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わたし、異世界でも女子高生やってます  作者: 小織 舞(こおり まい)
ルート:アルクレオ
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帰り道

「わたしも、オースティアンさんの捜索に協力させてください。魔力の供給、お手伝いします」

「ありがとう、アスナ。本当に感謝する」 


 わたしの言葉に、パルフェさんはしっかりと頷いて、わたしに手を差し出してきた。今度こそ握手の仕草。わたしもそれに応えて手を出して、ギュッと握った。


「さっそく書類にしておこう。アガレット」

「ああ、用意できているよ」


 アガレットさんがクリップボードみたいなものを取り出した。でも、エクレア先生はパルフェさんに向かって言う。


「恐れながら、先王陛下。お願いがございます。今回のこと、書類を作ってアスナさんの名前を残すことは、やめていただけないでしょうか」

「ほう」

「アスナさんは一時的にこの世界に身を寄せているだけで、帰り道を見つけることができれば、帰るつもりでいます。その彼女が大きな魔力を持つことを多くの人間に知らせるのは、彼女にとってあまり良いことではないと思います。

 善意の魔力提供者たちの協力で陛下の捜索を行うことができると発表すべきです。これまでのことについて、先王陛下もすでにその様にされていらっしゃるのではありませんか?」

「…………そうだな。では、そのようにしよう」


 パルフェさんがそう言った瞬間、空気が……空気が本当にゆるんだ気がした。ホッとしたっていうか。すごい重圧。そんな怖い顔してるとかもなかったのにね。


 その後、パルフェさんとアガレットさんはやることがあるからって帰ることになった。

 パルフェさんに「よければ王宮へおいで」って誘ってもらったんだけど、わたしは断った。寮での生活には満足してるし、学園へも寮からの方が近いもん。


「そうかそうか。学園を気に入ってもらえて嬉しいよ。無事にオースティアンを見つけたら、あいつも交えてまた話そう。そのときにはゆっくり、君の世界の話も聞かせてもらいたいものだ」

「はい。ぜひ!」


 パルフェさんと握手して別れる。アガレットさんもにこやかに握手してくれた。


「やぁ~、話がまとまって本当によかったよ。明日から始めてもらおうと思うのだけど、いいかい?」

「はい」

「なら、病院へ行って、そこの魔力球への補充を最優先にしてもらおうかな。それと、せっかくだから正確な魔力値も測ってもらったらどうだろう。知ってて損になることはないと思うよ」

「魔力って測れるんですね。じゃあ、それも受けてきます」

「うんうん。あ、ここの支払いは私に来ることになってるから、自由にしてくれて構わないよ。あと、寮生へのケーキは……」

「いえ、それはいいです!」

「あ、そう? それでは、またね! 近いうちに会いに行くよ!」


 アガレットさんは騒がしく帰って行った。キャンディが腰に手を当ててご立腹だわ。

 わたしは話題を逸らすことにした。


「魔力値ってどうやって測るのかな! わたし、初めて聞いたよ~」

「簡単ですよ、少し血を採って調べるだけですので」

「血を?」

「はい。血を採ると聞くと拒否される方も多いのですが、アスナさんもこういうのは苦手ですか?」

「う~~ん」


 わたしと先生のやり取りを見ていたキャンディは、楽しんでる口調で割り込んできた。


「それなら、先生についていっていただいてはどうですの? 側にいてもらえば、アスナの心も少しは落ち着くのでは?」

「ちょ、ちょっと、キャンディ!」

「構いませんよ。一緒に行きましょう。まず私が検査を受けるので、それを見た後なら怖くないでしょうから」

「ええっ! いいんですか?」

「はい。怖がるアスナさんを放ってはおけませんから」


 先生はすっごい笑顔だった。

 もしかして、からかわれてる……?


「ふふふふっ。アスナ、よかったわね」

「う、うん……」

「先生、アスナをよろしくお願いしますわ」

「はい、承りました」


 ふたりとも、楽しそうだなー。

 チラッとゼリーさんの方を見てみると、黙ってケーキを食べていた。


 うん、よかった。

 わたしたちだけ食べてたの、実は気になってたんだよね。


 四人でゆっくりお茶して、帰りは馬車を呼んでもらって帰ることになった。

 明日は放課後、先生とふたりでお出かけ。ううん、ゼリーさんも入れれば三人か。しゃべらないし後ろにいるしで、そこにいることを忘れちゃうんだよね!


 そんな帰り道の途中で、なぜか話題は「好きなひと」の話になってしまった。

 きっかけは、パルフェさんのこと。


「アスナ、今日は話には出ませんでしたけれど、アスナはお兄様からの求婚話、受けるつもりはありませんのよね?」

「ないない! でも、なんで?」

「そんなの、聞かれたからに決まってますわ!」


 ですよねー。

 アガレットさんかな?


「もちろん、ありえないと答えておきましたけど」


 おおっと。ジャムが可哀想なくらいバッサリ。

 いや、まあ、誤解されたら困るからわたしとしてはありがたいんだけどさ。


「でも……伯父様に対しては、まんざらでもなさそうでしたわよね、アスナ」

「ぶっ!? ちょ、何言い出すの、キャンディ!」

「もしかして、伯父様が好みのタイプだとか?」


 うぐっ!

 それはそうなんだよ! 図星だよ!


 だってかっこいいんだもん!!!

 ストライクなんだもーーーん!


「アスナ、もし伯父様からそういうお誘いを受けたら……」

「ない! ないから! 話が飛躍しすぎだって!」

「そう? それなら、いいんですけど……」

「ホントにないからね? ちょっと好みだからってそんな、いきなりそんなこと言われても困るもん!」


 もうっ、キャンディったら~~~!

 顔が茹でダコになっちゃうよ~~~~!

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