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わたし、異世界でも女子高生やってます  作者: 小織 舞(こおり まい)
ルート:オールィド
166/280

おでかけの準備

 ドーナツさんとゼリーさんは、その宣言通りサッと着替えて戻ってきた。髪の毛はちょっと湿ってるけど、水浴びしてサッパリしたみたい。


「よっ、おまたせ、アスナ。迎えに来てくれてありがとな」

「どういたしまして〜。ティールームで先生がお茶を淹れて待ってるよ。ふたりとも、ホントにお疲れさま!」

「これくらい軽い軽い。それに、俺たちは力仕事でしか役に立てないもんな」


 ドーナツさんが力こぶを作って見せながら笑う。って言っても、鎧で見えないんだけどね。ゼリーさんも同意するように、いつもの無表情のままで頷いていた。


「だからさ、明日は別行動しようと思ってるんだ」

「えっ?」

「俺はジェロニモと一緒に行く。ギスヴァイン先生の手伝いをしたいとこだけど、どう考えたって迷惑にしかならないもんな」

「そうなの」


 わかっちゃいたけど、本当に体育会系なふたりだ。確かに、ここから先の地味で根気のいる作業は、わたしにもちょっと無理かなって思ってたもん。ドーナツさんは続けて言う。


「アスナも行こうぜ」

「わ、わたしも? いいの?」

「おう! 行くメンバーはジェロニモ、俺、それにあと何人か調査のために着いてくるらしいんだ。ジェロニモと俺が馬で先行する予定だけど、アスナは後から馬車で来ればいい」

「ん〜、わかった。わたしは馬には乗れないもんね。何を用意していけばいいの?」

「泊まりの予定だから、必要なものとか詰めとくといいぜ」

「は〜い」


 そこへ、ゼリーさんが珍しく話に入ってきた。


「ヴィークルを使えばいい」

「えっ?」


 一瞬、何のことかと思ったけど、アレだ! 魔力で動く遊園地のティーカップ! あの乗り物を使えって?


「そっか。あれなら地上の障害物なんか関係なく、好きにどこにでも行けるし、上からなら探すのも楽だな。ナイスアイディア、ジェロニモ!」

「けど、あれって何人も乗れないよね……」

「なら、俺とアスナだけで行こうぜ。家に使ってないヴィークルがあるんだ。ちょっと整備すればすぐ乗れるし。元々俺とアスナは調査団の数に入ってないから、怒られたりはしないだろ」

「そうなの?」

「おう。な、ジェロニモ?」

「ああ。村の方向だけは教えておく」


 ゼリーさんは頷くと、わたしたちに背中を向けてティールームの方へ歩き出した。ドーナツさんがわたしの肩をポンと叩く。


「ありがとな、アスナ。ふたりなら、交代で魔力を入れて日帰りできる。予定よりかなり楽になるよ」

「そうなんだ。役に立ててよかった!」


 わたし、魔力ならたくさんあるもんね。たった1パーセントしかないときに「普通の成人男性と同じくらい」って言われたんだから。


「じゃあ、明日の朝、寮の前まで迎えに行くな」

「は〜い。あ、あと、わたしオルさんに聞こうと思ってたことがあって」

「ん? なんだ?」

「精霊を呼び寄せるっていう、剣のこと……」


 オルさんはビックリした顔をして、腰の左側に提げてある剣に手をやった。


「これか。いいぜ。でも、長くなるからそれは明日話そう。これは、親父が俺に託していった剣なんだ」

「そっか……。わかった。明日の朝、お弁当作って待ってるね」

「マジか! やったぁ!」


 ドーナツさんが嬉しそうに笑う。まるで子どもみたい。

 ちょっと張り切っちゃおうかな。


 その日は、お茶をいただいた後ですぐ解散になった。わたしはキャンディにつきあってもらって、明日のお弁当の材料を買ってから帰った。キャンディはふくれっ面だったけど、そんな顔されてもなぁ〜。


 ちなみに、その話をしたら蜂蜜くんもふくれっ面になっちゃった!


「なんであんなヤツにお弁当なんか〜〜!」

「あんなヤツって……。もう、そんなにお弁当ほしいの?」

「ほしい! でもそういう問題じゃないんです〜〜」


 じゃあどういう問題だよ。


「とにかく〜、ふたりきりで行くなんてやめたほうがいいと思うんですよね〜」

「なんでよ。それにもう約束しちゃったし」

「まったく、アスナさんは何の相談もなく〜」

「え〜?」


 そこ、怒られるとこ〜?


「まぁ、その話自体はいいんですよ。今まで行けなかった場所に行けるようになったんですから。……結界が消えて、海岸に出られるようになったってことは、この島を出ていくことも可能になったワケですよね〜。ボクも行ってみましょうかね」

「えっ、一緒に来るの?」


 わたしの言葉に、蜂蜜くんは一気に不機嫌な顔になった。ジト目でわたしを見てくる。


「ふ〜ん? ボクが一緒に行ったらダメなんですかね? そんなにふたりきりになりたいですかぁ?」

「そんなことは言ってないでしょ。蜂蜜くんはドーナツさんのこと好きじゃなさそうだったから聞いてみただけだよ」

「へ〜ぇ。そーなんですか〜」

「ちょっと、蜜」


 ヤな言い方!


「まぁ、いいですけどね、べつにぃ。ボクは後から出る馬車に忍びこんでついて行くことにしますよ」

「見つかって怒られない?」

「そんなヘマしませんよ〜」


 まったく、蜂蜜くんってば、わたしを怒らせるようなことばっかり言うんだから。しかも、お弁当の中身はちゃっかりリクエストするし。でも仕方がないから、蜂蜜くんの分も作ってあげることにする。甘い卵焼きにタコさんウィンナーにプチトマト。それから、ピーマンのひき肉詰めにマカロニサラダでいいかな。


「それじゃ足りないんで、ガッツリからあげ詰めたヤツも持たせてくださいね」

「え……蜜ちゃん肉食……」

「当たり前でしょう」


 だって、普段の寮の食事だと、少食だしサラダとかばっかり食べてるのに……。ちょっと、ビックリ。


「演技コワイ……」

「うるさいですよー」


 からあげかぁ。

 ドーナツさんも、からあげ好きかな。買ってきた材料じゃ足りなさそうだから、朝起きたらアガサさんにもう一回相談しよっと。

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