さぁ、どこが変わったのかな?
さて、じゃあさっそく見てみようかな。
わたしは蜂蜜くんのステータス画面を呼び出す。どこが変わっているかな?
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【名前】ミッチェン・ガードナー
【性別】男
【年齢】23
【所属】ジルヴェスト国
【職業】暗殺者
【適性】諜報
【技能】吹き矢・◆この項目は隠蔽されています◆
【属性】腹黒
【備考】笑いのハードルが低い・女装癖がある?・魔力が少ない
【偽名】ミシェール・スキットナー
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技能のとこに「吹き矢」ってあるや。そうだね、寮に入った初日にやられたもんね。
今考えてもひどい仕打ちだと思うよ。
そして、ドーナツさんと同じく蜂蜜くんのステータスの一番下にも星が現れていた。こっちは白、白、黒。そっと指で触れてみると、白い星から別の四角が飛び出してきた。
『三年前に別の世界からやってきた』
なるほど?
もうひとつも開けてみよう。
『魔力を奪う障壁の対象者にならないためにシャリアディースと契約し、それに縛られている』
これは……。
薄々勘付いてはいたけど、やっぱりそうだったんだ。
蜂蜜くんは最初から、「国王陛下の命令で」わたしを守りにやってきたと言ってた。それって言葉通りに受け取るなら、ジャムからの命令ってことになるんだろうけど、多分違う。だって、わたしがジャムに引き合わされたとき、ジャムはわたしにほとんど興味を持っていなかった。ただシャリの言葉に従ってわたしを花嫁にしようとしていただけ。
わたしをこの世界に繋ぎとめて、ジャムの花嫁にしたいと思ってるのはシャリアディース。そして、ロクに仕事をしていなくても、あの男は宰相で、国のお偉いさん。きっと国王に代わって「国王の命令」を出すこともできるはず。ジャムなら何も聞かずにオッケーしそうだし。
だいたい、よその世界からやってきた得体のしれない人間を護衛につけるもの?
あんなだけど、ジャムだってシャリだって国を動かしてるんだもん、そういうところはしっかりしてるはずでしょ。だから、わたしは蜂蜜くんとシャリの間には何かあるんだろうなって思ってた。蜂蜜くんはシャリのこと、憎んでるって言っていいくらい嫌ってるしね。
この「契約」がどんなものか知らないけど、「蜂蜜くんはシャリに逆らえない」と思ったほうがいいなぁ。備考に書き足しとこ。
わたしは手でお湯をすくって首筋にかけた。
そろそろ髪の毛を洗おうかな。
それにしても、四角いウィンドウに書かれている文章って、蜂蜜くんの秘密なのかな。内容を読むかぎり、本人があまり言いたくないことが書かれているみたい。親しくなったから、確定した情報が書かれるのかな? それなら、ドーナツさんの秘密ってなんだろう。あのひとのステータスにも白い星がついてたはず。
わたしは髪の毛を洗いながらドーナツさんのステータスを開いた。目を閉じてても見えるから便利~!
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【名前】オールィド・ドゥーンナッツ
【性別】男
【年齢】20
【所属】ジルヴェスト国
【職業】宮廷騎士(若枝)
【適性】狂戦士
【技能】馬術・剣術・◆この項目は隠蔽されています◆
【属性】犬
【備考】ジャムの味方・精霊を呼び寄せる剣?
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うん、技能が増えてる。
剣については聞いただけだけど、馬には乗せてもらったもんね。
そして、肝心の白い星。今わたしが開けるのはひとつだけ。
飛び出してくる四角いウィンドウ、中に書いてあったのはやっぱり、わたしも知っていたこと。
『五年前に父親が先王と共に旅先で消息を絶った』
溜め息が出ちゃう。
ひとによってはね、名誉なことねって言うのかもしれない。
でもね、たったひとりの家族がいなくなっちゃったんだよ。ドーナツさんも、ジャムもさ。だから、ドーナツさんにとって、これはあまり言いたくないことなんだ。騎士団に入るとき、多分このことが原因でひどいイジメにあったみたいだし。……それも、わたしが知っていることは言わないほうがいいんだろうなぁ。
精霊を呼び寄せる剣についてはいつ聞こうかな。
もしも、シャリのヤツが噂どおりに精霊なんだとしたら、この剣を見てどんな反応するんだろう。この前のお茶会のときは良く見てなかったけど、剣のことが気になって気になって仕方なくなっちゃうのかな? それってちょっと……ううん、かなり、マヌケ!
シャリを最初に見たとき、そのとがった耳と瞳の様子から、人間じゃないのかなって思ってた。ステータスおかしかったし。実際にはどうなのかな? 思えば、わたしはアイツのことをほとんど何も知らない。
結界がこの国の人々の命を吸い取っているんだって、蜂蜜くんが教えてくれた時、許せないと思った。だから、シャリとは敵対することになると思ってた。でも、たとえそうなるとしても、何も知らないままでいいのかな?
なぜか、今、これまでで一番、アイツのことを知りたいと思った。




