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わたし、異世界でも女子高生やってます  作者: 小織 舞(こおり まい)
ノーマルルート
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勘違いだからっ?

「うが~~~っ!」


 夜、寮の自分の部屋で机に向かっていたわたしは、読んでいた本を閉じて吠えた。

 蜂蜜くんは相変わらずツンツンで夕食の後でどっか行っちゃったし、借りてきた本はぜんぜんわかんないしで、もう頭がいっぱい! もうやめだ、やめ!


 その日はそのままふて寝した。蜂蜜くんは帰ってきたのかも帰ってこなかったのかもわからない。朝起きても姿はなし。わたしはモヤモヤする気持ちを抱えて朝食時間ギリギリの食堂へ降りていった。


 さて、買い物に出かけよう。目的は気晴らし! 求めるはマドレーヌの焼き型と材料、レターセット。


 月曜日のお茶会に合わせて、何か作ろうと思ったんだよね。寮母のアガサさんに聞いてみたら道具とオーブン使わせてくれるって言うし。材料から全部そろえて自分でお菓子を焼くと、おこづかいの大半が飛んでいくけど、そりゃあもう仕方がないこと。


 だって! こうでもしないとやってらんないんだもん!

 お買い物して、バターたっぷりの焼き立てマドレーヌの香りを嗅げば、わたしの気持ちも晴れるってもんよ!


 というわけで、わたしは午前中いっぱい全部使って買い物をしてきたのだった。タイミングが悪いのか、みんな用事で出かけているのか、お昼も誰とも一緒じゃなかった。……寂しくなんてないやい!


 アガサさんにお礼を言って、台所をお借りする。買ってきた材料と清潔な道具をテーブルに並べていくのは気持ちいい。手もしっかり洗ったし、まずは粉をふるって、新鮮な卵といい匂いのするバターを混ぜていく。ピカピカのキッチン、あったかい午後の空気……ん〜、最高! 生地に気泡が入らないようにしながらよく混ぜる。


 生地は一時間くらい寝かせてから焼く派なので、その間に片づけを済ませる。マドレーヌ型にバターを薄く塗って少し粉をふるっておく。余計な粉を落としておくのも忘れずに! あとは生地を流し込んでオーブンで焼けば、外はカリカリ、中はふんわりなマドレーヌのできあがりだ!


「わ〜、いい匂い! 上出来!」


 型から外して網の上で冷ます。今食べない分は、ちゃんと冷ましてから箱に入れないとね。明日のお茶会のときには、バターが染みてしっとりした美味しさになっているはず。


「さて、お茶にしよっと!」


 外のテーブルに運んでもいいんだけど、今日はこのままここで食べることにする。焼き立てをあったかい台所でおやつにするのも好きなんだ〜。


「あ〜、美味しい! 蜜ちゃんてばバカね〜、わたしと一緒に来れば分けてあげたのにぃ」


 マドレーヌをパクつきながら、わざと大きな声を出す。蜂蜜の入ったマドレーヌの甘さに、なぜか涙が滲む。


 こっちに来てから、新しい生活とかテストとかでずっと忙しくしてたから、寂しさを感じる暇なんてなかった。キャンディは追い払ってもしつこく抱きついてくるし、チョコやキャラメルはきゃんきゃん吠えるし。それに寮の夜も、蜂蜜くんが宿題しろ〜とかちゃんと髪を乾かしなさい〜とか、口うるさくて、いつの間にか寝る時間になっていた。


 同じ立場で、理解のある蜂蜜くんが、昼も夜も一緒にいてくれたから、わたしは目の前のことに集中できたんだ。なのに、またすれ違っちゃった……。


 わたしは自分が悪かったとは思わない。蜂蜜くんが悪いとも思わない。それなのに、なんでこんなにうまく行かないんだろ。本当にひとりぼっちになってしまった、そんな気がした。


「どこに行っちゃったのかなぁ……」

「アスナさん……」

「うぉわぁ! ビックリしたぁ!」


 振り向くといつの間にか台所の入口に蜂蜜くんが立っていた!

 こころなしか金色のポニーテールがしゅんとしているような……?


「すみませんでした、アスナさん……。さすがに、あの態度は大人げなかったですね。反省してます」

「蜜……。もう、ホントに……びっくりしたんだからね!」

「だから〜、すみませんって」


 蜂蜜くんはわたしの前まで歩いてきて、わたしたちは立ったまま見つめ合った。涙目のわたしを見て、蜂蜜くんは苦笑いを浮かべた。


「許してください。ボク、貴女くらいの年齢の女子とこんなに話したことってないんですよ。こんなに近くにいて、こんなに親しくなったことも……」

「えっ、そうなの?」

「そうなんですよ〜。女性って、苦手ですしね」


 意外。

 こんなに素敵な美少女に化けられる蜂蜜くんが、女の子に免疫がないなんて。ほとんど同じ高さの、迷い込みそうなほど深いフォレストグリーンの瞳がふっと近くに寄る。


 一瞬のことで逃げる間もなく、蜂蜜くんの唇が、わたしの唇のすぐ横に触れていた。温かいのは、舐められたせい?


「甘い……。食べカスついてましたよ、アスナさん」

「なっ」


 何してんだコイツ!!!


 張り倒そうとした瞬間、バサバサバサッと大きな音がしてついそちらを見てしまう。そこには、真っ青な顔をしたキャンディがいた。


「あっ」

「アスナの裏切り者ぉ〜〜!」

「えっ、ちょっ、違うってぇ!」


 キャンディ、カムバーック!!


「このマドレーヌ、美味しすぎます。これボク、全部もらっていいやつですよね?」

「ダメに決まってんでしょ! 絶対にダメッ!」


 いきなり現れてとんでもないことしといて!

 バカ蜜!

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