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わたし、異世界でも女子高生やってます  作者: 小織 舞(こおり まい)
ノーマルルート
53/280

意外な知り合い?

 目が覚めたら敵陣だなんて、なんて笑えない事態だろう。

 わたしをここへ連れてきたらしい緑の髪をしたギター男は、自分のことを風の精霊だと言った。名前はソーダ、メロンソーダだ。


「とりあえず、ギター止めてもらっていいですか? ここ、わたしにとっては敵の中枢部なんで。見つかったら殺されちゃうんで」

「えっ? 大丈夫だよ?」

「なにが」

「音は向こうへ流れていないからさ。それよりもあの夕陽をごらんよ、何とも言えないほど美しいだろう?」


 ソーダさんはそう言って夕陽を指差すけど、言葉を失うほどのものには見えないけどな。そもそも、吟遊詩人とか歌い手が「何とも言えない」ってそりゃどうなの?


「まあ、いいや。ソダ……ソーダさん? が、わたしを助けてくれたの?」

「そうさ」

「失礼だけど、どうやって?」


 いくら風の精霊って言ったって、あんなに大勢に囲まれた建物の中から、わたしひとりだけを連れてくるなんてそんなこと、できるわけないよね?


「ふっ、私は風だよ? 自由な風を遮れるものなど、あまりない」

「………………」


 なに言ってんだコイツ。(二回目)


 っていうか言い方〜! 「あまりない」ってなに? 他に絶対言い方あったよね。っていうか、遮られるからね? 遮られまくりだからね? ただの風でしょ? ……まあ、いいや。


「ええっと、助けてくれてありがとう。もうひとり、助けて欲しい子がいるの。アイスくんっていうんだけど……」

「ああ、アイスのことなら心配はいらないよ。すでに助けてあるさ」

「よかった!」


 アイスくんに騙されるみたいにして連れてこられたけど、だからって酷い目にあえばいいなんて思えない。できれば助けてあげたかったから……。


「じゃあ、あの……わたし、ジルヴェストに帰りたいんだけど、連れて行ってもらえませんか」

「お安い御用、と言いたいところだけど、結界の内側には入れないよ。結界ギリギリにある村までは連れて行ってあげられるんだけどね」

「そっか……って、村ってナニ!?」

「え?」


 わたしはジルヴェストの形について説明した。あの国は島になってて、そのほとんどが結界の中にある。まるで海に浮かぶスノードームなわけ。


 その結界の外に、村?

 ありえないとは言わないけど、別の場所と勘違いしてない?


「いいや、確かに村はあるよ。今から行こうか」

「う……行きたい、けど……」

「けど?」

「ごめんなさい、やっぱり帰らなくっちゃ。友達が待ってるの」

「どうやって結界の内側へ入るんだい?」

「コンちゃんに頼むの。お~い、コンちゃん、来て~!」


 ここは直接地面の上だから、ウサギのコンちゃんなら、穴を掘って来られるはず。わたしの予想どおり、すぐにコンちゃんが地面から鼻を突き出した。


「クォンペントゥス!」


 ソーダさんがコンちゃんの名前を呼ぶ。そっか、精霊同士、知り合いなんだね。


「私も一緒に行っていいかい、お嬢さん」

「あ。自己紹介が遅くなってごめんなさい。わたしはアスナ、よろしくね」

「よろしく、アスナ。クォンペントゥスもいいと言っているし、ご一緒させてもらうよ。まさか、結界の中に入れるなんて! ジェロニモは元気にしているかなぁ」

「!」


 ジェロニモって、ゼリーさんじゃん!

 知り合いなの!?


「ジェロニモって、ジェロニモ・スレーンさんだよね? ギズヴァイン先生の護衛をしてる、緑の髪に赤い瞳の! あの無口で無表情のジェロニモさんだよね!」

「うん? よくわかんないけど、ジェロニモはジェロニモだよ?」

「ダメだコイツ!」

「口に出てるよ?」


 おっと失礼!


「ごめんごめん。なら早く行こう! ジェロニモさんにも伝えてあげなくちゃ!」


 わたしは急いでコンちゃんの開けてくれたウサギ穴に潜った。濡れない水の中のような不思議な感覚。今回も見とれている間に地面に足がついていた。


「アスナ! 心配しましたのよ!」

「キャンディ!」


 泣きながら駆け寄ってきたのはキャンディだった。わたしはギュウッと抱きしめられた。


「遅かったじゃありませんの! もう少しで、お城まで行くところでしたわ……!」

「ごめんね、キャンディ。ちょっと、立て込んでて……」

「アスナ、貴女冷え切ってますわよ。さ、寮へ帰りましょ。すぐに温かいお茶を淹れて差し上げますわ」

「ありがと。あ、そうだ、紹介したいひとが……あれ?」


 振り返ると、そこにソーダさんはいなかった。コンちゃんもいないし。


「あれ〜?」

「どうしたんですの、アスナ」

「あ、いや……なんでもない……」


 わたしを助けてくれたひと……ううん、精霊か。ソーダさん、悪いひとじゃないとは思うんだけど、ここって女子校なんだよね。大丈夫かなぁ。


 ゼリーさんのところへ行ったんだろうか。今度聞いてみよう。

 わたしはキャンディに手を引かれて寮の方へ歩き出した。心なしか、あっちよりもこっちの方が空気が暖かい。


 なんだかとても、ホッとして……力が抜ける。

 今日はもう休んで、明日また考えよう。


◎ゼリーさん

挿絵(By みてみん)

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

【名前】ジェロニモ・スレーン

【性別】男

【年齢】19

【所属】ジルヴェスト国

【職業】護衛

【適性】戦士

【技能】◆この項目は隠蔽シールされています◆

【属性】無口

【備考】魔法に詳しい?・シャリに弱みを握られている?・風の精霊と顔見知り


 ★ ★ ★

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

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