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わたし、異世界でも女子高生やってます  作者: 小織 舞(こおり まい)
ルート:アルクレオ
217/280

先生と魔力測定

 朝、登校前に先生と待ち合わせしていた。先生は時間より早めに来ていて、わたしもちゃんと間に合うように着いてよかったなとホッとする。


 ゼリーさんの運転する馬車に乗って病院へ向かう。その途中、ドーナツさんに出会った。


「よっ!」

「オルさん! おはようございまーす」

「おはようございます、オールィドさん」

「おはよう。アスナも先生も、無事で良かったな〜。一時はヒヤヒヤしたぜ。あっ、そうだ、昨日情報が回ってきて、ようやく陛下を探しに行けることになったんだ!」

「早いですね……」


 ドーナツさんの言葉に、先生が小さな声で呟く。

 確かに、情報が早〜い!


「俺は絶対、陛下を見つけ出す! と、それは置いといて、ギズヴァイン先生の家には、大先生の手記があるんだよな? 俺は見つけた現場にいたから知ってるんだけどさ。あれに、シャリアディースの氷の城について、何かもっと手がかりはないのかな?」

「私もそれについては考えていました。詳しく読み返してはいるのですが、まだ手がかりはありません。また、別の手記がないか探す予定です」

「そっか……。わかった、ありがとう」

「いえ、お役に立てずにすみません」

「ところで、先生たちは今からどこへ行くんだ? 俺が言うのも何だけど、まだ朝も早いぜ?」


 はい、そうですね。

 今、七時ですもんね。


「私たちは今から病院です。あ、安心してください、ただの魔力測定ですから」

「へ〜。俺は成人してから測ってないなぁ」

「そうですか。そんなに何度も図るものではありませんしね。とはいえ、私は実は初めてなのですが」

「へ〜! 意外だなぁ。先生にとっては実家も同然なのに、今まで受けたことなかったなんて」

「えっ」


 どゆこと?

 実家も同然って?


 むしろさっきから、先生が魔力測ったことないのにも驚いてるんですけど!


「お恥ずかしいことです。そういうわけですので、アスナさんの授業に差し障りが出ないよう、早めに行って早めに終わってきますので、これで失礼いたします」

「そこは授業を休んでゆっくりしてくるところなんじゃないのか? せっかく学園を抜け出せたのにさ」

「……さてはオールィドさん、家庭教師から逃げ回っていたクチですね?」


 わかる〜!

 すっごく、それっぽい!


 先生の言葉に何だかんだ言い訳して、ドーナツさんは逃げるように行ってしまった。


「行きましょう。それとも……彼の言うように、抜け出したまま戻らずに、しばらく一緒にいましょうか」

「え……」


 先生が優しく笑いかけてくる。

 でも、それって……本気なの? それともからかってる?


「……なんて、冗談ですよ。私よりべつの方と遊んだほうが楽しいでしょうからね」

「そんな! わたし、先生といるの楽しいですよ! でも、授業があるから、そのお誘いに乗ったら怒られるんじゃないかと思って……」


 罠かと思ったんだもん。


「そうですね、授業は大切です。それなら、放課後ではいかがでしょう。もし良かったら、私の研究室に遊びに来てください。お茶をごちそうしましょう」

「いいんですか?」

「もちろん。アスナさんの都合が悪くなければですが」

「やった! じゃあ、放課後に。約束ですよ?」

「はい。約束です」


 わたしが小指を絡ませると、先生はビックリした顔をした。

 そっか、こっちの世界には「指切りげんまん」なんてないんだ。当たり前といえば、当たり前すぎたよね。


「あ、アスナさん?」

「これ、わたしの世界での、約束のしるしなんです。嘘ついちゃダメだよって」

「……わかりました。あなたに嘘は、つきません。約束します」

「先生……」


 そういう意味じゃなかったんだけど、でも、先生の真剣な顔を前にして今さらそんなこと言えなかった。


 それに……嬉しかったの。

 先生は優しくて、誠実で、無知なわたしを守ってくれる。わたしが利用されないように、わたしがわたしでいられるように。


 ジャムが見つかったら、わたし、先生と一緒に帰り道を探したい。ギースレイヴンへ行って、あの王子さまにも会ってほしい。きっと、先生なら、何か良い案を見つけてくれる、そう信じられる。


「先生、あのね……きゃっ!」

「アスナさん!」


 そのとき、馬車が大きく揺れてバランスを崩したわたしを、先生の手が受け止めてくれた。気がつくと、先生の胸の中に抱きとめられる形に……。


「大丈夫ですか?」

「は、はい。大丈夫です……」


 こんなに距離が近づくと、胸のドキドキが止まらなくなる。もう何度目だろう。こっちに帰ってきてから、先生とこんな風になることが多い気がする。


 先生にそんなつもりがなくても、わたしは先生のこと……。


「よかった。道が少し荒れていたようですね。後で言っておかなくては。もうすぐ着きます、心の準備はいいですか?」

「ふふっ。ちょっと怖いです」

「大丈夫、私がついていますからね」


 冗談なのか本気なのか、先生はそう言って笑う。

 戸惑うこともあるけれど、わたしはこういう空気は嫌じゃない。


 先生の言うとおり、馬車はすぐに病院についた。ドアには「時間外」のボードが下がっている。でも、先生はそれを気にせずドアを開いてわたしを中に入れてくれた。


 時間外とは言っても、明かりはついている。

 わたしがキョロキョロしていると、奥からひとが出てきて、わたしたちを計測の部屋へ案内してくれた。


 中は普通の診察室みたい。机に向かっていたお医者さんらしいオジサンが、わたしたちを見て椅子から立ち上がる。


「おはようございます、アルクレオ様。いつもお世話になっております」

「とんでもありません。こちらこそ、いつもありがとうございます」


 わたしの頭の中にはクエスチョンマークがいっぱい。

 これが「実家も同然」ってこと? 先生の家って、病院も経営してるのかな?


「お加減はいかがですか」

「幸運なことに至って順調です。今日はお願いしていたとおり、私と彼女のふたり分の魔力を測定に参りました」

「ええ、時間通りですね」

「はい。まずは私から、よろしくお願いいたします」


 いよいよだ。

 ちょっと血を採るだけって言ってたけど、いざとなると、怖い! ものすごく痛い注射だったらどうしよう……!

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