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わたし、異世界でも女子高生やってます  作者: 小織 舞(こおり まい)
ルート:オールィド
188/280

会談とお昼ごはん

 何でも遠慮なく望みを言え、って言われても……困るよね。でも、言われてすぐにオルさんは答えた。


「では、ひとつ質問をお許しください」

「よいぞ、申せ」

「つい最近、この国に私と同じジルヴェストから誰か参りませんでしたか? 若い男が、おそらくふたり以上で。そのうちのひとりは、シャリアディースという名の、水色の長い髪を持つ男です」

「いいや、来なんだ。して、その者たちの目的は?」


 そこから先は、探しているのがジャムっていうことを上手く隠しながら、「会ってないし、王都にも来ていない」ってことを聞き出すための、長い長い会話だった。


 事前に聞かされてなかったら、絶対に口を挟んでたと思う。

 でも、まさか「うちの国王陛下が来てませんか?」なんて、バカ正直に聞くわけにはいかないから、当たり前だよね。


 ただ、この国に来たときと今じゃ、ちょっと状況が違うから、少し不安。

 あのときは、ジャムの目的を「ジルヴェストをギースレイヴンの侵略から守ること」だと思ってたから、それなら当然、お城を目指すハズなんだよね。


 でも今は、ジャムはシャリアディースに無理やり連れ去られちゃった可能性があるから、お城には行ってないかもしれない。むしろ、このギースレイヴンにすら来てないかもしれない。来てない「かも」しれないものを証明するのって、不可能じゃない?


 でも、女王さまは「来てない」と言い切った。


「あまり誉められた話ではないのだが、我が国で異国の者はすぐそれとわかる。特に、そなたらの言葉は我らと変わらぬであろ? ギースレイヴンの言葉を訛りなく話し、妾に忠誠を捧げた印を持たぬ者など、数えるほどしかおらぬし、それが若い男となればひどく目立つ」


 だから、ジャムたちはこの国には来てないってこと?

 オルさんはその答えに納得したみたい。お辞儀をしてお礼を言っていた。


「……すまないが、少々疲れた。妾はこれで失礼させてもらおう。だが、せっかく来たのだ、ゆっくりしていけ」

「陛下のお心に感謝申し上げます」

「ありがとうございます!」


 女王さまは本当に疲れた様子で部屋を出て行った。

 オルさんが小声でわたしに言う。


「どうやら、具合がよくないみたいだな」

「うん。マナの実、もう食べたのかな。それとも、薬じゃないからやっぱり食べてもあんまり意味はない?」

「かもな」


 それから、執事さんが食事を運んできてくれた。手押しのカートにたくさん、銀の丸い蓋がされたお皿が乗ってる。食べきれるかなぁ?


 執事さんは、本当はコース料理だからひとつずつお皿を出す予定だったんだけど、わたしたちだけで話せるように、全部持って来たってことを説明してくれた。その方が、わたしたちにとってはいいんじゃないかって。


 もちろん、その方が嬉しい。

 オルさんもわたしもお礼を言って、長いテーブルにあるだけ並べられた料理をふたりきりで楽しむことにした。


「じゃあ、行儀は悪いけど、目の前にある分を食べ終わったら、どんどん横に席をずらしていこうぜ」

「うん、いいね。まるでアリスのお茶会みたいで楽しい」

「アリス?」

「ああ、わたしの世界の、子ども向けの絵本の話だよ」

「へぇ。アスナは色んなことを知ってるんだな。よし、まずは腹ごしらえしよう! 話はその後だ」


 オルさんはそう言って、さっそくお皿に乗っていた蓋を開けた。

 まずは鮮やかなオレンジ色のスープ! すくって口に入れると、冷たくて美味しい、人参のポタージュだった。プチサラダ、キノコとカブのショートパスタ、ステーキ、それからキラキラしたゼリー。その後にもお魚とパイ料理があるみたい。


 わたしがサラダを味わっているうちに、オルさんはステーキを食べ終えて、ブドウジュースのお代わりをしていた。


「オルさん、早いね……」

「うん? そうかぁ? どれも美味しいから安心して食べていいぞ。あ、腹具合と相談して好きなものから食べとかないと、デザートが入らないぜ? もちろん、食べきれなかったら俺が食べてやるし」

「あはは、じゃあ、もし食べられなかったらお願いしようかな」


 結局、わたしが別の椅子に座り直す頃には、オルさんは自分でどんどんお皿を取ってきてて、デザート以外を食べ終えてしまっていた。


「グラタンとパイ、美味かったな~」

「うん。わたしはひとくち食べるのでせいいっぱいだったけど」

「そうだったな。じゃあ、ゆっくり話そうぜ」

「うん」


 オルさんはまず、わたしのために女王さまとの会話をおさらいしてくれた。


「陛下のことだけど、この国には来てない。だから、もうこの国でやれることはないんだ」

「でも、どうしてそんなこと、言い切れるの?」

「うん。俺たちは王子さまのいる旧王都ってとこからここまで来ただろ? でも、土地のほとんどは荒れ果てていて、人間の住める場所は限られてた。王都の周辺も、手入れされてるのは壁の内側だけで、外は荒野だっただろ?」

「あ……じゃあ、どこかの町に行かないと、食料も水もないんだ……」

「そういうこと。そりゃ、どうにかして隠れ住むこともできるかもしれないけど、そこまでしてこのギースレイヴンに居つく理由がない。俺たちと同じくカップで移動してるとか、シャリアディース様……元宰相閣下の用意した手段で移動できるなら、どこかよその国に行ったっていい」

「もしかして、やっぱり海は越えてなくて、ジルヴェストにいるって可能性は?」

「あの最果ての村にもいなかったのに? あの暴れ海竜が元宰相閣下の飼いならしてる生き物なら、隠遁するのに海を渡らない理由がない。だって、海の向こう側に逃げれば俺たちには追っていけないハズなんだからな」

「それもそっか」


 シャリさんが逃げるなら、確かに、海を越えていかない理由がない。

 それに、こんな魔力のない土地で、サバイバルするのに条件の悪い場所に隠れる理由もない。だって、海を越える手段があるなら、どこへだって行けるもん。


「じゃあ、どうしよう……」

「一度、ジルヴェストに戻るか、それとももう少し旅を続けるか、だな」


 う~~ん、どっちにするべき?

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