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わたし、異世界でも女子高生やってます  作者: 小織 舞(こおり まい)
ノーマルルート
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いきなり誰? えっ、暗殺者!?

 無表情でわたしを見下ろすボディガードのお兄さん。

 身長はドーナツさんと大体同じくらい。やっぱり見上げ続けていたら首が痛くなりそうだ。


 短めのサラサラした髪の毛は緑色。この色はそう……メロンよ、メロンゼリー! 夕張メロンとかのお高いヤツじゃなくて駄菓子によくある合成着色料の安いの!


 おっと、別に貶めてるわけじゃないのよ? わたし、あれ大好きだもん。そしてその目はさくらんぼのように赤いのだった。


 ところでキスする相手を選ぶって、このままついて行くと「もうその場で決めてねっ☆」ってことだよね。

 わたし、大ピーンチ!


 かと言ってどこかへ逃げようにも当てもないしそもそも逃がしてもらえなさそう。だってメロンゼリーさん強そうだもんね。


「連れていく。アルも馬に乗れ」

「しかし……」


 待って待って待って!

 これはマズイ!


「待ってよ! まだ行くなんて言ってない! エクレ……じゃなかった、アルクレオ先生、他に方法はないんですか!?」

「……残念ながら、枯渇寸前の魔力を安定値まで回復させるためには、生命体の体液の摂取が一番効率が良いんです。とにかく急ぎましょう、その顔色の悪さから見て、そう長い時間をかけるわけにはいきません。あなたが血液摂取の得意な種族なら良かったのですが」

「え、ムリ」

「でしょうね。そんな特徴が見受けられませんから」


 そうか、吸血鬼だったらキスじゃなくても大丈夫だったんだ~って思ったけど、そもそも吸血鬼だったら広場に出てきた時点で灰になっちゃってるんじゃないかなって思った。ダメだこりゃ!!


 律儀に待っていたメロンゼリーさんが、「終わったな。さあ乗れ」とばかりにわたしの前に馬を連れてくる。横からささっと、腰の低い部下っぽい人が踏み台を置いてくれた。……よく見たら、十人くらいいる。ふたりの後からゾロゾロついてきたんだろうなぁ、このひとたち。お疲れ様です。


「わたし、馬なんて乗ったことない……きゃっ!?」

「………………」


 いきなり何してくれるんですかね、このひとは!!

 ゼリーさんはいきなり無言でわたしを膝の裏からさらって抱え上げた。いわゆるお姫様抱っこというヤツ。そしてそのまま……わたしひとりで鞍の上に座らされた。


「ちょっ、ちょっと、高い……」


 思わず下を見てしまって動けなくなった私に、エクレア先生が声をかけてくれた。腰に手が添えられる。


「背筋を正して、顎を引いて。まっすぐ前を見ていなさい。そう……偉いですね」

「うう……」


 こういうときって二人乗りとかで支えてくれるもんじゃないんですかねぇっ!? ああ、でも、鞍はおひとり様用だわ。そりゃ無理だよね。納得。


 ゼリーさんがこっちを見て頷くと、馬の綱を持って横に並んだ。そうか、ゼリーさんが引いてくれるのか。それにしたって、何か言おうよ!! びっくりするでしょうが!! この無口め……。なんて、怒られたら怖いから口には出さないけど。


 いつもの倍くらいに感じる高い視界。

 馬の背に揺られてぽくぽく歩いていると、自分が置かれた状況が、否が応にも身に染み入ってくる。


 さっきまでは興奮してたのか、まるでドタバタ劇の主人公にでもなった気分で、大げさな身振りと強い言葉が勝手に出てきていた。でも、それが今は……。


 色んな人の視線を感じる。馬の揺れが、風が、これは現実なんだとまるで念を押しているみたいだ。わたしは選択を迫られている。キスを受け入れるのか、受け入れないのか。


(わたし、このままじゃ本当に死んでしまうんだ……)


 死にたくない。でも、こんなことでファーストキスをなくして一生後悔なんてしたくない。


(帰りたいなぁ……)


 そう思ったら、視界が急に歪んだ。


「……お嬢さん?」

「あれ、おかしいな……。なんか……、なんでだろ……っ」


 エクレア先生の驚いたような声がして、わたしは慌てて目許を拭った。それなのに、次から次に涙が溢れてきて、どうしても止まってくれない。


「お、落ち着いてください、お嬢さん。必ずお助けします、間に合いますから!」


 違うよ、先生。わたしは死にそうだから泣いてるんじゃなくて……。

 でも、わたしの体はしゃくりあげるばっかりで言葉は声にならなかった。


「いけません、興奮したらさらに魔力が……! こうなっては、王の接吻を授かるまで待てません、どうかお嬢さん、この場にいる誰でも良いので選んでください。このまま死なせるなんて、そんなことはさせられません」


 わたしが頭を振っていると、まったく聞き覚えのない声が降ってきた。


「無理強いは、いけないと思いますよ~」


 いきなり抱え込まれて目を開けば、やわらかそうな金色の髪とエメラルドグリーンの瞳が見えた。またしてもお姫様抱っこだ! わたしを軽々と抱いているのはまるで女の子のように優しげな……おっと電子音。


‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

【名前】ミッチェン・ガードナー

【性別】男

【年齢】23

【所属】ジルヴェスト国

【職業】暗殺者

【適性】諜報

【技能】◆この項目は隠蔽シールされています◆

【属性】腹黒

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥


 もうすっかり慣れっこなステータス画面。さて、この子は誰だろう?

 うん? なんだこの?


 …………腹黒。

 暗殺者。


 あんさつしゃだ~~~?!

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