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わたし、異世界でも女子高生やってます  作者: 小織 舞(こおり まい)
ノーマルルート
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先生とボディガード?

 アイスくん? アイスくーーん!!

 どこ行っちゃったの? 見捨てた? わたしのこと見捨てたの!?


 頭が大混乱だ。くらくらもするし、ムカムカもするし、キスしなきゃ死ぬとか言われるし!

 おまけに、最初にわたしに親切にしてくれたアイスソーダくんはいなくなっちゃうし!


 わたしが悲しい気持ちと不安感と裏切られたショック(?)にうちひしがれていると、馬に乗った偉そうな眼鏡の男の子が話しかけてきた。


「馬上からすみません。あなたが異世界から召喚されたお嬢さんですか? もしそうなら一緒に来てください。違うなら、早く探さないと命に関わるので失礼します」

「えっと……?」


 命に関わるって、じゃあやっぱりアイスくんは正しくて、わたしはキスしなきゃ死んじゃうわけですか。やだな。そんなの、嫌だな……。


 ポン


 もう! このステータス画面ってやつはぁっ!


‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

【名前】アルクレオ・ギズヴァイン

【性別】男

【年齢】18

【所属】ジルヴェスト国

【職業】宮廷規律師範

【適性】教師

【技能】◆この項目は隠蔽シールされています◆

【属性】真面目

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥


 不幸そうな空気に浸れもしない。

 フツーこういうことに巻き込まれたヒロインって、もうちょっと落ち込んだり泣いたりするもんじゃないかな? これじゃただの頭のゆるい女子高生のままじゃあないか。


「聞いていますか?」

「あ、はい。さっきドーナツさんにも言われたんですけど、異世界人です、わたし」

「……ドーナツ?」


 先生は首を傾げてしまった。

 その拍子に、きちんと撫で付けられた髪の毛が黒ときつね色の二段階にグラデーションがかかっているのが見えた。犬騎士がドーナツならこの人は、そうだ、エクレアだな。この頭もそうだけど名前もエクレアっぽい! この先生をエクレアさんと呼ぶことにしよう。


「ああ! ドゥーンナッツのことでしょうか。それで、彼はあなたを置いてどこへ?」

「えーと、よく分かりません」

「何てことだ……」


 エクレアさんは馬から下りて、わたしの方へ歩いてきた。ドーナツさんよりは低くて、大体177センチくらいかな。由美子がそのくらいだから間違いない、はず。


「はぁ。すみません、お嬢さん、何も知らないあなたを一人にして心細かったことでしょう」

「いや、そんな……気にしないでください」


 すっきりと整った鼻筋と切れ長の目、そこだけ何だか薄情そうな薄い唇のイケメンに見詰められると、いくらストライクゾーンから外れていても赤面してしまう。


 しかもインテリっぽいこの空気、もっと年上だったら……。くぅ、十年後、いや十五年後くらいがストライクだわ!


「魔力も乏しいはずです、さあ、陛下のいらっしゃる場所へご案内しましょう」

「え。何ですって?」


 いかん、妄想しすぎてちゃんと聞いてなかった。


「陛下はもう近くまでお出でです。あなたの魔力切れによる不快感も改善するでしょう」

「?」


 待てよ。それってつまり陛下とやらとキスするってコトじゃないの?

 え? そんなのゴメンなんですけど。


「嫌です」

「え?」

「嫌です。行きませんから!」

「な、何を言っているんです? 魔力が枯渇するとあなたは死んでしまうんです、さあ、陛下の下へ急ぎましょう」

「やだってば! キスしなくちゃいけないって言うんでしょ? でも待ってよ、キスって言っても色々あるし、そもそも人としなくても動物でもいいとか、色々抜け道があるかもしれないじゃないの!」

「お、落ち着いてください」

「初めてなのに、何で見ず知らずの男と、こんな事情でキスしなくちゃいけないのよ! イヤ! だからね!!」

「……………」


 わたしの拒絶が本心からだと伝わったのか、エクレア先生は苦しそうな表情で押し黙ってしまった。


 ああ、真面目なんだっけ、このひと。自分のことじゃないのにわたしの嫌だって思いを受け止めてくれてるんだ……。


 お説教されるかとも思ったんだよね。「死にかけてるのに何ワガママ言ってるんだ」って。


 でも、でもね? 今すぐどうしても死にそうだってさ、嫌なものは嫌だよ。海で溺れて人工呼吸だってさ、それにしたって回避できるなら回避するさ、フラグも立てるさ。まだ動けるのに「じゃあキスしてね」って言われて「はい、仕方ないですね~」とか、そんな風に受け入れたくない、試せるものがあるなら試してみたいよ。


 エクレア先生もドーナツさんも、命令されてここに来てるんだろうに、わたしを無理に連れて行こうとしたり、暴力に訴えたりしない。


 それに甘えちゃうことになるけど、ごめんなさい、ゲームオーバーまでは粘らせてもらいます。感謝はしてます、ありがとう。本当に。


「アルクレオ、とりあえず陛下に会わせてみたらどうだろう。この娘の言い分なら、見ず知らずじゃなく気に入った相手となら、キスしても構わないんだろう?」

「……ジェロニモ」

「!」


 軽い電子音、出た、このひともステータス持ちだ!


‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

【名前】ジェロニモ・スレーン

【性別】男

【年齢】19

【所属】ジルヴェスト国

【職業】護衛

【適性】戦士

【技能】◆この項目は隠蔽シールされています◆

【属性】無口

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥


 無口って……。今喋ってるの、実は貴重?

 まさかエクレア先生「こいつ、喋るぞ!?」みたいなノリで驚いてるんじゃないよね?


 無口な護衛さん……護衛さん!? 騎士とかじゃなくて先生専属のセキュリティ・サービスってこと? 

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