表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
わたし、異世界でも女子高生やってます  作者: 小織 舞(こおり まい)
ノーマルルート
5/280

再会? マナの実? 食べられるの?

 突然現れた、蜂蜜みたいな金髪をポニーテールにした可愛い男の子は、なんと暗殺者だった……。


 呆気に取られる先生、険しい顔して馬の鞍にくっついていた二本の長い棒を取り外すゼリーさん、大慌てのモブの皆さん。


 金髪の彼はわたしをそっと自分の左側に下ろして、それでもわたしの腰に回した手を離さなかった。横に立つと分かる。わたしたち、ほとんど同じ身長だ。そして睫毛が長い! 色が白い! 深い碧の瞳と視線がぶつかる。ミッ……なんだっけ。彼はニコリと微笑んだ。……うぐぐ、わたしより可愛い!


 そりゃあもうビックリだよ!! こんな美少女が男の子で、腹黒で、しかもわたしを軽々と抱き上げるほどの力持ちだなんて!


「あなたはいったい、何者ですか。彼女は今、生命の危機に瀕しているのです、邪魔をしないでいただきたい!」


 エクレア先生のよく通る声が響き渡る。真剣な様子にわたしなんかは思わず背筋が伸びてしまうけど、蜂蜜(仮称)君はどこ吹く風。ニコニコ顔を崩さずに、わたしを抱き寄せたまんまで話し始めた。


「ボクは、陛下から遣わされた者ですよ~。彼女の心身を守れ、とね~」

「ならば……!」

「でもほら、彼女、嫌がってるじゃないですか~。いくら命を助けるためだからといって、本人の意思に反した行動は良くないと、ボクは思うんですよね~。だから……手助けしに来たんですよ。死にたいなら、ね?」

「………………はぁっ!?」


 あんまりにあんまりな台詞に、わたしは思わず大声を出していた。


「だから、ひと思いに~、こう?」


 おいちょっと。

 爽やかな笑顔で首を掻っ切る仕草やめて。


「何を言っているんですか、あなたはっ! 彼女を殺すなんて、陛下がそんな命令を下すはずがありません!!」

「ふふふ、だから、心身をって言ったじゃないですか~。ボクは彼女の心を守ってあげたいんですよ~」

「へ、屁理屈です!!」


 エクレア先生がお怒りだ。

 ……それにしても。わたしも同じことチラッと考えてたんだけどさ、この蜂蜜君が言うと、な~んか、こう……えらく不穏じゃない? 爆弾発言って言うかさ~。


 腹黒っていうか、なんか、ヤバくない? 確かに黒いには黒いけど、それよりもっと危険な匂いがするんですけどぉ!!


「ボクはね、貴女に同情してるんですよ。これでもね。ボクは嫌でしたよ。だから……選ばせてあげます。苦しませたりしませんから、だから、無理に生き延びなくたっていいんですよ」

「あなた、変な誘惑をしないでください! お嬢さん、早まってはいけません……」


 右から蜂蜜君が。

 正面からは先生が。


「そんなこと……そんなこと、いきなり言われたって……!」


 引っ込んでいた涙がまたしても盛り上がってきたとき、遠くから聞き覚えのある声がわたしを呼んだ。


「お~い、異世界から来た女の子~!! そこにいるのか~?」

「えっと、えっと……ドーナツさん!?」

「いえ、彼はドゥーンナッツです」

「プッ、くく……ドーナツ……」


 いや、だって。仕方ないって。

 蜂蜜君は笑いすぎ!


「俺、きみを探してたんだ! 良かった、間に合ったな……!」

「間に合って?」

「まだ生きてた!!」


 カラッと晴れやかな笑顔。

 とんでもないこと言われてるんだけど、ドーナツさんの顔や首筋は汗だくで、今も走って来てくれたし、悪い人じゃないんだよね。


 それどころか、よく知りもしないわたしを助けるため、その方法だってあるかどうかも分からないのに駆け回ってくれたんだ。そう思うと、喉の奥が熱く痛くなった。


「ありがとう。わたしが助かる方法、探してくれたの? 何か、もう間に合わないかもしれないんだけど、本当にありがとうございます。……あはは、諦めるしかないってわかってるんだけど……こんなのって」

「諦めるなよ!」


 わたしが弱音を吐こうとした時、それを遮ったのはドーナツさんだった。


「諦めるな! 諦めたら、大丈夫なモンまで駄目になる! 体を動かしてるのは気合なんだぜ? だから、自分は大丈夫だって信じろ」


 そう言ってニカッと笑ってみせるドーナツさん。先生や蜂蜜君はお小言めいた言葉を口にしていたけれど、わたしはその綺麗な新緑の瞳に見詰められて頷いていた。なぜだろう、この人の言うことはストンと胸に落ちてくる。


「それに! ちゃあんと見つけてきたんだぜ!」


 大きな拳が、パッと目の前で開かれる。その中には透明なビニール袋みたいなものに包まれた、虹色の棒つきキャンディーがあった。それはまるでお祭りの葡萄飴みたいだったけれど、違うのはひと粒だけしか棒に刺さってないという点と、外側にかかっている飴は透明で虹色に輝いているのは中のまん丸なものだっていう点だ。


「これは……! マナの実じゃありませんか!!」

「先生、知ってるの?」

「さあ、食え!」

「えっ…………」


 そんな笑顔で勧められても…………。

 ナニコレ?

活動報告にいただいたイラストをあげております。作者のイラストもありますよ(*^^*)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ