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わたし、異世界でも女子高生やってます  作者: 小織 舞(こおり まい)
ルート:アイスシューク
159/280

女王さまとの謁見

 そんなわけで、わたしとクリームくんはこれからどうするか話し合うことになった。お見合い状態で向かい合ってはいるんだけど……。


「あ、の……」

「アスナさ……あ、ごめん。あの、どうぞ」

「ううん、いいの。アイスくんこそ、どうぞ」

「いや、でも……」


 何だか話のきっかけがつかめないまま、こうして同じことを繰り返している。っていうか、そもそも何を話し合えばいいんだっけ? わたしの気持ちはもう、アイスくんと一緒にいるってことで決まってるし、あとはアイスくんがどうしたいかによるんだけど。


「ええい、もう! いい加減にしろ、煩わしい!」

「ひど〜い」


 子どもに大人の言葉でウザいって言われた〜〜。


「ったく、もうつきあっていられない。私だけでも陛下に謁見してくる!」

「あ、待って、わたしも行きたい!」

「僕も行くよ」

「じゃあ、さっさと来い」


 こっちに背を向けていたクリームくんは、一度だけ振り向いてそう言った。わたしたちは慌ててついて行く。女王様のお部屋はお城の中の高い部分にあって、お医者さんや看護師さんがその辺を行き来していた。まるでホテルのスィートルームみたいにいくつもの部屋があって、寝室はそのうち一番奥にあった。


「母上、入ってもよろしいですか?」


 部屋の入口でクリームくんが言う。

 元々は豪華だったんだろうと思われるその部屋は、ベッドしか置いてなくて、ちょっと薬臭かった。恐る恐る入っていくと、たくさんのクッションを背もたれにして、ベッドの上に半分だけ体を起こしている女のひとがいた。


 クリームくんと同じプラチナブロンドをしたそのひとは思いのほか若くて、瞳の色以外はクリームくんにソックリだった。っていうか、本当に若い。どう見積もっても二十代だもん。


 その女王さまは目を見開いてアイスくんを見ている。


「……その顔はもしや」

「母上、彼は父上の子で、アイスシュークと言います。私より三つ上です」

「……話には聞いていた。もっと、近くに」


 意外なことに、女王さまはアイスくんのことを知っていたみたい。囁き声でそう言われて、アイスくんは緊張しながらベッドに近づいて行った。


「ヴァニーユによく似ている。立派になったな、星詠みの一族の子よ。そなたの父は我が虜囚であった……。そのことについて謝罪などしないが、守り切れなんだことは悔いている。妾が真実愛したのはあの男だけ、そして、妾が腹を痛めて産んだ子も、あの男の子だけだ」


 女王さまの言葉に、アイスくんもクリームくんも息を呑んだ。そんなに驚くことだったのかな?


 それにしても、たったひとり愛したひとは死んじゃって、しかも自分もこうしてベッドから離れられないなんて……。もう長くないなんて本当なのかな? せめて病気が治れば、クリームくんと一緒に国を立て直せるのに。


 アイスくんやクリームくんと難しい話を始めてしまった女王さまだけど、よくよく見れば、なんか肩のところに人形みたいなものを載せてる。なんだろう……子ども用のおもちゃ? ううん、違う、動いてる!


「どうした、アスナ」

「えっと……女王さまの肩のとこ、何かいるのわかる?」

「はぁ?」


 クリームくんの表情が「何言ってるんだお前は」ってわたしに言ってる。いやいや、本当なんだもん! よく見てよ!


「クリエムハルト、アスナさんの言うことは本当だよ。何かいる。髪の毛に隠れてるけど……」

「あの、女王さま、ちょっと肩のところ失礼してもいいですか?」

「よせ、アスナ。余計なことをするな!」


 クリームくんはそう言うけど、女王さまはクリームくんと同じ口調で「構わん。いいぞ」って言ってくれた。クリームくんの喋り方って、実はお母さん似なんだね?


 お人形は逃げようとしてたけど、わたしは上手く囲い込んで捕まえた。掌サイズのお人形は、プルプル震えていた。


「ごめんね、捕まえたりして。ここで何をしてたの?」

『たしゅけて、そだーるさまぁ!』

「えっ。なに、ソーダさんの知り合いなの?」


 よく見ると、お人形さんは緑色の服に緑色の髪の毛をしてる。緑と言えば、確かに、ソーダさんの色かなぁ。ここの窓を開けて呼んだら、来てくれるかな?


「クリームくん、窓開けてもらっていい? ソーダさん呼んでみるよ」

「構わんが……できるのか?」

「精霊は気まぐれらしいから、わかんないけどね。この子、ソーダさんの知り合いみたいだから」


 わたしの言葉に、アイスくんとクリームくんがカーテンを開けて窓も開けてくれた。女王さまが目を丸くして、わたしに話しかけてくる。


「……そなた、本当に精霊の巫女なのか。異世界からの旅人と言うだけではなく?」

「えっ? わたしが精霊の巫女?」

「そうだ。精霊と心を交わし、人と精霊を繋ぐ者のことだ。ヴァニーユもそうであった」

「わたしは巫女じゃないですよ、たぶん。でも、アイスくんはそうです。だって精霊の()だから。お父さんと同じ存在なんですね、きっと」

「そう、か」


 ため息をつくようにそう言って、女王さまは目を閉じてしまった。わたしの手の中のお人形さんが暴れる。もしかしたら女王さまの側に帰りたいのかと思ってベッドの上に載せてあげると、いっしょうけんめいよじ登って、女王さまの近くで何かしていた。


「アスナさん、用意できたよ」

「ありがとう。ソーダさん、来てくれるといいけど」


 その心配は杞憂ってやつだった。なんたって、名前を呼ぶ前からギターの音が聞こえてきたんだもん。

 何なんだろうね、このひとは!


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