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わたし、異世界でも女子高生やってます  作者: 小織 舞(こおり まい)
ルート:アイスシューク
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新しい冒険をしよう


▶【アイスくんと元の世界に帰りたい】


 わたしは……、やっぱり元の世界に帰りたい。わたしは、わたしの家族のところへ帰りたい……。


「わたし、やっぱり……ここにはいられない。帰りたい……帰りたいの!」

『うん。わかってるよ。帰りたいのは当然だよ。アイスはいいって言ってくれてるんだし、好きなタイミングで帰るのがいいよ』

「……ありがとう、キョウさん」

『どういたしましてだよ。あ、でも、ちゃんとお別れだけはしておきなね。後悔しないようにさ』

「うん!」


 次の日、わたしはアイスくんとちゃんと話をした。アイスくんは頷きながら話を聞いてくれて、それどころか笑顔でアッサリこう言った。


「わかった。いつ出発にしようか」


 だって。

 み、未練がない……。


「ほ、本当にいいの?」

「いいよ。僕はアスナさんといられればそれでいいから」

「で、でも、言葉が通じないかもだし、戸籍もないかもだし……」

「いいよ。きっと何とかなる」


 何とか、なるといいけど……。

 っていうか、わたしが心配になるくらいアッサリ決まった。クリームくんも大賛成してくれて、女王さまと一緒にささやかなパーティーを開いてくれた。


 四人だけのお食事会と、クリームくんのヴァイオリンの演奏。パーティーの終わりに、クリームくんがわたしにだけ聞こえる声でささやいた。


「アスナ、兄上を頼んだ」

「えっ、今……!」

「シッ。……秘密だぞ」

「わかった。任せて!」


 わたしがしっかり頷くと、ヒネクレ王子さまは満足そうに笑った。




 ふたりとお別れしてからは、ジルヴェストへ。ここでもやっぱりお別れパーティーを開いてくれたんだけど、それがもう、国中お祭り騒ぎになってるんじゃないかってくらいに盛大で、逆にもう、わたしたちのためのものだなんて信じられなかった。


 久しぶりに出会う皆は、少しだけ大人びて見えた。そう感じるのはわたしも成長したからかな。たくさんの祝福と応援をもらって、わたしたちはキョウさんの所へ移動した。


「アイス! アスナちゃん!」

「クッキーくん」


 そこには、精霊たちが勢揃いで待っていてくれた。ちっちゃくなっちゃったクッキーくんが、顔を涙でベショベショにしながらアイスくんに抱きつく。


「お別れなんて寂しいよ〜〜!」

「ルキック……。今まで本当にありがとう。カロンも、皆も」


 アイスくんがクッキーくんの頭を撫でながら言うと、大きくなったままのマカロンさんが頷いた。側ではソーダさんやシフォンさんたちもニコニコしてる。


「シャーベットさん、シフォンさん、ソーダさんも……たくさんありがとう。お世話になりました! あ、遅くなっちゃったけど、ジルヴェストでお菓子いっぱい買ってきたよ。こっちがシフォンケーキで、こっちの保冷バッグに入ってるのがレモンシャーベットね」

「わぁ、本当にフワフワだ……」

「あら、冷たくって美味しそう!」


 シャーベットさんたちに、ふたりのあだ名の元になったお菓子を持って行くって約束してたもんね。コンちゃんも興味津々で鼻をピクピクさせてるけど、その状態で食べて大丈夫なの?


「アスナ、アイスシューク、きみたちに出会えて本当によかったよ。新しい門出に一曲贈らせてくれるかい?」

「ありがとう。じゃあ、お願い」

「やった、初めて呆れられなかったよ!」


 あははは……。うん、なんかゴメンね。

 相変わらず歌詞は酷かったけど、とても素敵な音色と声だった。


 わたしはすごく久しぶりに自分の制服を着た。やっぱり、すごくシックリくる。


『名残惜しいけど、お別れだ。アスナがやってきた時間に帰してあげる。ただし、余計なお荷物もいるから、少しだけズレちゃうかもしれないのは許してよね』

「どうせ僕は余計なお荷物だよ……」

「そんなことないよ! もう、キョウさんったら!」

『さぁ、しっかりと手を繋いで。思い浮かべて。アスナ、きみの帰るべき時間と場所を!』


 キョウさんがそう言うと、わたしたちの周りを煌めく星がグルグルと渦を巻いて取り囲んだ。吸い込まれる! わたしはアイスくんの手をギュッと握った。


「アイスくん!」

「アスナさん!」


 目を開けていられないくらい眩しい光が差し込んできて、気がつくと、見慣れた風景の中にいた。ここは……通学路!


「う……」

「アイスくん、大丈夫?」


 握っていた手のぬくもりは離れずにそこにあった。アイスくんは眩しそうに目を庇っていて、今にも倒れてしまいそうなほど足が震えていた。


 それにしても……髪が白い! なんで!?


「わたしの家、近くだから……そこまで頑張って!」

「@#%$」

「あれ?」

「%$?」


 な、なんて言ってるかわからない……。

 もしかして、日本語が喋れないんじゃ?


 でも、何となく言いたいことはわかる。


「前途多難ってきっと、こういうことを言うんだね。よし……! 頑張ろう、アイスくん!」


 わたしはアイスくんを支えながら家まで連れて帰った。お父さんもお母さんもビックリしてたけど、アイスくんが怪我をしてて、しかも日本語が喋れないことを知ると親身になって考えてくれた。


 結局、アイスくんは警察を通して政府機関に連絡が行って、相談の結果、ちゃんと学校に通うことを条件にうちで預かることになった。お父さんたちが「ぜひ、うちで」って言ってくれたことが大きかったみたい。


 大人の事情なんて言えば言うほど面倒くさくて、すごく嫌なことも言われたけど、アイスくんがうちにいられることになったから許しちゃう。


 そんなわけで、アイスくんは今、夜間学校に通いながら日本のことをお勉強中。


「アスナさん、ナマステ〜!」

「なんでインドの挨拶なの……」

「インド人って言っておくと、たいてい許される便利!」

「……それはやめようね。まったく、変な友だち作っちゃって」


 アイスくんはニコニコしてる。

 日光に弱い体質のせいで夜間学校しか行けないけど、本人は「言葉もまだ上手くないし、こっちの方がいいよ」って言ってる。友だちもたくさんできたんだって。


 わたしと同じ学校に通えないことを知って、最初はショックを受けてたんだけど、さすがに学力の差もあるし、アイスくんが入学する年、わたしは三年生になるからすぐに卒業しちゃうし。


 あと、結婚できる年齢じゃないこともショックだったみたい。わたしは十七歳だから今すぐ結婚できるけど、アイスくんは十八歳にならないとダメなんだよね。何度も「僕以外と結婚しないで!」って念押しされたけど、するわけないって!


「アイスくん、学校楽しい?」

「うん、楽しい」

「よかった。今度のお休みはどこに行こう」

「鍾乳洞! 写真すごかったカラ」

「いいね。じゃあ、ふたり旅しよ!」


 アイスくんにとって、こっちの世界は知らないことだらけ。せっかくだから、わたしも一緒に冒険したい。不安もあるけど、ふたりなら、きっと大丈夫!







現実世界ハッピーエンド!

『新しい冒険をしよう』 

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― 新着の感想 ―
[一言] アイス君ルート完走お疲れ様でした! 2種類もラストが用意されていたのに驚きました。 1日で2度おいしかったです。ご馳走様でした。 次はドーナツさんルートなんですね。 良い人な彼だけど、暴走…
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