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わたし、異世界でも女子高生やってます  作者: 小織 舞(こおり まい)
ルート:アルクレオ
222/280

突然のハプニング

「カーリー先生!」


 エレベーターに乗り込むカーリー先生を呼び止める。先生は黙ってわたしにも乗るように手招きした。お店の一階、持ち帰り客のためのカウンターとレジの間で、カーリー先生は小声でわたしにささやいた。


「アンタも逃げ出してきたの?」

「違いますよ。だってカーリー先生、言うだけ言って出てっちゃうんだもん。わたしからも聞いていいですか?」

「いいわよ。……手短にね」

「アルクレオ先生は、今のところ普通に暮らしていけるんですよね? この前は急に倒れたけど……」

「多分、大丈夫よ。この前のことは原因不明だから、経過をよく見なくちゃいけないと思うけどね」

「それと、危険な薬って……」


 カーリー先生は露骨に顔をしかめた。


「あれね。母さんは口止めされてて誰にもらったのか言わなかったけど、この国でそんなもの持ってるヤツと言えば……わかるでしょ?」

「わかる……今はいないアイツのことだよね……」

「そーよ」


 あの酢飯〜〜〜!


「とにかく、兄さんについててあげて。アタシはもう、色々、兄さんとはこじれちゃってるから……」

「ふたりとも、お互いのこと大事に思ってるのに、そんなのって悲しい……。いつか、ちゃんと話をしてほしいな」

「アスナちゃん……」


 ジャムの手がかりを探そうとして、三人でアル先生の家で作業したときも、ついさっきも、かなり仲良さそうな雰囲気だった。


 色んなことですれ違いがあったとしても、お互いを思いやる気持ちがあるなら、きっと仲直りできると思うんだよ!


「そうね。そのうち、ね……」

「うん!」


 カーリー先生をお店の外まで見送って、さぁ中に戻ろうとしたとき、わたしは急に襲ってきた痛みに悲鳴を上げた。


「アスナさん? ……どうしました!」


 体中を撃ち抜かれたみたいな痛み。

 今まで生きてきた中で、こんな痛みは経験したことがなかった。もう自分が立っているのか倒れているのかもわからないまま、わたしは泣きわめいて、痛みから逃げようと手足をバタつかせた。


「誰か、馬車かヴィークルを! 早く!」

「アスナちゃん! しっかりして!」

「誰かこの中に医療の心得のある方はいらっしゃいませんか? 早く、病院へ……!」


 痛みの中に先生の声が聞こえてくる。

 わたしの手を握ってくれる温かさを感じる。


「せん、せい……」

「アスナさん! どこが痛むんですか? すぐに車が来ますから」

「わか……な……」

「アスナさん、どうか意識をしっかり保ってください!」


 痛みはだんだん薄らいできていた。

 わたしは、どうにか頷いて、先生の手をギュッと握った。


 でも、もう一度、もっと強い痛みが襲ってきて、わたしは今度こそ気を失った。





 ふっと、気がついて目を開くと、真っ暗だった。


「夜……? やだ……」


 どこにいるのかすらわからない。

 体が動かない。


 怖い。怖い……。


「いやっ……!」

「アスナさん、目が覚めましたか」

「先生! 先生、どこ……?」


 頭を動かすこともできないわたしに、先生の優しい声が降ってくる。かすかな物音。すぐ近くにいてくれる、それだけで心がホッとする。


「明かりをつけていないのです。だから、暗いんですよ。今つけると、慣れていない目が痛むでしょうから、今日はこのまま眠るといいでしょう」

「わたし、倒れたんですよね……?」

「ええ」

「どうして……」

「今は気にせず眠ってください。明日、ちゃんとお話しますから」

「ん……」


 頭も体もとにかく重くて、今は何も考えられない。

 先生にお礼を言わなくちゃ、そう思いながらもわたしの意識は落ちていった。





 次に気がついたときも、まだ真っ暗な部屋の中だった。

 寝かされているのはわかる。わたしが体を動かそうとすると、アルクレオ先生の声がした。


「アスナさん。まだ無理してはいけませんよ」

「アルクレオ先生……。わたし、もう、大丈夫です」

「いいえ、そんな訳ありませんよ」


 先生の声が少し厳しくなる。

 でも、フッとため息が聞こえて、苦笑混じりの声で先生が言った。


「私が言っても説得力がないのかもしれませんが、もう少し安静にしてください」

「……はい」


 確かに、と思った。

 ここにカーリー先生がいれば、きっとアル先生をいつもの調子で叱ったんだろうなぁ。


 そう思うと、少しおかしくて。

 自然と笑ってしまっていた。


「……あなたの手に、触れてもいいですか?」

「えっ。は、はい、どうぞ」

「では」


 そう言って、先生はわたしの右手を取った。

 まるで、自分の腕が自分のものじゃないみたい。そんな非現実感。でも、先生の手の温もりは感じられた。


 わたしの手をすくい上げるようにして上に持ち上げて、先生はそれを自分の頬に当てた……と、思う。


「先生……」

「きっと、すぐによくなります。だから、しっかり休んでください。私が、側にいますから」

「先生……! ありがとう、ございます」

「いいえ、気にしなくていいんですよ。さぁ、ほら、目を閉じて。もう少しだけ、ゆっくりしましょう」

「はい……」


 優しい声に守られて、わたしはまた眠りに落ちていった。

シャリアディース「良かれと思ってのことだよ?」


うるせぇ(’-’*)♪

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