これまでのおはなし
はぁい、わたし、久坂 明日菜!
お菓子作りが好きで運動は苦手な高校ニ年生。登校途中にいきなり異世界に飛ばされちゃったの。
そこはまるで乙女ゲームの世界みたいに不思議なところで、魔法と機械が融合したマギテックっていう文化があるの。レンガの街に馬車が走ってるのに、お家の中には洗濯機があるみたいな。
その国に暮らすひとたちも、髪の毛が水色だったり緑だったり、こっちの世界とは全然違う!
そんな世界にいきなり落っことされて、「魔力が枯渇してるから、キスして分けてもらわないと死んじゃう」って言われちゃったの。信じらんないでしょ! わたしのファーストキス、こんなとこで失うのはヤダ!
死ぬかもしれないときにそんなワガママを言うわたしのために、出会ったばかりのひとたちが、色々知恵を絞って助けてくれた。よかった、ファーストキスなくさなくて!
わたしがやってきたのはジルヴェストっていう島国で、王様はなんと俺様ナルシストな同い年の男の子だった。名前は長いから、あだ名で呼んじゃう。赤い髪だしベタベタしてくるからジャムね。
「オレの妃になれ」とか冗談じゃない、わたしは帰る!
でも、どうやって?
悩むわたしにジャムは交換条件を出してきた。この国にある唯一の女の子のための学校、花嫁修業専門のマリエ・プティ学園に通うなら、衣食住、それにお小遣いもくれるって。学園で生活しながら、帰る方法を探せばいいって。なに、その好条件、とおもったら……その代わり、三年たって卒業したら、結婚しろって!
そんなわけで元の世界に帰る方法を探すため、わたし、異世界でも女子高生やってます。
剣も魔法も使えないわたしにできること、それはハリセンでのつっこみとお菓子作り。それに、この世界に来てなぜか見えるようになったステータスを活用すること。
って言っても、ステータスは全員に見えるわけじゃない。
セクハラ俺様ナルシスト王のジャム
わたしをここに落っことした張本人の陰険酢飯野郎の宰相シャリさん
ファーストキスを守ってくれた明るい騎士のお兄さん、ドーナツさん
結界の外の国から来た奴隷のアイスくん
わたしの護衛を命じられて女装中の腹黒暗殺者、蜂蜜くん
ジャムの従妹で婚約者で女の子が好きな悪役令嬢、キャンディ
こっちの常識を教えてくれたりするエクレア頭の先生
それから……無口すぎる不思議なお兄さんの、ゼリーさん
わたしが落っこちてきた国は、王さまがいて騎士がいて、馬車が通りを闊歩してるようなところ。だけど、現代的で未来的なところもあるんだ。わたしたちの世界で言う電化製品みたいなものがあって、それは全部魔力で動いてるの。
そのすごい魔力をギースレイヴンっていう国に狙われているから、結界を張って守っているんだって。でも、その結界の存在を知っているのはひと握りの人間だけなの。なんだか不思議でしょ?
ある日、こっちで友だちになった女の子、チョコが倒れたことでわたしは結界の真実を知ることになったの。結界は、ギースレイヴンからこの国を守る代わりに、この国の人たちの魔力を吸い上げていた! そしてそれは命にかかわるものだったの。
わたしは、結界を張ったシャリアディースと話をすることにした。千年も前から生きていて、わたしをここへ落っことした張本人と。そして、結界が奪っている命と、救っている命について聞かされた……。
納得なんてできない。
でも、ただ否定することもできない。
だって、わたしは部外者だから。
……ゼリーさんの大きな怒りを背負ったあの顔を忘れることができないの。
ゼリーさんはシャリアディースに縛られている。でなきゃ、結界の真実を知ってものすごく怒っていたあのひとが、何もないような顔をしてアイツの近くにいられるわけがない。
わたしは、国王であるジャムに真実を伝えるべきだと思った。
結界のこと、ジャムは知らないみたいだったから。これも謎のひとつだよね。
それなのに、ジャムはいなくなっちゃった!
シャリアディースも一緒にね。同時に、この国を守っていた結界も消えた。
当然、国の中は大混乱。
結界については、偶然居合わせた風の精霊、ソーダさんになんとか代わりのものを用意してもらえた。ついでに、と言ってはなんだけど、ゼリーさんの家族が結界の外にあった村で元気にしているのも教えてもらうことができた。
ゼリーさん、すごく小さい頃に家族と生き別れになっているんだよね。
結界が消えた今なら、その村に行くことができる。
わたしもその村に行きたいって言ったら、いいって言ってくれたの。
帰るための手掛かりがそこにあるかもしれない。
◎ゼリーさん
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
【名前】ジェロニモ・スレーン
【性別】男
【年齢】19
【所属】ジルヴェスト国
【職業】護衛
【適性】戦士
【技能】◆この項目は隠蔽されています◆
【属性】無口
【備考】魔法に詳しい?・シャリに弱みを握られている?・風の精霊と顔見知り
★ ★ ★
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥




