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わたし、異世界でも女子高生やってます  作者: 小織 舞(こおり まい)
ルート:ジェロニモ
277/280

ギースレイヴンでの再会

 過去のわたしがキョウさんのところへ辿り着くまで約二週間ある。いきなりサバイバルさせられたわけなんだけど、次の日には通りかかったキャラバンに拾われて、無事にギースレイヴンに入国することができた。


 ゼリーさんは力仕事が得意だから、キャラバンでも人気者で、たくさんお仕事をもらっていた。わたしは主にキャラバンの荷物を仕分けしたりごはんを作ったりする裏方作業。しかも、女の人たちがたくさんいる中の、下っ端的なお手伝い。


 わたしの持ち物をお金に変えて、この国で過ごしやすい格好になる。制服にも良い値段がついたんだけど、何となく手放せなかった。


「持っておいたらいい。そこまで荷物にならない」

「でも……」

「ここに居るのも短い間だけだ。金のことなら、心配ない」

「うん。ありがとう」


 ゼリーさんがそう言ってくれたので、わたしはホッとした。だって、思い出の詰まった制服だもん。もう会えないみんなのことを思って、少しだけ泣いちゃった。後悔はしてないけど、それでもやっぱり、ね……。





 ギースレイヴンで一週間ほど過ごしたある日、キャラバンにお客さんが来た。それはなんと、わたしを探しに来たアイスくんだったの。


「アスナさん……やっぱり、この国にいたんだね」

「アイスくん! 久しぶりだね。あの後、大丈夫だった?」

「……うん。ソダールに助けてもらって、そこから先は、僕もこの一角に隠れ住んでた」

「そうだったんだ」

「市場で珍しいものが売ってて、それを辿ったら、ここへ着いたんだ」


 最後にアイスくんと会ったのは、お願いされてギースレイヴンまで行ったとき。すごく酷い環境に置かれていた奴隷のひとたちを助けようとしていたアイスくんは、逆に捕まってしまって、命さえ危ない状況だった。


 わたしも、アイスくんと同じように捕まって、わたしを生贄にしようとしていた王子さまに差し出されるところだった。あのときのこと、恨んではいないけど……。ビミョーな気持ち。


 そこへ、ゼリーさんがわたしとアイスくんの間に割り込んで、わたしを守るように立ち塞がった。無言だけど圧がすごい。アイスくんのこと、睨みつけてるでしょ。


 アイスくんはビックリして、一歩下がると寂しそうに笑った。


「あのときは、本当にごめんなさい……。許してもらえないとは思うけど、ひとこと、謝りたくて」

「いいよ。わたし、恨んでなんかない。怒ってもないよ。アイスくんのしたことをぜんぶ正しいとは今も思えないけど、でも、あのひとたちのために動こうとしてた。その気持ちは、わたしにもわかるから」

「アスナさん……。貴女は、本当に優しい人だね。だからこそ僕は……。ううん、それより、アスナさんはどうしてここに? 僕でよければ力になるよ」


 わたしとゼリーさんは顔を見合わせた。無言のまま目だけで「俺にはわからないから好きにしてくれ」というメッセージが送られてくる。いや、口で言おう?


「力を貸してくれるなら、わたしたち、水の精霊のところへ行きたいの。頼めるかな?」

「もちろん。今の時間なら、ルキック・キークもグルニムエマ・カロンも忙しくないし、大丈夫。……何をしに行くか、聞いても?」


 わたしは自分の精霊化を止めたいことや、ゼリーさんとシャリアディースの契約を破棄したいことをアイスくんに伝えた。時の精霊、キョウに出会ったことも。


 もちろん、わたしが時間を超えたことはナイショね。今ジルヴェストにはわたしがもうひとりいることも。……言えないことが増えるのってちょっとキツイ。


「なら、さっそく行こう。僕の手が空いていてよかった」

「なんか……アイスくん、変わったね」

「色々、あったんだ。首輪を外したことが一番大きいけど、前より、周りが見えるようになったんだ」


 アイスくんが首に手をやる。……本当だ。あのゴツイ首輪が外れてる。首が傷だらけなのが痛々しいけど、その笑顔は晴れやかだった。目の下のクマも薄くなってる気がするし、何より背筋が伸びたね。


「よかったね。もしかして、この国も、良い方に向かってるの?」

「まぁ……少しずつね。以前はアスナさんを生贄にしようとしていたこの国の王子も、今はもう、そんなつもりはないよ。ちゃんと話をして、わかってもらったんだ。すぐには納得してくれなかったけど……」

「そうなの?」

「うん。少しずつ、変わっていくと思う。言いなりだったのをやめたら、僕にもまだできることがあるんじゃないかって、思えてきたんだ」

「そっか。よかったね、アイスくん!」

「ありがとう。アスナさんのおかげ、だよ」

「ええっ、わたし、何もしてないのに!」


 アイスくんはそれでも、わたしのおかげだって言うの。

 本当に何もしてないんだけどなぁ。


 アイスくんはクッキーくんとマカロンくんって名前の、三歳くらいの小さな子たちを呼び出した。クッキーくんは前にも会った子で、金髪で明るい性格。マカロンくんはクッキーくんと同じくショートボブなんだけど、黒髪でとても落ち着いた感じの子。


 ふたりはアイスくんが事情を話すと、すぐにわたしたちのために道を開いてくれた。


「アスナさん、水の精霊、シャーベはもしかしたらまだ眠りについているかもしれない。そのときは……」

「うん、無理なら無理で、しょうがないと思ってるよ。努力はするけどね!」

「じゃあ、行こう」


 空気に虹色の裂け目ができる。わたしたちはそこに飛び込んだ。

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