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わたし、異世界でも女子高生やってます  作者: 小織 舞(こおり まい)
ノーマルルート
30/280

お仕事なんて、嘘だよね?


▶【ひとまず蜂蜜くんの言うことを聞く】 



 迷うわたしに、蜂蜜くんは言った。


「せめて、朝になるまで待ちませんか? あいつが素直に質問に答えてくれるような男じゃないことくらい、アスナさんにだってわかっているはずですよ」

「それは、そうだけど……」

「ね? だから、急ぐよりもじっくり待ちましょう。あいつの口から真実を聞き出したいなら、そうせざるを得ないタイミングを狙うべきです」

「……わかった。蜜ちゃんの言うとおりにする」

「よし! じゃあ、寝ましょうか」

「うん」


 次の日、放課後王宮に押しかけた。ジャムは仕事、シャリさんは仕事って言ってたけどあれは多分嘘。

 その次の日、キャラメルとチョコと三人で雑貨屋へ。選んだプレゼントは、勉強にも使えるようにと、可愛い柄のノートとキャンディの形をした消しゴムにした。もちろん喜んでくれた。

 またまた次の日も王宮に押しかけた。ジャムは仕事で、シャリさんも面会拒否。仕事してないだろお前!


 こっちの世界も七日で一区切り、曜日の名前は違うけど、やってることは同じだから慣れた方で呼ぶことにする。


 まず、お茶会があったのは月曜日。その日の夜、蜂蜜くんは帰ってこなかった。

 チョコが倒れたのが火曜日。ゼリーさんは質問には答えてくれなかったけど、代わりに蜂蜜くんとの距離は縮まった。


 水曜、木曜、金曜とジャムに会えない日を過ごしている。

 明日は土曜日、午前中だけ授業がある。そして日曜日は完全にフリー。どうしよう、まだ何も考えてないや。


 月曜日になったら、またお茶会と称してジャムに会える。

 そしたら、結界についても聞き出せる。


「さてと、空振りしましたし、帰りますかぁ」

「そうね……」


 ムカムカする気持ちは簡単には捨てられないけど、ぶつける相手がいないんなら仕方ない。

 酢飯野郎は今度会ったらハリセンで叩く。絶対にだ!


「あ、そういえば! わたしがお城に行った日、蜜はどこに行っちゃってたわけ?」

「あ〜。まぁ、結界を調べに……」

「そうだったんだ。どうだった?」

「特に何も。ところで、アスナさんは青い髪の男の子をご存知ですか?」

「ん〜? もしかして、アイスくんのことかな? どうかしたの?」

「ふーーーん」

「えっ、なに? なんなの?」

「べーつにー」


 ほんとになんなんだ!

 元気してるかなぁ、アイスくん。結界の外から来た子、なんだよね。もしも会えたら話を聞きたいけど、あれから一度も姿を見てないや。


「ほら、帰りますよ〜。明日はどうしましょうかね」

「図書館に行こうと思ってるよ。どうせお城に行ってもまた会えないだろうし、結界の他にも調べたいことがあるんだ〜」

「精霊、ですか?」

「うん。シャリは精霊かもしれないって噂があるんだって。千年は生きてるかもしれない。でも、精霊ってどういう存在なのかわたしにはわからないの。それをシャリに聞こうと思ってたんだけど、その前に結界のことを知っちゃったから……」

「ふぅん。別のアプローチっていうのも、悪くないかもしれませんね」

「ただ、結局ぜんぶあの銀シャリのことに行き着くわけだから、どこまで探れるか微妙なとこね。蜜はどうするの? ……あれ?」


 振り向くと、今まで会話していたはずの蜂蜜くんが消えていた。どうして!? まさか、シャリのヤツが!?


 ハッとして周りを確認していると、「お〜い、アスナ!」と声をかけられた。ドーナツさんだ!


「あ、こんにちは!」

「ひとりでどうしたんだ?」

「あはは、ちょっと……散歩です」


 そう答えるしかなかった。

 ドーナツさんは仕事明けなのか仕事中なのか、いつもの鎧とマント姿だ。お城の中なんだから当然か。


「陛下も嬢ちゃんに会いたがってたぜ。残念だったな」

「まぁ、約束してなかったから仕方がないですね。オルさんは、お仕事中?」

「ちょうど終わったとこだ。馬で良ければ送っていくよ」

「あ〜」


 送ってもらうと、蜂蜜くんを探しに行けないなぁ。なんて、視線を泳がせていたら、植え込みの陰にヤツがいた。


 なにしてんのかなこのひとは。

 もしかして、ドーナツさんを見て隠れたな〜?


 蜂蜜くんはわたしに手を振って「行け」と合図した。まったく、しょうがないなぁ。でも、そういうことなら遠慮なく馬に乗せてもらお〜。


「ありがとうございます、よろしくお願いしま〜す!」

「おう、任せろ!」


 ドーナツさんはそう言って爽やかな笑顔を見せてくれた。や〜ん、相変わらず好青年〜。


 ドーナツさんの愛馬に揺られ、カポカポ進む。わたしがドーナツさんの前に乗った二人乗りスタイルだ。最初は怖かったけど、後ろから支えてくれてたし、スピードはゆっくりだし、そのうち景色を楽しむ余裕が出てきた。


「風が気持ちいいですねー!」

「そうだな。こんな日は遠乗りも良いぞ。ただ、今日はもう無理だけどな」

「遠乗りって、ピクニックみたいなものですか?」

「そうだ。バスケットに簡単な食事と飲み物を詰めて、ちょっと遠くまで出かける。目的地も決めずに、ふらっとな」

「好きなんですか?」

「ああ」


 ドーナツさんは嬉しそうに答えて、馬のスピードを少し上げた。


「それにしても、毎日会いに来るなんて、いったいどんな用事なんだ?」


 ドーナツさんが不思議そうに言う。それもそのはず、わたしは相変わらずジャムの求婚を突っぱね続けてるんだもん、用事がなきゃわざわざ学園から歩いて来ない。それに、毎日押しかけて来るクセに、一度も詳しい事情を打ち明けないのも、おかしいじゃない?


「変に思われてるのは、わかってるの。でも……。やっぱり、ジャムがいる前で言うわ」

「そうか……」


 時間が経って冷静になるにつれて、あの夜のわたしはなんて無謀だったんだろうって思い出して青くなる。今はもう、あのシャリアディースの張ってる結界については「国王」っていう強い立場にいるジャムの前以外では話したくない。だって、シャリがなにかと理由をつけてわたしに会おうとしないのは、それだけこの件がヤバいってことだからでしょう?


 不用意にドーナツさんに相談して、そのせいでシャリに殺されたり……なんて、そんなの絶対に嫌だから!


「俺、そんなに信用ないかな」


 違う! そういうんじゃないの!

 慌てて否定しようとするわたしを、ドーナツさんはギュッと抱きしめた。首の後ろに何か温かいものが押し当てられている……こ、これは一体!? どういう流れなの!?


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