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わたし、異世界でも女子高生やってます  作者: 小織 舞(こおり まい)
ルート:アイスシューク
124/280

分岐点 6


▶【……やめておく】


 アイスくんから誘われたけど、でも……。

 わたしは断ることにした。アイスくんにあまり踏み込まない、近づきすぎないって、さっき決めたことでしょう? それなのに、それを口に出すとき、とても胸が痛かった……。


「アイスくん、ごめんね……」

「いいよ。ギースレイヴンに行きたくない気持ちはわかるから。でも、僕がいない間、どこかに行ったりしないって、約束してくれる?」

「どこかって……どこ?」

「これから夜だから、たぶん大丈夫だと思うけど……。誰に誘われても、部屋から出ないでほしい。いい?」

「わか、った……」


 誰に誘われても……って、誰に?

 夜中にコソコソ出かけるなんてありえないと思うんだけどなぁ。


 でも、アイスくんの表情がすごく真剣なものだったから、わたしは戸惑いながら頷いた。


「よかった。約束、忘れないでね、アスナさん」


 わたしの手をぎゅっと握って、アイスくんはニッコリ笑う。

 それって何だか、「他の誰とも仲良くしないで」って言ってるみたい。アイスくんってば、実は嫉妬深い性格なのかなぁ?


 遅めのお昼ごはんを一緒に作る。メニューはスパゲッティ。アイスくんが手作りしていた生パスタを茹でて、これまた手作りのミートソースと絡める。生のパセリを散らして……うん。上出来!


 それと、畑で採れたお野菜でサラダとスープも作った。コンソメキューブみたいなものがある世界で良かった〜! わたしたちは向かい合わせに座って、いただきますをした。


「わぁ~! すっごく美味しい、これ! アイスくんは料理上手なんだね」

「そんなことない、全部、手伝ってもらったものだから」

「謙遜だよ~。充分すごいよ! 尊敬しちゃう!」


 アイスくんは照れくさそうに笑った。

 なんか、いいな。こういうの。ここへ来てからそんなに時間なんて経ってないのに、まるでずっと一緒にいたみたいに居心地がいい。


「……ずっと、こういう時間が続けばいいのに」


 まるでわたしの気持ちを言葉にしたみたい。

 わたしは何も言えなかった。


 告白されたのに、いつまでも答えを出さないわたし……。それなのに、アイスくんはそんなわたしにすごく、優しい。


 シフォンさんとギースレイヴンに出かけていくアイスくんを見送って、わたしは自分のために用意された部屋に戻った。


 そこは机とベッドと飾り棚があって、ちっちゃい部屋だけど壁にはクローゼットまで掘ってあって、なかなか居心地がいい。窓はないけど、カーテンがかかってて、そこまで狭いふうには見えないし。


 カーテンもベッドも、それにクッションとかも、ピンク系の可愛い布が使われててわたしの好み。どうして女の子の部屋がバッチリ準備されてるんだろうって、不思議に思って聞いてみたら、マカロンさんが真面目な顔して、


「我々にはそれぞれできることとできないことがあるが、得意な分野に関して時間が我らの障害になることはない」


 だって!

 ひとことで言えば「ラクショー!」ってことでしょ? マカロンさんてばおかしいの。


 初めてこの部屋で過ごす夜。

 アイスくんも出かけちゃったし、まるっきりひとりっていうのは、あんまり経験がないなぁ。慣れない部屋……窓もないから、ちょっと星を見たいと思っても見られないし、風も感じられない。


「ちょっと外に涼みに行っちゃダメかな……」


 アイスくんとの約束を思い出す。

 『どこにも行かないで』『部屋から出ないで』


「アイスくんてば、過保護だよね。……まあ、いっか。我慢しよ」


 アイスくんが帰ってくるまでの短い時間のことだもんね。

 ジルヴェストとかギースレイヴンとか、不安要素はあるけど、ここにいる間に何かあったりなんてしないでしょ!


 わたしは机に向かって日記帳を開くことにした。

 う~ん、本格的に暇つぶしの材料がない。


「アイスくんが帰ってきたら、時の精霊さんのとこまで連れてってもらおう」


 『やることリスト』にそう書きつつ、これからのことを考えていると、壁からコンコンって音がした。


「やだ、なに?」


 慌てて壁を見てみると、そこには大きな穴が開いていた!

 そこからピョコンと顔を出したのは、なんとコンちゃんだった。といっても、わたしが通れるスレスレくらいの大きさだから、顔は出せても耳は出てない。やだ、ちょっとマヌケ!


「も~、ビックリさせないでよね、コンちゃん! 朝は何回呼んでも来てくれなかったくせに~」


 コンちゃんはお鼻をピスピスさせている。額のとこ撫でちゃう! もっとモフモフしたいけど、穴の向こう側じゃあね……。


「こっちに出られない? ちょっと穴が小さいかなぁ?」


 そのとき、ドアをノックする音と、クッキーくんの声が聞こえてきた。


「アスナちゃ〜ん、開けて〜」

「クッキーくん?」

「お話しよ〜? ね、いいでしょ?」


 わたしは迷った。

 壁には大穴、そして顔を出しているコンちゃん。


 クッキーくんを中に入れてもいいのかな?


 わたしは……


▶【中には入れられない】

▷【クッキーくんを中に入れる】

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