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わたし、異世界でも女子高生やってます  作者: 小織 舞(こおり まい)
ルート:ジェロニモ
247/280

探索しよう、秘境の村!

ノーマルルート第68部【ルート分岐 1】より





 わたしたちは、エクレア先生の実家で作業を始めた。でも、絶対に上手くいく気がしない。だってまるで学校の図書室並に本があるんだもん!


「これ、終わるのか……?」


 と、ドーナツさんが絶望的な顔で呟く。どんな敵にでも勇ましく向かっていきそうなドーナツさんが、まさかこんな表情しちゃうなんて……!


「手を、動かしましょう。まず、ジェロニモとオールィドさんは本棚から本をすべて下ろしていただけますか?」

「えっ、これ全部……?」

「どうせ今日中には終わりませんから、出来る限りで結構ですよ。アスナさんとアーシェイ君は、下ろしてもらった本に何か別の物が挟まっていないか、書き込みがないかを確かめてください」

「はい、先生」

「わかりましたわ」

「私は目録と本を比較し、おかしな所がないかを探します。お祖父様のことですから、わかりやすい場所に手記を置いておくとは思えません。しかし、紙類を保管するのには、やはりここが一番ですから、まずはここを制覇するのが近道かと思います」


 木を隠すなら森の中って言うしね、本を隠すならやっぱ本の中だよ。タイトルと中身が違うかもしれないし、目録にない本があったりするかもしれないし。


 よ〜し、やるぞ〜!


「って、思ってた時期がわたしにもありました〜」

「アスナ、口より手を動かしなさいな」

「へ〜〜い」


 わたしは今、別室で本の中身を調べている。その横ではキャンディが同じ作業を、少し離れたところではエクレア先生が自分の作業をしている。


 あの図書室、さすがに全部棚下ろしするとなると埃の量もすごくなるんだよね。だから、窓全開にして力自慢ふたりが大奮戦してるとこなの。


「先生、この確認作業が終わったら、次はどうするんですか?」


 なんて、今の作業が終わる目処すらついてないのに聞いてみる。隣のキャンディが呆れたように首を振っているのは見ないフリ。


「そうですね、とにかく、すべて調べて書き込みや手書きのメモを見つけ出します。お祖父様ならきっと、どこかに手記を残したはずなんです。ただ、政治的に表に出すつもりはなかったと思うので……」

「隠しちゃったってことなんですね」

「ええ。明日から本格的に探しますよ。弟にも、手伝ってもらおうと思います」

「それがいいですよ!」

「ただ、ジェロニモはこういう作業に向かないので、彼は彼で行動してもらおうと思っています」

「それって……」

「ええ。彼の生まれた村への道を、探してきたらどうかと言いました」


 そっか、別行動になっちゃうんだ……。


「適材適所ですよ。アスナさんは、明日の予定はどうなっていますか? もし良ければ、このまま手伝っていただけるとありがたいのですが」

「わたしですか? ん〜、正直、わたしもこういう作業は向かないんですよね。キャンディは?」

(わたくし)、明日は父を手伝うことになっておりますの」

「じゃあ無理かぁ。だったら、わたしは……」


▷エクレア先生を手伝おうかな

▶ゼリーさんと一緒に行こうかな

▷ドーナツさんとお話しようと思ってたんだよね

▷蜂蜜くんに聞いてから考えようかな

▷アイスくんに会いたいな

▷ソーダさんに会わなくっちゃ!


 最初に頭に思い浮かんだのは、ゼリーさんと交わした約束だった。結界の外にあるっていう、ゼリーさんの生まれ故郷。そこに連れて行ってもらう、って。


 ゼリーさんは十二年前、結界を越えてこっちの国にやってきた。そして、アクシデントで戻れなくなっちゃったんだと思うんだよね。


 千年もそこにあった結界。

 魔力を吸っちゃう危険なもの。


 そのせいで、ゼリーさんは家族と生き別れになっちゃったんだ。でも、その結界が消えた今なら帰れる。ソーダさんは、ゼリーさんの家族は元気だって言ってた。


「そう言えばわたし……この前、ゼリーさんに、いつか生まれ故郷の村に連れて行ってね、って言ったんです。そしたら、いいよって言ってくれたから……」

「ジェロニモが? そうですか……。それでは、アスナさんはジェロニモと一緒に出かけるんですね」


 エクレア先生は少し驚いたような顔をしたあと、何かを納得したように二、三度頷いてそう言った。待って先生、気が早すぎる。


「いえ! あの、まだちゃんとは約束してないんです。口約束っていうか、行けたらいいな〜くらいのもので……」

「ですが、ジェロニモのことです。私から明日の件で話が出たときから、あなたと行動するつもりだったと思いますよ」

「えっ、ウソ! ほ、ホントに? わたし何も聞いてない!」

「泊りがけになると思いますが、大丈夫ですか?」

「ええっ!? ま、待って、どうしよう……。キャンディ~~」


 あんまり良くないこととは思うけど、こういうとき、やっぱり頼りになるのはキャンディだよね。わたしが目で訴えるとすぐ、先生との会話に加わってくれた。


「まったく、もう。アルクレオ先生、さすがに外泊の許可は降りないと思いますわ。間違いがあるとは思いたくありませんけれど、年頃の男女がふたりきりだなんて……」

「そこは大丈夫です。結界の外にある村の探索は、陛下を見つけ出すための捜索活動の一環でもあるので、役人たちが同行しますので。キャンプ用品を積んで、馬車二台に分乗して行く予定ですよ」

「ああ、そういうことでしたら」


 あ、納得するんだ。

 キャンプ前提で行くんだね。ちょっと楽しそうかも?


 おでかけに前向きになってきたわたしに向かって先生が言う。


「どうでしょう。それで良ければ私から学園に許可を取っておきますよ、アスナさん」

「え、っと……」

「アスナがいいなら、(わたくし)も賛成しますわ」

「え~~!」

「あら、行きたくないんですの? やっぱりやめておきます?」

「ち、違うよ? でも、わたし、まだゼリーさんに誘われてもないのに、もう行くこと決定してるのってそれはどうなのかな~~って、思っただけで」


 先生とキャンディは顔を見合わせて、「確かに」って表情になったんだけど、結局ふたりの中ではもう決定事項になってるみたい。そうしてるうちにゼリーさんがドーナツさんと一緒に戻ってきて、わたしはゼリーさんと一緒に村の探索に加えられることになった。……釈然としないなぁ。

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