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わたし、異世界でも女子高生やってます  作者: 小織 舞(こおり まい)
ルート:アイスシューク
158/280

向き合わなくちゃ

 今回、わたしが寝込んでいた期間は、ほんの半日程度だったみたい。クリームくんのいた旧王都から列車で五時間かけて王都イーシャムまで移動していた間と、王宮についてから夜中まで。


 アイスくんたちの会話を盗み聞きしてから、あまりよく眠れなかった。朝ごはんの席でアイスくんと顔を合わせることになったんだけど……。


「アスナさん! おはよう、気分はどう?」

「うん、おはよう……もう大丈夫……」


 わたしは笑顔で駆け寄ってきたアイスくんを避けてしまった。あんなことを聞いたあとじゃ、顔をマトモに見られないよ……。アイスくんが息を呑む音が聞こえたけど、わたしはそっちを見ることなく席についた。


 こんな状態で会話がはずむわけもなくて、静かな食堂のホールには食器とカトラリーの音だけが響いていた。わたしは食欲もなくて、数あるメニューの中からほんの少しだけ取り分けてもらったものを食べるだけで精いっぱい。


 結局、アイスくんともクリームくんとも話すことなく、朝ごはんの時間は終了した。その後はメイドさんたちに捕まって、謁見の準備に入らされた。


 お風呂にマッサージに美顔パック。まるで着せかえ人形みたいにドレスも「コレじゃない」「コレでもない」って。髪型もあーだこーだされて、もう好きにして! って感じ。


「時間をかけて磨き上げるよう仰せつかっております」

「お嬢様は殿下に愛されていらっしゃるのですね」


 愛されて……って、クリームくんにぃ?

 それは何か違うような気がするよ。もう否定する気力もないけどさ〜。


 そんなところへ、噂のクリームくんがやってきた。ちょうどドレスと髪型が決まったところだったから、メイドさんたちは皆部屋から出ていって、わたしたちはふたりきりになる。


 クリームくんは開口一番、わたしを叱った。


「アイスシュークと話をしろと言っただろうが!」

「だって……」

「だってもクソもあるか! とっとと行ってこい!」

「えっ? ちょ、ちょっと!」


 クリームくんに引っ張られて、わたしは立ち上がった。そのままグイグイと手を引かれて、部屋の外に出てしまう。そこには、わたしと同じく着飾ったアイスくんがいた。髪の毛をオールバックにしていて、いつもと印象が違う。


「アスナさ……!」


 アイスくんはわたしを見て驚いていた。そして、表情を固くして、露骨に視線を逸らされた。


「!」


 ショック……。


 涙がにじむ。いけない、泣かないって決めたのに……。

 やっぱりアイスくんはもう、わたしとの関係を終わりにしたいんだね。わたしの安全を考えて、帰らせようとしてくれてるのは理解できるし、嬉しい。でも、好きなら引き留めてほしい気持ちもあった。


 わたしから、「一緒にいさせて」って言うつもりだったけど……。

 そんな顔されたら、わたし、もう……何も言えないよ……。


「アイスシューク! この、大馬鹿者がっ!」

「いっ!?」

「きゃっ」


 アイスくんがいきなりわたしの方へ突っ込んできた。その背後にはクリームくん。……その上げた足はまさか、アイスくんの背中を蹴ったの?


「昨夜はあれからずっと泣き言ばかり言っていたクセに! 呆れた奴め、どうせなら本人にすべてぶちまけてとっとと振られて来い!」

「クリエムハルト……」

「ちなみに、展開を早めるために言っておいてやる。その女はお前の気持ちをしっかり理解しているぞ。昨日は寝たふりを決め込んでいたからな、ほとんど最初から聞かれてる!」

「えっ!?」


 ほとんど最初からバレてたんだ!

 アイスくんがわたしをバッと見上げてきて、わたしは咄嗟に目を逸らした。


「話し合えと言ったろう。まったく、互いに好きあっているのが丸わかりなのに、これ以上何を迷う必要があるんだ? デメリットを伝えて離れていくならまだしも、コイツがそうじゃないことはお前が一番よくわかっているだろう」

「わかってるよ……だけど……」

「チッ、話にならんな」


 クリームくんは今度はわたしに向かって言った。


「アスナ、お前、この馬鹿を連れてどこへ行ってもいいぞ」

「えっ!」

「コイツは責任感がどうとか言ってるが、しょせんは金で片が付く問題だ。それよりも下手に血の繋がりのあるぶん、暗殺の危険はもとより、一生結婚することも子を持つこともできない飼い殺しにするしかない状況なんだ。それに、これからの国作りのためには星詠みの一族というコイツの出自も足かせになる。お前がこの世界で暮らせないと言うなら、いっそお前の世界に連れて帰れ」


 強い瞳がわたしを見つめた。

 わたしは、わたしの体質とかのせいでアイスくんに迷惑がかかっちゃうから、わたしが自分の身を自分で守れないから、アイスくんから離れた方がいいんじゃないかと思ってた。アイスくんはこれから、国のために働いて、クリームくんと一緒に国を立て直して、幸せになるんだろうって。


 それなのに、ここではアイスくんは厄介者扱いなの? アイスくんの魔力で首輪を操作するのに? 何年もかけて国を立て直すのに? それなら、星詠みの一族の皆と一緒に行った方がいいんじゃないのかな。ああ、でも、あのひとたちも微妙かな……彼らが慕ってたのはあくまで「王様」であって、アイスくんじゃないから……。


 ここに残っても、星詠みの一族と一緒に行っても、アイスくんが幸せになれないのなら……わたしが拐って行っちゃおうかな。でも、心配なのは……。


「……クリームくんは、それでいいの?」

「何が」

「だって、二度とアイスくんに会えなくなるかもしれないのに。せっかく兄弟だってわかったのに」

「フン、そんなもの。外国で暮らすことになるなら同じことだ。どこか遠くに送り出すときには、いつだってその覚悟をしなきゃならん」

「そういうものなのかな……」

「失恋してウジウジするコイツを側に置くのは気が滅入る!」

「ひ、ひどい……」


 ひどいなぁ。

 アイスくんが涙目になってるよ、クリームくん。


「それに、兄弟だというのなら、自分の不安をなくすことよりも、コイツの幸せを願ってやるのが筋と言うものだろう」

「クリームくん……」


 そっと添えられる言葉にじんとくる。

 不思議だね。やっぱり兄弟だからなの? 敵だったクリームくんが、今まで出会った誰よりも、アイスくんのことを考えてくれてるように思うよ。

ちなみに


アスナ「今日の会議ってどんなこと話したの?」


クリーム「奴隷制をやめることに関してだな。今まで人々を奴隷に貶めてきた罪は重い、俺様が身をもって償うべきなんじゃないかと遠回しに言われた」


アスナ「償いって?」


クリーム「斬首だな」


アスナ「え!?」


クリーム「安心しろ。王族に責任を問うというなら貴族も同じ。貴族と名の付く者をすべて縛り首にしてから首を差し出すと言ったら全員黙った」


アスナ「それ脅迫……」




 暴君ですから(’-’*)♪

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