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わたし、異世界でも女子高生やってます  作者: 小織 舞(こおり まい)
ノーマルルート
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ここはどこ? あなたは誰?

「まあいい。手始めにこいつを処刑する。話は後にしようや」

「……!」


 リーダーの目がアイスくんに向けられていた。

 わたしは……わたしには、見過ごすことができなかった。


「待ちなさいよ……」

「ほう、意外だな。あんた、自分をはめようとした奴の命を助けたいのか?」

「何言ってるの? そもそもアイスくんはアンタたちの仲間じゃない。今さら仲間割れ? それとも、わたしに言うことを聞かせるためのお芝居?」

「違うっ! 僕は貴女を助けたくて彼らに協力を求めたんだ! 王子のことも、殺さないって言ってたのに……うっ!」

「うるさいっ、黙れ!」


 アイスくんは両脇から押さえ込まれて膝立ちにさせられていた。その抵抗できないお腹に、リーダーが蹴りを入れる。


「乱暴しないでよ。話し合いにもなりゃしない……」

「はんっ、こっちは呑気に話し合いなんざするつもりはねぇよ!」

「大声出すな! 頭が痛い! ……ねぇ、なんか薬ないの? もう死んじゃいそう……」

「はぁ?」

「頭が痛いぃ〜〜〜! 死ぬぅ! もうやだ、勝手にすればぁ? 首輪とか王子とか魔力の枯渇とか、そんなの知らない関係ないもん!」

「おい?」

「頭が痛いよ〜〜〜! どこか静かな場所でゆっくり休みたいアイスくんが死んじゃったら協力なんかしないから! 暴れて噛み付いてアンタたち全員道連れにして自爆してやる〜〜〜!」

「なっ!」


 わたしはうずくまってウンウンうなった。

 だって、本当に頭が割れそうなんだもん。


 わたしの周りから人の波が引いていく。あたふたと話し合う声も聞こえていた。ほらほら〜、自爆しちゃうぞ〜〜!


「アスナさん……」


 アイスくんのことは、今は考えたくない。

 わたしのこと、連れてこいって王子に言われてたんだよね。王子はわたしを殺す気だって知ってたのに、この国に連れてきたんだ。それが、別の道を探ることだったとしても、わたしにとっては危険なだけ!


 今だって、こんな難民キャンプみたいな村で、奴隷にされるかそれとも王子に売られるか……どうしてわたしがこんな目にあわされなくっちゃいけないの?


 あのまま、結界の中にいれば安全だったのに!


 だからわたしは耳をふさいだ。

 アイスくんの言い訳を、今は聞きたくなくて。


 現実逃避している間、どのくらいの時間がたったのかわからない。でも、わたしは立つように言われて、粉っぽい土色のレンガで作られた建物に連れてこられた。女のひとと赤ちゃんのための家みたい。


 その一角の、狭い、押入れみたいな部屋に入れられる。

 ベッドも何もないぞここ……。


「アイスくんは?」

「……別の場所に監禁する。あんたの症状は魔力切れだとよ。夜になりゃ工場が止まるから、少しは楽になるはずだ」

「あっそ」

「……朝、また来るからな。身の振り方を考えときな」


 リーダーはそう言って、部屋の入口に木の板をバタンと押し付けてきた。ドア、ないんだ……。びっくり。


「あ〜あ、ど〜しよ」


 夜が来たら、この頭痛が少しは良くなるのかな。

 でも、わたしは帰らなくっちゃ。あんまり遅くなると、キャンディに心配かけちゃう。ううん、もう心配はかけてるけど、このままじゃ全部シャリアディースに伝わっちゃう。


 コンちゃんが来てくれれば帰れるけど、アイスくんをどうするかが問題だよ。アイスくんのことをシャリさんが知れば、良くて捕虜、悪くて処刑じゃない? どっちも拷問の末だよきっと。だってアイツ、インテリヤクザだもん。


「う〜〜〜ん」


 途方に暮れるわたし。

 でも、頭がフラフラするのも事実だから、部屋の隅に申し訳程度に置いてある布の塊をふとん代わりに寝ることにした。





 カントリーギターの音が聞こえる。

 柔らかくて、優しい音。


 聞いたことのない曲だったけど、懐かしさがつのって涙が出そうになった。


「誰……?」

「私かい? 私は、風さ」

「…………」


 なに言ってんだコイツ。

 わたしは目を開けた。そこはもう、狭い押入れみたいな部屋じゃなかった。


「わぁ……」


 沈んでいく真っ赤な夕陽がなだらかな丘の向こう側に見える。わたしは草原を見下ろす少し高い場所に寝かされていた。


「美しいだろう?」


 そう言ってわたしに微笑みかけるのは、緑色の髪の毛をした若いお兄さんだった。なんだかヒラヒラした服を着て、ギターを鳴らしている。まったく、見覚えのないひとだ。


「えっと、誰? ここはどこ?」

「私はソダール、風の精霊さっ。ここはギースレイヴンの王宮だよ。後ろを見てごらん」

「あっ、ホントだ」


 敵地じゃん。


「あの~~~、帰っていい?」


 わたしはメロンソーダみたいな色をした風の精霊にそう言った。

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