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わたし、異世界でも女子高生やってます  作者: 小織 舞(こおり まい)
ノーマルルート
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エクレア先生……だよね?

 お迎えは裏門で待機してもらっている。だって正面は人目が多いから。門の内側に立っているドーナツさんは、今日も黒の鎧姿。そして、耳許にはマラカイトの耳飾りが両方揃っていた。


 最初は「ん?」と思った深緑のマントも、見慣れたら格好いい。姿勢がいいのもポイント高いよね。女の子たちが絶対に騒ぐよ、このイケメンは!


「ドーナツ……じゃなかった、ドゥーンナッツさぁん!」

「嬢ちゃん。走ってきたのか? 急ぐことなかったのに」

「だって、待たせちゃ悪いと思って!」


 息せき切って、ってほどでもないけど多少はね。わたしは、お城に顔見せに行くのをすっかり忘れていたことやテストで毎日一喜一憂していることをドーナツさんに近況として話した。


「へぇ。毎日楽しそうで何よりじゃん」

「むしろ馴染んじゃってて、目的を忘れそうで怖いんですけどね」

「嬢ちゃんなら大丈夫だろ!」


 ドーナツさんの根拠のない励ましが逆にありがたい。


「そうそう、オレの名前だけどオールィドっていうんだ。皆はオルって呼ぶ。良かったら嬢ちゃんもそう呼んでくれ!」

「オルさん、ね。よろしく、オルさん!」

「おうよ!」


 ドーナツさんの本名って呼びにくいから、助かっちゃった。いざ馬車に乗り込もうとしたとき、わたしたちと同じように裏門で待ち合わせをしているひとたちを見かけた。その中にはエクレア先生もいた。どうしてだろう、今日はゼリーさんを連れていないみたい。


「先生!」


 思わず呼びかけると、わたしに気づいたエクレア先生は、片目でぱちんとウィンクをして、そのまま馬車に乗ってしまった。ウィンクて……星が飛んでたよ、星が。あなたそんなキャラでしたっけぇ? 百歩譲ってただの挨拶だったとして、先生がするならおじぎとかだと思うんだけども!


「ギズヴァイン先生じゃないか。そうか、この学校の講師になったんだっけ」

「知ってるの?」

「そりゃ知ってるさ、宮廷マナーってやつを叩き込まれたからな。厳しいけど、いい人だぜ。俺は好きだな」

「へぇ」

「俺が世話になったのは主にあのひとの祖父にあたるお爺さん先生でさ、ちょっと、おおらかすぎるっていうか……まぁ、いい人だったよ。俺は今の先生ぐらい厳しい方が好きだな」


 そう言ったドーナツさんの横顔は、何か言いにくそうなことがあるって感じだった。


「おおらかって、誉め言葉だと思ってたけど。オルさんはなにか、引っ掛かってることがあるの?」

「……陛下はさ、誰に対してでも偉ぶらずにお話くださるんだよな。まだ若くて、それもあって、陛下のことを舐めてる奴が多いんだ。平和すぎるんだよ、この国はさ。

 先王が陛下に王位をお譲りになって、結界を維持するための方法を探して来るって城を出て行かれてからずっと、ひとりで玉座を守っていらっしゃる。俺は陛下を尊敬してる。だから、陛下に対して最高の敬意を払ってるギズヴァイン先生が好きだぜ」

「そっか。ジャム、まだ若いもんね。先生も若いし……お城の中ってもしかして、結構ドロドロ?」

「さぁな! ってか、陛下のこと愛称で呼べるくらい仲いいんだな、嬢ちゃん」

「ばっ、そんなことないってば! むしろ仲悪いと思うよ!」

「ははは、照れてら」

「照れてない!」

「陛下がもし、この先お妃を迎えられて、そのとき嬢ちゃんが自分の意思でその位置にいてくれたら……俺は嬉しいぜ」

「オルさん……。そんな日は来ないから、絶対!」

「ははははは! 楽しみだなぁ~!」


 ドーナツさんはわたしの言葉を無視して笑う。

 まったく、ほんとのほんとにないんだってば!


 それにしても、ドーナツさんのジャムに対する忠誠心は本物なんだなぁって思った。さすが、騎士! 何の騎士だったかはステータス見ないとわかんないけど。それに、エクレア先生もジャムに敬意を払ってるんだ。そんな風に、二人から尊敬されているジャムのことを、少しだけ見直した。少しだけね!


 先王ってことはジャムのお父さんなのかな……結界を維持する方法って、わたしが来たことで結界は修復されたはずだからもう必要ないんだよね。お父さんがいなくなっちゃったのは、何年前の話なんだろ。


 わたしと同い年のジャム。置いていかれちゃうなんて、きっと心細かっただろうなぁ。

 そういえば、ジャムのお母さんの話も、城にいる間に一度も、誰からも聞かなかった。いつか、ジャムともっと色々話せるようになったら、聞いてみようかな。そのときは、きっと彼に優しくしてあげよう。






 って思ったのに……ジャムときたらてんでダメなヤツ!

 お城に着いて部屋に通されるや否や、わたしは不機嫌MAXって感じのジャムに詰め寄られ、壁際に追い詰められちゃった。壁ドン! 壁ドンなの!? ジャムの手がわたしの顔の真横に突かれる。細くて長い指だけど、やっぱり男の子だね、骨張ってる……じゃなくて、何でわたしにこんなことを!?


「アスナ……オレは怒ってる。どうしてだか、わかるな?」


 わかんない!

 まったくわかんないよ!!


 お願いだから耳許で低い声出さないで……くすぐったくなるでしょ!!


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