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わたし、異世界でも女子高生やってます  作者: 小織 舞(こおり まい)
ノーマルルート
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ルームメートってどういうこと?

 びっくりしたのは、わたしも彼も変わらなかった。そして、今まさに細い筒を手に、呆気に取られている蜂蜜君こそが、わたしの足元にへしゃげて転がっているフワフワのついた針を飛ばした犯人だ。……何のおかげか、当たらずに弾かれたみたいだけどね。


「なにしてんのよ、わたしの部屋で! っていうか、さっき玄関で会ったの蜂蜜君だったんじゃん。なんで無視するかなぁ~」

「……蜂蜜、君?」

「あ、やば。だってほら、名乗らないからさ~」


 目を逸らしながら頬を掻く。蜂蜜君は「まぁ、いいですけどね」と溜め息を吐きながら、わたしにゆっくり向かってきた。足元の毛針? を拾い上げ、空いた右手をわたしへと伸ばして……


「!」


 立ちすくむわたしの腕を取って、中に引っ張り込んだ。しかも引っ張り方のせいか体ごと抱きつく形になってしまう。背の高さが同じせいで、首を動かしたら唇と唇が当たりそう……! ふわっと漂う香水がすごく、女の子らしかった。いや、まさか!? 慌ててステータスを確認してみる。


‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

【名前】ミッチェン・ガードナー

【性別】男

【年齢】23

【所属】ジルヴェスト国

【職業】暗殺者

【適性】諜報

【技能】◆この項目は隠蔽シールされています◆

【属性】腹黒

【備考】笑いのハードルが低い・女装癖がある?

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥


 あ、良かった。やっぱり男の子だった。自分の記憶が正しくて納得としたのもつかの間、ドアの閉まる音に我に返った。


「ボク、そこまで惚れられるようなことしましたっけ~、覚えがないんですけどね~」

「ほ、惚れてなんかない!」

「その割にはずっと抱きついてたじゃないですか~」

「び、びっくりしただけ!」


 クスクスと耳許で笑う声がする。くそぅ、ステータスを確認している時間は反応が鈍くなるんだもん仕方がないでしょ!


「ボクの名前はミッチェン・ガードナーと言います。お見知りおきを~」

「ふーん、ミッチェン、ね。わたしはアスナ」


 蜂蜜君は二段ベッドの下段にぽすんと腰掛けながら自己紹介をした。ま、名乗ってもらったって面倒だからあだ名で呼ぶんだけどね。


「貴女のルームメートであり、クラスメートです。ここでの名前はミシェール・スキットナーなので、間違えないでくださいね~」

「る、ルームメート!?」

「ええ、そうですよ~」

「冗談でしょ、男と一緒なんてごめんだってば!」


 しかも可愛く見えて結構な年上じゃないの! これもまさかジャムの命令? アイツ、ちょっと過保護すぎない? 別にわたし、そんなお守りが必要なこどもじゃないんですけど!


「ボクのことは気にしないでください。大丈夫ですよ、貴女になんか欲情しませんので」

「こっちだってスカート穿いた変態にそんな気持ち持てないわ」


 爽やかな笑顔で言い放つ女装男。

 思わずわたしの口からも本音が漏れていた。


「………………」

「………………」


 蜂蜜君はにっこりと微笑んでいるけれど、その背後には黒いオーラが見える。黒蜜だ、黒蜜が現れたぞ! 


「これから、よろしくお願いします、アスナさん」

「よろしくね、ミシェール。仲良くしましょ」

「ウフフフフフ」

「あははははは」


 お互いに作り笑顔で握手して、その後無言で荷ほどきした。まったく、とんでもない学校生活がスタートしちゃったよ!






 勘の鋭そうな蜂蜜君の留守を狙って、わたしはキャンディのステータスを見てみることにした。視界の端にちらつくでもなく、意識すると出てくる画面はとっても便利だ。いちいち言葉にしなくてもいいところが気に入った。


‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

【名前】キャンディス・アーシェイ

【性別】女

【年齢】14

【所属】ジルヴェスト国

【職業】女子高生

【適性】看護

【技能】◆この項目は隠蔽シールされています◆

【属性】百合

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥


 属性が百合って、なに? 花なの? そりゃあ確かにキャンディはめちゃめちゃ美少女だし、本人自身が「女の子は花」って言ってた気がするけどね。わたしが花だったらなんだろ。フリージアとか好きだけど……そんなキャラでもないか、ツッコミ属性だしな。


 そういえば、この学校ってば入学の年齢は一律じゃないんだってことに今さら気がついた。当たり前と言えば当たり前すぎて誰も教えてくれなかったんだけど、ここは花嫁修行の学校なわけだから、結婚する前に入るのよね。結婚が早い女の子は前倒しで入学するんじゃないかな。食堂にも色んな年齢の女の子がいた気がする。


 キャンディが14歳でジャムが17歳、三年後には17歳と20歳。日本の常識で考えたらちょっと夫婦になるには若すぎる二人。でも、年齢差は悪くないし、ここは日本じゃないし。並べて考えたらお似合い……待って、つまりキャンディってばジャムの婚約者だったんじゃないの? それなのに、ぽっと出のわたしに心変わりして(嘘。本当は心変わりじゃなくてシャリの陰謀もとい政略)、そのせいで婚約破棄しちゃったってことなんじゃない!? うわ~、うわ~~、いかにも乙女ゲームにありそうな設定!


 とはいえ、キャンディの方も結婚に乗り気じゃなかったみたいで、ジャムはフラれること決定なわけだけど。キャンディの口走っていたことが不穏すぎるので、自衛のためにハリセンを作っておこうと思った。教科書とかと一緒に持っといて、いざとなったらこう、スパーンと、ね。


 よくよく考えたら、わたしも三年後には20歳になるんだなぁと思って、軽くへこんだ。

★フリージアの花言葉は、全般的には「あどけなさ」「純潔」「親愛の情」と言われます。英語での花言葉は「innocence(純潔)」「friendship(友情)」「trust(信頼)」です。


フリージアには様々な色があり、また個別に花言葉が違います。


黄「無邪気」

白「あどけなさ」

赤「純潔」

紫「憧れ」

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