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わたし、異世界でも女子高生やってます  作者: 小織 舞(こおり まい)
ルート:アイスシューク
155/280

クリームくんの話

 結果として、心配していた兵士さんたちの反乱はなかった。首輪が外れているひと、外れていないひとがいたけれど、皆、クリームくんを恨んではいなかった。


 聞いた話だと、クリームくんは奴隷たちを自分の楽しみのために傷つけたりしないし、仕事をきちんとしていれば、それ以外はけっこう自由にやらせてくれていたからなんだって。


「僕には辛く当たってばかりだったのに……」

「それは! お前がグズグズしてばかりで命令したことをちゃんとやらなかったから…………いや、私がすべて悪い。すまなかった」

「いいよ、もう。べつに気にしてないから」

「そうか……」


 これからのことを話し合おうとしたんだけど、それは断られちゃった。クリームくんはアイスくんにいくつか質問をして、それから自分の行動を宣言した。


「俺様はこれから宮殿へ帰る。食料と水を積んだ車を三台置いていってやるから有効に使え。ガスがなくなったら捨て置け」

「えっ、いいの?」

「元々、三日ほどかけてこの辺りの土地を根こそぎ襲撃し、奴隷たちを捕まえて運ぶための準備物だぞ。俺様の計画性に感謝するんだな!」

「素直に喜べないよ〜」


 何か意地悪だよ〜〜!


「それから、首輪が外れた者で、そちらと合流したいという希望者がいる。数は少ないがな」


 それにはアイスくんが答えて質問した。


「何人?」

「十八名だ。四百五十名の中でたったのこれだけではあるが、まぁ、力仕事は得意だ、使ってやれ」

「わかった。あの、王都のことなんだけど……」

「そっちの目処がついたら宮殿へ来い。一緒に女王陛下に直訴してやる」

「ありがとう」


 アイスくんとクリームくんは握手でお別れした。クリームくんがこっちを向く。


「アスナ。魔力をこの土地のためにくれると言ったな。あれには嘘偽りないか」

「うん。わたしの魔力、かなりある方なんだよ。今までも、海を浄化するために魔力を流してきたし、魔力の枯渇を解決できるなら協力するよ」

「そうか……。それなら、もう、こちらから望むことはない。……感謝する」

「どういたしまして! あ、そうだ、わたしからも聞いていい?」

「何だ?」


 わたしは気になっていたことを質問することにした。


「あの、魔の水だけど、いつどこで飲んじゃったの? あんな危険なもの、管理されてない状態で放置されてたら怖い……」

「あれか……」


 クリームくんは苦い表情になった。


「あれは奴隷たちの反乱があるという噂を聞いたときのことだ。その一報を受けて、私はすぐに王都へ連絡し、兵士を調達した。

 現在、ただでさえ奴隷が少なくて工場の稼働率が悪いのに、反乱なぞ起こされたら完全に止まってしまうからな。この際、こちらの管理から外れた奴隷も捕まえて鉱山送りにしようかと……」

「サイテー……」

「……フン、何とでも言え。手持ちの資源を有効活用するのも為政者の役割なんだ!」


 クリームくんは腕組みをしてフンッとふんぞり返った。でも、すぐに姿勢を正して話を続けた。


「話が逸れたな。兵士を集めてなおそれでも、戦力不足を感じていた私の下へ、異国からの商人がやってきたのだ。本来なら初めて商取引を申し出てきた相手にはまず会わない、だがその男は『ギースレイヴンの本物の王都を見たくわざわざ足を伸ばした』のだと言った。その心意気に感心して謁見を許した」

「その男から買ったの?」

「そうだ。そのときにはただ、魔力を高める薬だという話だった。その商人は『水の精霊の加護』だとか『貴方の成功と繁栄を約束する』だとか言っていたがな。……まあ、確かに、水の精霊に愛されし(しるし)が髪の色に表れていた」


 水色の髪で胡散臭い喋り方の男、ねぇ……。


「それって、髪の毛長くてうねうねしてて、わりと若くて顔がキレイな、喋り方がねちっこくて胡散臭いヤツじゃなかった?」

「……知り合いなのか?」


 何してんだ酢飯あのヤロー。


「よく知らない。ちょっと似てるかなって思っただけ」

「そうか……。まぁ、もう、今さらどうしようもないことだ。その男を捕まえたとして、私の魔力が戻るわけでもあるまい?」

「クリームくん……」

「新兵器を開発し、実際に作ったのだ。これでようやく、暴れ海竜を退治できると確信していた。しかし味方に足を引っ張られて量産体制が整わず、アイスシュークは出奔し帰ってこず、おまけに首輪で絶対の服従を強いていた奴隷たちの反乱と聞いて……焦りがあったとはいえ、妙なものに手を出しすべてを失うことになるとはな……」


 クリームくんは自虐的な笑いを浮かべて言った。アイスくんもちょっと悲しそうな表情になる。


「魔力を失い残されたものは、この妙な……髪の染みだけだ。これも罰の(しるし)かもな」

「その髪の黒い部分、あの魔の水のせいだったの?」

「ああ」


 えっ、そんなわかりやすく変な部分があったんなら、最初からそこをツッコむべきだったんじゃないの、アイスくん! 操られてる可能性とかも考えなくちゃいけなかったんじゃないの?


「気にはなってたんだけど、聞きそびれちゃってた……」

「フン、お前はそういう所があるよな、アイスシューク」

「えええ……」


 アイスくんとクリームくんが何だか微笑ましい会話をしてる。

 それにしてもシャリアディース……今どこで何をしてるのかわからないけど、本当にロクなことを考えないなぁ、アイツ。

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