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わたし、異世界でも女子高生やってます  作者: 小織 舞(こおり まい)
ノーマルルート
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どこをどうしてどうすれば!?

 ステータスを見ることのできる新たな人物に出会ったときに鳴るこの電子音。これは会うひと会うひと全員に対して鳴るわけじゃない。つまり、目の前のこの女の子も、わたしにとって重要な意味をもつ人物ってことだ。


 今すぐ見てみたいけど、そうは問屋が卸さないみたい。腕組みをして不機嫌そうにしていたキャン……ディは、ゆるくウェーブのかかった髪をふぁさっと肩の後ろへ払った。


「先ほどは転ばせてしまってごめんなさいね、アスナ クサカ。(わたくし)の名はキャンディス・アーシェイ。これから貴女と同じクラスになりますの。本当にオースティアンお兄様の花嫁に相応しいか……確かめさせていただきますわ」

「おにい、さま……?」


 オースティアンってジャムの本名じゃん、お兄様って、どういう意味で? 真っ赤なジャムの髪の毛に対してキャンディは真っ白、まるでクッキーのアイシングみたいにツヤツヤしている。瞳の色も違うし、本物の兄妹じゃないはずだ。でも、わたしの名前を知ってるってことは、関係者で間違いない!


「キャンディス様は陛下のご親戚でいらっしゃるのよ! 本当はキャンディス様が花嫁になるはずだったのに……!」

「いきなり現れたアナタなんか、ふさわしいはずありませんわ!」


 ええい、もう、キャンキャンと……。わたしだって別に、ジャムと結婚とかしたくないわっ!?


「二人とも、黙って」


 キャンディの鶴の一声で辺りはシーンとなった。さすが。若いのに威圧感あるわ。花嫁候補に推されるはずだよね。


(わたくし)たち、オースティアンお兄様の花嫁候補として、互いに切磋琢磨していきましょうね、アスナ。ふふ、もちろん、貴女が(わたくし)を認めさせることができれば、お兄様との仲を邪魔なんかいたしませんわよ? ですから、大いに頑張っていただければと思いますの」

「悪いんだけど」

「なっ……」


 わたしはキャンディの真っ正面へと足を進めた。彼女の形のよい吊り目がちの目が開かれる。何かを言おうとしてそのまま固まったキャンディの肩を叩き、わたしはにっこりと笑顔を作った。


「わたし、花嫁とか、興味ないから!」

「………………」

「だから、わたしたち、ライバルなんかじゃないわよ。ね?」


 決まった……!

 これで変な勘違いは解けたでしょ。キャンディがジャムの相手をしてくれれば、わたしだって気が楽だよ。それに、クラスメートだっていうのに花嫁候補だとか何とか、いちいち張り合われるのはウザったいんだもん! それにここで釘を刺しとかないと後で「やっぱり貴女こそお兄様にふさわしいのね」とかって態度ひっくり返されたらヤだもん。オセロじゃないんだからさ。


 ところが、キャンディちゃんの反応はわたしの思ったのと、ちょっぴり違っていた。ぶわっと頬に赤みが差して、お目めがキラキラっと輝いたかと思うと、彼女はわたしの手を両手で握ってこう言ったのよ……。


「ああっ、アスナ! もしかして貴女も……なのっ!?」

「へ……?」

「信じられない、こんな、こんなところに同士がいたなんて! そうなの、(わたくし)もなんですのよ……殿方に興味が持てないんですの! 花嫁になんてなりたくなんてないんですわ!

 (わたくし)たちは言わば花、そして殿方は蝶。彼らは浮気に花の間を飛び回り、愛でるのが役目……でも、花の美しさを愛でるのは同じ花にもできますでしょう? (わたくし)は花を愛でる側でいたい、花を愛したい! 貴女のような同士を待ち望んでいたんですの、アスナ!!」

「………………」


 ち、ちっがぁぁあう!?

 なに言ってんのこの子ぉおおお!!


「ふふ、仲良くしてくださいませ、アスナ」

「違うぅぅぅ! 違う違う違う! わたしそんなんじゃないから!? ほんとに違うから!」

「あら、照れることないじゃありませんの」

「照れてるわけじゃなーぃい!!」

「可愛い、アスナ……」

「手を放してよ!」

「あん」


 変な声を出すなぁ!


「わたし、お昼はやっぱりいい! それ、食べといてね。無駄にしたら怒るよ!」

「あっ、アスナぁ~!」

「また! また今度ね、キャンディ!」

「きっとですわよ~」


 背中に甘い声を聞きながら、わたしは早歩きで食堂を出た。さっき教えてもらった自分の部屋までダッシュで階段を駆け上る。


 あの子は、ヤバイ!!!

 暫定美少女は残念美少女だったよ!


 見た目が綺麗なだけに精神的なショックがでかい。と同時に、どこかお芝居を見ているような非現実感がある。つまり、あんまり側に寄ると巻き込まれそうで嫌だ! ……魂が抜けたみたいになってた取り巻き~ズは大丈夫かなぁ、倒れてなきゃいいね!


 フカフカしたカーペットの廊下を歩いて自分の部屋を探す。すると、わたしの部屋の扉がちょっとだけ開いていた。そういえば相部屋だったか。


「っく! くっくくく! これはひどい、缶詰のつもりなんですかねぇ。クッキーに見えないし、そもそもなんで一枚だけ買う計算なんです? あ~、全部写真撮っとこう……」


 どこかで聞き覚えのある声がする……。あの暗殺者、こんなとこまで入ってきたのか。そーっと覗くと蜂蜜色の髪が見える。あ、今日はポニーテールじゃなくて下ろして…………スカート!?


 その瞬間、何かがわたしの目の前で弾けとんだ。

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