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わたし、異世界でも女子高生やってます  作者: 小織 舞(こおり まい)
ルート:ジェロニモ
249/280

過保護なふたり

 ゼリーさんを見送り終えて、わたしはすぐにキャンディを追いかけた。わざとわたしを置いて行くなんて〜!


「キャンディ! ちょっと、ひどいじゃん!」

「どこが? いい雰囲気だったじゃないの」


 玄関ホールの柱の陰からキャンディが現れる。口許にはちょっと意地悪気な笑いを浮かべてる。もう! からかうつもりなら許さないんだから!


「ゼリーさんとはそんなんじゃないから!」

「あら、そうなの? あんなに親しそうだったじゃない」

「えっ、どの辺が……?」


 思わず本気で聞いてしまった。

 クッキーをくれたことを言ってるのかな? それとも、一緒に秘境の村を探索しに行くことについて言ってるのかな?


「ゼリーさんは悪いひとじゃないとは思ってるし、嫌いじゃないけど……でも、そういう(・・・・)対象じゃないよぉ~!」

「そうなの? お兄様との結婚を考えていないのは知っているけど、でも、普通に男性が好きなのでしょ? そういうつもりがないなら、あまり深入りしないほうがいいわ。アスナがそうでも、向こうや周りがどう思うかわからないもの」

「う~~」


 キャンディの言うことはわかる。わかるけど、あんまりにも一足飛び過ぎない? もっと、こう、「人間的に好き」とか、「友だちでいようね」とか、あるじゃん?


「そもそもお友だちになるような間柄ではないのだから、あまり無防備に近づくものではないわよ」

「うっ」

「はしたないですわ」

「ううっ! すみませ~~ん…」


 そうなんだよね。

 キャンディの言い分は正しい。


 わたしとゼリーさんは、友だちになるような関係じゃないと思う。

 爽やかな緑色の髪と、真っ赤な瞳の不思議な年上の男性。とはいえ、わたしの好みの年齢層からはだいぶ下、聞いたところ二歳上の十九歳。職業はエクレア先生のボディガードで、だから男子禁制の花嫁学校の中にも入ってこられるの。職員枠で。


 だからと言って、接点はないのよね。しいて言えば、風の精霊、ゼリーさんと関わりの深いところ? ソーダさんは気まぐれな精霊だけど、もしかしたらゼリーさんの前にはヒョイヒョイ現れるかもしれない。


 わたしが元の世界に帰るためには、きっと、精霊の力を借りる必要があるんじゃないかな。精霊はこの世界では、ただすごい力を持ってるだけじゃなくて、世界を作った神様みたいなものだから。


 まぁ、それはそれとして気をつけなくちゃいけないとは思う。……本当だよ?


「間違いなんて、ないと思うけど気をつけまぁす」

「イマイチ信用できない口調だけど、まぁいいわ。お気をつけて頑張りあそばせ」

「イヤミだ〜!」


 キャンディの心配事はそのまま蜂蜜くんの考えでもあったみたいで、明日からのことを伝えたらめちゃくちゃ怒られた。


「どうしてそんな大事なことを勝手に決めて、事後報告するんですか! 女の子がひとりきり、男と一緒だなんて、開いた口が塞がらないですよ!」

「うぐぅ……」

「まったく! 一緒に行ってさしあげたいところですが、すでにヴィークルの件といい、決まってしまったんですよね」

「う、うん」

「そうなると、やはり当日の朝に急に一名増やすのは無理でしょうね。キャンセルするのは……」

「えっ、やだ!」

「でしょうね〜」


 あの村には、もしかしたら結界の罠から逃れたジャムのパパや、ドーナツさんのパパもいるかもしれないんだよ。もちろん、そんな根拠もないこと、ドーナツさん本人や誰にも言えないけど。


 だから、行けるなら行きたい。


「この件について、ボクはサポートできません。自分の身は、自分で守るんですよ?」

「う、うん」

「危ないと思ったら、コレを使って。安全装置はありません。この穴を対象に向けて、魔力を込めたら……ええと、光が敵を倒します」


 蜂蜜くんがわたしにくれたのは、プラスチックでできた丸いフォルムのピストルだった。玩具じゃないの? 本物?


「レーザービームでも出るの?」

「!」

「でもこれ、魔力で動くんだ。へぇ。どこで売ってるの、こんなの。あと、どのくらいの威力があるの? わたし、ゼリーさんのこと殺すつもりとかないんだけど!」

「……威力はわりと高めです。至近距離なら、人体くらい簡単に貫通しますよ」

「こわっ!?」


 えっ、なにそれヤバすぎる!

 凶器じゃん、コレ!


「こんなのいらないよ〜!」

「いいから、持っていてください。暴発なんてしませんから、安全でしょう? あ、あんまりしまい込まずに、少しくらい太陽の光に当ててあげてくださいね」

「太陽電池なの!?」


 電卓か!?


「ホント、アスナさんってわかりませんよね〜。文化レベルがかなり高い世界から来たんですか? そのわりに、野蛮なこっちの世界にも馴染んでますよね」

「いやいや、べつにここが野蛮だとまでは思わないケド……?」


 蜂蜜くんが綺麗な金髪を揺らしながら首を振った。まったく同じ高さのハズだけど、上から目線でわたしに言う。


「ふっ、まったく。お人好し」


 それは悪口なの……?

 なんでそんなドヤ顔なの?


「蜜ちゃんは猫かぶりだよね」

「そうですが何か」

「えっ、隠しもしないの?」

「猫はかぶってナンボですよ。楽して生きていく処世術です〜」

「腹黒……」

「何とでもドウゾ〜」


 まったく、蜂蜜くんてば過保護なんだから。

 こんな護身用武器、使う機会なんて絶対ないのにね!

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