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わたし、異世界でも女子高生やってます  作者: 小織 舞(こおり まい)
ルート:アイスシューク
123/280

分岐点 5

 アイスくんの家まで、戻ってきた。

 すっかりお昼ごはんも食べそこねちゃってるんだけど、食欲がわかなくて、先にお風呂に入らせてもらうことにした。


 元々、起きてすぐ入らせてもらおうと思ってたんだけど、タイミングを逃しちゃったんだよね。魔力の回復速度が予想よりも早かったから……。


 シャーベットさんに会いに行って、精霊になっちゃうのを止めてもらうだけのつもりだったのに、シャリアディースに出くわすし。まさか、ジャムと一緒に消えたシャリアディースが、水の精霊シャーベットさんの所にいるなんて、思わないじゃない? しかも、ジャムを誘拐した犯人だったし!


 ジャムを連れて無事にジルヴェストに戻ったと思ったら、今度はそのジルヴェストにいられなくなっちゃったし……。あの平和な国にギースレイヴンがいつ攻めてくるかと思うと、不安でたまらなくなる。わたしに何かできるなら、今すぐにだって動きたい!


「どうすればいいの……」


 もちろん、帰るために動かなくちゃいけないのはわかってる。

 わたしは家族に会いたいし、友だちにも会いたい。わたしが急に消えて、きっと心配してるもん。


 でも……ここで出会った友だちも、同じくらい大切なの。

 シフォンさんの言う、時の精霊キョウに会って、それからもしも余裕があったら……なんて、そんなの都合が良すぎるかな?


 それに、アイスくんのこともあるし……。

 アイスくんのことを考えると、胸がきゅうっと苦しくなる。


 最初は、傷ついているアイスくんをどうにかしてあげたいっていうだけの気持ちだった。それは今も変わってない。でも、それ以上に、アイスくんを笑顔にしてあげたいって思うようになった。


 アイスくんの笑顔が見たい。





「ダメだ、わたし……。どっちつかずで……」


 あったかい露天風呂に口元まで浸かって、わたしはため息をついた。

 これ以上、踏み込むのはやめよう……この気持ちは、仕舞っておこう。


 そう決意したのに、胸が痛んだ。





 お風呂から出たわたしは、着替えてすぐにお台所に向かった。寮に置いてあったわたしの持ち物は、ぜんぶここに運び込まれたみたいで、洗濯済みの下着や新しい服があったのはありがたかったけど、正直、すごく複雑!


 お昼ごはんの相談をしたかったんだけど、そこには誰もいなかった。代わりに、最初にお茶した部屋からクッキーくんの大きな声が聞こえてきた。


「やだやだっ! アスナちゃんはここに残るんだよ! ぜったいに帰さない、やだやだやだやだ〜っ!」

「ルキック……」


 ワガママを言うクッキーくんをなだめているのはマカロンさん。「残る」とか「帰さない」とか、もしかして……。


「帰れるのかどうかもまだわからないのだぞ。まずは連れてこいとキョウが言っている。いつアスナを連れて行くかの話をしているのだ」

「だから、やだって言ってるの!」

「帰るのか帰らないのかは、アスナが決めることだ。我々はまず、選択肢を与えなければならない」

「や〜〜〜だ〜〜〜〜!」

「……勝手にしなさい」


 えっ、そこ投げちゃうの!?

 もうちょい頑張ってほしいんだけど。


 クッキーくんが飛び出してくる気配がしたから、わたしは慌てて隠れた。廊下をロケットみたいに駆け抜けて家の外に出ていくクッキーくん。あれ、もしかして泣いてたのかな。


「まったく、困ったものだ」

「あ。わたしがいたこと、気づいてた?」

「ああ。もちろん気づいていた。そういえば、アイスシュークが畑の方へ出ているぞ。昼食の材料でも取ってきているのではないか?」

「えっ、畑もあるの? わたしも行きたいな〜」

「……人間は食べねば死んでしまうのが厄介だからな。アスナにも水と食べ物のある場所を教えておかねば。畑もだが、備蓄食料の場所にも案内しよう。ついてきなさい」


 なんか……微妙にペット扱いされてる気もするけど……。

 まぁ、いいか。


 お台所の棚と、保存食の置いてある小部屋を案内された。それから、裏口を出て細い小道をちょっと下っていくと、おばあちゃん家にある段々畑みたいなスペースにアイスくんがいた。


「アイスく〜ん、そろそろお昼にしようよ〜!」


 わたしが叫ぶと、アイスくんは立ち上がって笑顔になった。


「アスナさん!」


 アイスくんが手に持ってるザルの中には、葉っぱと細いニンジンとかが入ってる。サラダの材料かな?


「ごめん、つい、手入れに夢中になってて」

「ううん。わたしこそ、ゆっくりお風呂入らせてもらってたから」

「ごはんにしようか。……夜になったら、僕、出かけなくちゃいけないんだけど……」

「え? 夜なのに、出かけるの?」


 しかも、どこに?

 この近くといえば、山と、河と、丘だよね?


「ギースレイヴンに……」

「えっ」


 思わず責めるような声が出てしまった……。アイスくんも苦笑してる。あの国に対していい思い出がないからって、べつに、今すぐギースレイヴンに叩き込むって言われたわけでもないのに、わたしったら……!


「あのね、クォンペントゥスの畑で採れたものをギースレイヴンの王都へ持って行って、お金や別の物に交換してもらうんだ。あの街は大きいから、夜でも取引をしているし」

「そう、なんだ……」

「アスナさんも、一緒に来る?」

「えっ!?」


 ギースレイヴンの王都へは、行ったことがない。興味もあるし、なにより、アイスくんからのお誘い……。


 わたしは……


▶【……やめておく】

▷【一緒に行く】


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