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わたし、異世界でも女子高生やってます  作者: 小織 舞(こおり まい)
ルート:オールィド
185/280

これからの動き方

 いきなりジャムの名前が出てきて、わたしはビックリしちゃった。オルさんも隣で何だか苦い表情。


 とにかく、わたしたちはクリームくんから離れて、オルさんがここまで乗ってきたカップまで歩いた。そして、歩きながらオルさんが言う。


「俺は今まで、シャリアディース様は、陛下を傷つけたりしないって、思ってたんだけどな……」

「わたしも」

「さっきの、拐われた王子の名前を聞いて、ちょっと考え方が変わった」

「うん……」


 そうなんだよね。

 ジャムの本名はオースティアン。そして、シャリさんが拐った王子さまのひとりも同じオースティアンって名前なの。


 ジャムが生まれるずっと前から王宮にいたシャリさんが、ジャムの名づけに関わってないなんて信じられる?


 これは絶対に何かあるよね!


「陛下は、ギースレイヴンとの関係を良くするためにここへ来たんじゃないかっていう仮説も、もしかしたらてんで見当違いなのかもしれない」

「どうしよう……オルさんは、どうしたい?」

「うん、予定通り王都へ向かって、そこに陛下がいないってことを確信したい。まずは近場から、可能性を潰す。それは先王陛下の指示でもあるしな」

「えっ? ジャムのお父さん?」

「ああ。アスナの伝書機、借りたぜ。俺のは、返ってこなかったからな。たぶん、俺が屋内の受け取れない位置にいたせいで、届く前に魔力が切れたんだ」

「そっか、アイスくんに送ったわたしの伝書機、オルさんが持っててくれたんだ!」

「そういうこと」


 もしかして、朝起きてすぐ伝書機でやり取りして、それからわたしのことを起こしてくれたのかな?


 その優しさに胸がじんわりあったかくなる。


 それはそれとして、ジルヴェストだ。

 ジャムのいない今、ジャムのお父さんが最高責任者になったのかな。ギースレイヴンの王都へ行く手段と、王都で自由に動ける許可がある今だからこそ、ダメ元でもジャムを探しに行くっていうのは、わたしも良い案だと思う。


「それなら、やっぱりギースレイヴンの王都へ行こう、オルさん」

「アスナはそれでいいか?」

「うん。王都でなにかわかるかもしれないし!」

「そっか。アスナは、帰る手段も探さなきゃいけないんだもんな」


 オルさんの声に少しだけ、残念そうな感情がこもっているように思えて、ドキッとする。


 そう、わたしは、ジャムも探すけど、自分自身の帰り道も探さなきゃいけないのだ。そもそも最初の目的は、手がかりを集めるために結界の外に出ることだったんだから。


 それは今、シャリさんが結界をなくしちゃったことで、半分以上解決したわけ。オルさんのお父さんであるマフィンさんと喧嘩しちゃったから、あの村で手がかりを探すことはできなくなったけど、代わりにギースレイヴンにやってきて別の手がかりをもらった。


 時の精霊のこと。

 詳しいことは、闇の精霊、マカロンさんを捕まえて聞くか、それともどうにかして時の精霊を探して聞くしかないけど。


 それと同時に知らされたのは、わたしの魔力が全快すると、精霊になっちゃって人間じゃなくなっちゃうってこと。これを止めるには、大地の精霊であるコンちゃんか、海のどこかで氷漬けになってる水の精霊を探すしかない。名前は確か……シャーベットさん!


「オルさん、わたし……。王都へ行って、ジャムを探すけど、他のことも聞いたりしていい? 知らなくちゃいけないことが、あるの」

「もちろん、いいに決まってる。……もしよかったら、俺にも教えてほしい。頼りにしてくれよ」

「うん……!」


 わたしは、アイスくんに教えてもらった、精霊になっちゃうかもしれない話をした。オルさんは驚いてたけど、途中で口を挟むことなく聞いてくれた。


「それじゃ、このギースレイヴンにいるうちは、魔力が完全に回復しちまう危険性は、ほぼないんだな」


 オルさんは最後まで聞いて、そう言った。

 うん、「ほぼ」なんだよね。確かめたことはないし、確かめられないことだし。


 わたしが頷くと、オルさんはさらに質問してきた。


「アスナは、自分の魔力が今どのくらいあるのか、感覚的に把握できてるのか? それと、魔力が溜まりすぎた場合の消費手段についてはどうだ? それだけ確認させてくれ」

「えっと……。わたし、自分の魔力が今どのくらいあるのか、自分でわかる」

「おっ、すごいな! そういう感覚的なものは、使い続けないとなかなか身につかないんだが、アスナはこの世界に来て日も浅いのに、頑張ったんだな。もしかして、かなり才能があるんじゃないのか?」

「えへへ、ありがとう……」


 実はステータス表示を見てズルしてる、とは言えないなぁ。

 黙ってるのは心苦しいけど、信じてもらえるかどうかわからないし、そもそも嫌われたくないから言いたくない。だって、個人的なことを覗かれてると思うと嫌な気持ちになるだろうから。


「それじゃ、魔力が全快する前に対処しなくちゃいけないわけだけど、魔力を消費する方法についてはどうだ? カップを動かしたり、伝書機を使うだけで消費しきれるといいんだが」

「わたし、結局、魔法は教わらなかったの。だから、そのふたつ以外だと魔力を消費できない……」

「じゃあ、積極的に使っていこうぜ。それと、よかったら、俺のシェーバーにも魔力を補充してくれると嬉しいかな」

「いいよ。でも、シェーバーなんて使うんだ」

「まぁ、な」


 電気カミソリならぬ、マギテックカミソリ?

 そっか、オルさんもおヒゲ、生えるんだ……。当然、だよね。成人男性だもんね。でも、でも、意外……。

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