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わたし、異世界でも女子高生やってます  作者: 小織 舞(こおり まい)
ルート:ジェロニモ
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いきなりサバイバル!?

 わたしとゼリーさんは、相談した上でギースレイヴンに隠れていることにした。なぜって? 敵国だから知り合いには会わないだろうし、わたしの精霊化も防げるから。


 これもキョウさんから聞いてビックリしたことなんだけど、わたし、魔力が満タンになると精霊になっちゃうらしいの。


 ほんっとあの酢飯野郎は何してくれてんのかな!?


『今までは魔力を吸い取り続けるジルヴェストっていう土地にいたこともあって、アスナの魔力はまったく回復しなかったからね。結界の外に出たときには僅かながら回復していたはずだけど、主に魔力の枯渇したギースレイヴンにいたものね』

「そうみたい」

『今ここにいるアスナの魔力は順調に溜まってる。向こうにいるアスナの魔力はギリギリのラインで精霊にはなってない』

「え……それって危なかったんじゃ」


 キョウさんはダンマリ。

 やっぱり危険だったんじゃん!


「なんかもう、誰を信じればいいのかわからなくなってきたよ……」

『まぁまぁ。アスナのその溢れそうな魔力をどうにかして精霊化を止めるためには、アスナの性質と近いシャーベかコンペントゥスの協力が必要だ。でも今は難しいと思うよ』

「どうして? コンちゃんなら協力してくれそうな気がするんだけど」

『いや……う〜ん。コンペントゥスの力は借りないほうがいい。シャーベのところまで送ってあげたいけど、鏡のあるところじゃないと飛ばしてあげられないんだ』

「ってことは、実質ギースレイヴン一択じゃん」

『ジルヴェストとか、他の国っていうのもあるよ?』

「いや、ないでしょ。ジルヴェストは小さすぎるし、他の国じゃ魔力溜まっちゃうかもしれないじゃん!」 


 テキトーなこと言って!

 アンタはソーダさんか!!



 そんなわけで、キョウさんの力で鏡を通って、わたしたちはギースレイヴンの外れまでやってきたの。と言っても、何もないんだけど……大丈夫かなっ!?


「ゼリーさん……ここ……」

「捨てられた野営地、だな」


 地面にあった積まれたレンガや木箱を確かめつつゼリーさんは言う。わたしの足元には割れた鏡の破片。野営地……って、キャンプ場? 確かに何か埋めた跡があったり、炭やロープの切れ端、割れた素焼きのコップが落ちてたりする。


「もうすぐ日が暮れる。こっちに来てくれないか」

「えっ? 今、夕方なの!? あ、待って、わたしも行くってば!」


 林の方へ歩いていくゼリーさんを慌てて追いかけると、ツタや何かに隠れるようにして小さな小屋が立っていた。


「何これ」

「先人の知恵」


 せんじんの、ちえ……?

 どゆこと?


 わたしが頭にクエスチョンマークを浮かべている間に、ゼリーさんは小屋の中をあらためて、薪やテントを運び出していた。わたしもバケツとかの小さい物を運ぶのを手伝う。


 ゼリーさんは手際よく火を起こすと、今度はわたしに小屋の中で待っているように言ってどこかへ消えていった。


「置いてけぼりとかぁ……」


 そうは言っても仕方がない。わたしは小屋の中を掃除しつつゼリーさんを待った。ついでにわたしが持ってきた荷物の整理もしておく。カバンの中に、飲み物とかお菓子が入ってるから、今晩は持つかな。


 ゼリーさんが大丈夫って言うから来てみたけど、まさかいきなりサバイバル生活になるなんて思ってなかった。まぁ、自由のためなら仕方ない、か。


 しばらくして、ゼリーさんが帰ってきたと思ったら、その手には何かでっかい鳥がぶら下がっていた。ひょえ……。


 ゼリーさんはわたしにそれを渡して、「羽をむしっておいてくれ」って言い置いてまたどこかへ行ってしまった!!!


「ひょえ……」


 この死んでる鳥……もしかしなくても晩ごはん……。ゼリーさんてば、ガチ狩猟系ワイルド男子だった……。


 焚き火のそばでグッタリしている鳥さん。横に置かれてるナイフとまな板は、そういう意味、なんだよね。


 わたしは覚悟を決めて、まずは鳥の首を……首を…………。

 ううっ、やだぁ! でもごはん〜〜!!!


「よし……!」


 女は度胸!

 わたしは鳥の首を切って、足を上にして血抜きをした。本当に上手く行ってるかどうかはわかんないけど、きっと理論的には正しいよね!?


 しばらくして血が止まってから羽を毟り始めたんだけど、これがまた……難しい! でも、いつも料理するときの鶏肉みたいにするためには、この作業が絶対に必要だから頑張った。


「くっそう! シャリアディース、あの、酢飯野郎! 覚えてろよ!」

「……なぜそこで私の名が出る」

「はっ! あ〜〜〜〜っ!? この、シャリ! よくもわたしの前に顔を出せたわね!?」

「待ちたまえアスナ、ナイフを下ろすんだ!」


 知るか! いきなり真後ろに立ってるのが悪い!

 ナイフが嫌なら鶏肉で殴るぞ!


「アスナ!! シャリアディース……貴様……」

「ゼリーさん!」


 わたしとシャリが距離を測っているところへ、ゼリーさんが戻ってきてくれた。水の入った桶が地面に落ちてシミを作る。ああっ、もったいない!


 ゼリーさんはものすごく深刻そうな顔をしている。シャリが悪い顔してニヤリと笑った。


「ジェロニモ……! ふふふ、良いところに……痛っ! 足を踏むなアスナ! よせ、鳥の死体をこっちに向けるな!」

「アンタが悪いんでしょうが!」

「くっ……! アスナが入ってくると真面目な話ができない……痛いっ!? わかった、何もしないから話を聞け!?」


 だから、アンタが悪いんでしょうが!

 ゼリーさんを見ると、何だか毒気の抜かれた表情でわたしたちを見ていたので、わたしはしょうがなく鶏肉を下ろすことにした。

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