目で一度見ておきたいけど……。わたし、この城から出してもらえるんだろうか? それとも……。


 あの奴隷たちのリーダーが言っていたことを思い出す。


『王子はあんたの心臓を取り出して、血を撒いて大地を浄化する気さ! そうしたらもっともっと俺たちから毟り取れるからな!』


 …………わたし、殺されちゃうのかな。お母さん……。

 

 じんわり滲み出てきた涙をぬぐう。

 ダメ、泣いたら。この子が起きちゃう。それに、今泣いたら、わたしきっと立ち上がれなくなっちゃう。泣くならせめて、もっと安心できる場所で……。


 そのとき、クリームくんがモゾモゾ動き出した。やっぱり起こしちゃったのかな。瞼が開くとオレンジ色の瞳が現れる。宝石みたいで、綺麗なんだよね。瞳だけは。


 クリームくんの表情が、すぐにギュッと不機嫌になった。


「……貴様、馴れ馴れしいぞ? わきまえろ」

「なっ」


 コノヤロー!


「アンタがわたしのパジャマを離さなかったんじゃないのよ!」

「起き抜けに大きな声を出すな、バカ!」

「バカはそっちじゃないの! このカス! カス王子!」

「まだ言うか貴様! その口、縫い付けてやろうか!?」

「そっちこそ!」


 黙ってれば可愛いのに!

 ったく、まだ子どもだからと思って側にいてあげたのに、生意気!


 わたしたちはいがみ合って、それからお互い顔を逸した。カス王子は立ち上がって、それから大きな声を出した。


「あ〜〜〜っ! もう昼過ぎじゃないか! どうして誰も起こしに来なかった!?」

「えっ、そうなの?」


 時計を見れば、確かに十二時を過ぎてる。……急にお腹が空いてきたな〜。


「ごはんは?」

「クソッ。着替えて食堂に降りるぞ」

「着替えてって、服は?」

「俺様の服はクローゼットだ、取ってこい」


 はぁ? 服持って来いって?

 まさか着替えさせろとか言わないよね? なにこのお子様。


「そうじゃなくて、わたしの服は?」

「そんなの知るか」

「はぁっ!? じゃあ、わたしはどうなるわけ? どこでお昼ご飯食べればいいのよ」

「………………」


 おい!


 カス王子は、枕元のベルを鳴らした。昨日みたいに。

 そうすると、部屋の中に軍人さんが入ってきた。


「食事をふたり分、ここに届けろ」


 それを聞いた軍人さんは、何も言わずに一礼して部屋を出ていった。ふたり分……わたしの分もあるんだ、一応。


「ありがとね」


 お礼を言ったら変な顔をされた。

 なんで?

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