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わたし、異世界でも女子高生やってます  作者: 小織 舞(こおり まい)
ノーマルルート
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はちみつくんはサイテーだよっ?

 アガレットさんによるお話が終わって、生徒たちは続々と帰っていった。講堂の出口でひとりずつ魔力球に触っていたから、それを見ていれば誰が出てきていて、出てきていないのかはわかりやすかった。


 わたしはゼリーさんと出口のところで別れて、蜂蜜くんを探すことにした。あの綺麗な金髪はどこにいてもすぐに見つかるもので、すんなりと合流できた。ついでにチョコとキャラメルも見つけたので、寮まで一緒に帰ることにした。


「大変ですわね、魔工機械の故障だなんて」

「でも、主要な装置は問題なく動くのでしょう? しばらくの間キャンドルの明かりで生活しなくちゃいけませんけど、ちょっとだけワクワクしますわ」

「そうですわね! お風呂も、使われなくなって久しい大浴場を使うことになるのでしょう? とても楽しみですわ」


 え、何それすごい!

 いいね、なんか修学旅行みたい!


「アスナも楽しみでしょう」

「もちろんだよ!」


 寮の生活はほとんど変わらないみたい。食事も変わらないし。変化があったのはお風呂と、洗濯物も個人でやるんじゃなく記名して一括でやってもらうことになったくらいかな。でも、大きな変化は宿題がなくなって夜に勉強しなくて良くなったこと! これには大いに盛り上がった。キャンディは「お勉強ができなくなってしまうなんて困りますわ~」って言いそうだけど!


 自宅に帰る生徒には、夜間の外出禁止が言い渡されてたっけ。あと、食事もできれば学園の食堂を使ってほしいとか。細々したことを言い出したらキリがないけど、生徒たちはおおむねこの非常事態を「ちょっとしたイベント」として楽しんでいるみたい。


 こんな呑気で大丈夫かなぁと思うと同時に、パニックにならなくて良かったと思った。

 さて、わたしが一番怖いのは、ニコニコしながらわたしたちの会話に頷いている蜂蜜くんなんだよねぇ……。怒ってるかな? 怒ってるよね……。





 チョコとキャンディのふたりと別れてからすぐ、わたしは自分たちの相部屋へ引きずり込まれた。

 え~ん、キャンディが帰ってくるまで食堂にいたかったのにぃ!


「で?」

「で、とは……?」


 壁ドンされながら、わたしは怖い顔をしている蜂蜜くんに聞き返した。

 いや、だってさ、そんなひとことじゃ何が言いたいのかサッパリなんだもん!


「ふざけてんですか? 昨日、汚い格好で帰ってきて事情も説明せずにグッスリだったでしょうが! こっちはあの綿菓子頭と同室になっちゃって、誤魔化すの大変だったんですよ!」

「ごめ~~ん!」


 わたしは両手を胸の前に合わせて謝った。

 やっぱりキャンディ、寝る場所なくてわたしのベッドで寝たんだ~。それにしても、綿菓子頭ってなんか可愛くない?


「授業に来ないのまでは、まあ予想通りですよ。でもね、教師や職員、寮母さんまで集められてたあの講堂に来なかったのはどういうことなんです? 貴女、あのアーシェイ殿下が来たとき、後に続いて入ってきたんでしょう。しかも、あのゼリー頭と一緒に!」

「あううう」


 はい、そうです! まさか見られてたなんて……。しかも、ゼリーさんと一緒のとこまでバッチリ!


「僕には、話すべきなんじゃないんですか?」

「……わかってるよ」

「勝手にどっかにいなくなって、心配するじゃないですか。昨日だって、キャンディさんとふたりだけで話したいと言うから、信じて行かせたのに」

「ごめんね、蜜……ミッチェン。昨日のことと言い、シャリアディースに連れて行かれちゃったときと言い、心配ばっかりかけてるよね。しかもどっちも、蜜が側にいられないときだった。事情はそれぞれ違うけど、本気でわたしのこと気遣ってくれてるの、わかるから。だから、ごめんなさい!」


 あんまりにも近すぎる距離じゃ、深く頭も下げられなくて、わたしは目をつむって首をすくめる。しばらくして、うつむきがちになっていたわたしの頭の上から、深いため息が聞こえてきた。


「まったく……仕方がないひとですよねぇ、ほんと。貴女のせいばかりじゃないから、叱るに叱れないじゃないですか」

「蜜……!」

「昨日のことも含めて、しっかり聞かせてくださいよ? じゃないと外出禁止ですからね」

「あはは……」

「笑いごとじゃないんですよ」


 しっかり釘を刺されてしまったけれど、ギースレイヴンでのことはキャンディにもまだ話してない。「同じことを話すことになるなら、ふたり一緒のときがいい」と言ったら、「それもそうですね」と納得してもらえた。


 キャンディが帰ってきたとき、すぐに気づけるように食堂に移動することにした。窓際の席からは、寮の入口に向かう人影が良く見えるから。さすがにあったかい紅茶はなかったけど、逆に冷蔵庫の電源が生きてるおかげで冷たい飲み物はあるんだって。でも、それもすぐなくなるだろうし、わたしは常温のレモン水にしておいた。


 席について、まず聞いたのは、わたしの知らない昨日のこと。わたしが寝ちゃった後ですぐ、キャンディは蜂蜜くんの部屋へ来たみたい。それで、わたしが寝ちゃったことを伝えて、蜂蜜くんも確認のためにキャンディの部屋へ行ったんだって。


「あの部屋、広いですよねぇ。お金持ちはずるいなって思いました」

「わたしたち、小市民だからねぇ」

「まったくですよ。アスナさんを叩き起こして連れて帰ろうとしたら、可哀想だから寝かせてさしあげて~とか言われちゃいました。それで、ベッドまで運んだんですよ、ふたりで。確かにまったく起きませんでしたもん。ピクリともしませんでしたよ」

「そうなんだ~。わたしは全然覚えてないや」

「制服脱がせようとしたら、それも止められちゃいましたよ。一応、汚れないようにバスタオルで保護しましたけど、ちゃんとお礼言った方がいいですよ」

「わかってるよ~。蜜もありがとね」

「どういたしまして」


 ふふっと鼻で笑う蜂蜜くん。こりゃ心の中でどう思ってるかわかんないやつだな。

 そのあとは、寝る場所がなくなったキャンディが部屋に押しかけてきて苦労した話を聞かされた。「大変だったんですからね!」と言う割には、仲良くお茶して宿題してたみたい。よかったじゃん、前より親しくなれて。


「あのですね、彼女は貴女と違って、ボクが男だってことを知らないんですよ? お風呂上りとか着替えのときとか、どんなに気を遣ったことか!」


 蜂蜜くんは深くため息をつきながら言った。


「それに、目のやり場にも困りましたしね!」


 おい!

 キャンディとわたしには、そんなに差はないはずでしょ!?

 わたしには気を遣わなくてすんで、キャンディのときは目のやり場に困るって、どういうことなの!

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