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わたし、異世界でも女子高生やってます  作者: 小織 舞(こおり まい)
ノーマルルート
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おっと、わたしにステータス?

 朝、なんとなく目が覚めたら、すでに日は昇りきっていた。どうして誰も起こしてくれないのか……。遅刻したらどうする!


 なんて、焦ったのもつかの間。自分の部屋じゃないことに気がついて、わたしは溜め息を吐いた。昨日のことは夢ではなくて、やっぱり現実。この世界にいきなり落っこちてきて、保護されたんだった。それで、死なないためにキスしろと言われたり、妃になれとか迫られたり…………あれ? もしかして、あれってプロポーズだったんじゃない? 嫌だぁ、せっかくの初プロポーズがあんな、ジャムみたいなすかし男からだなんて~~! もっとダンディなオジサマからが良かったよ~~~~!!!


 うう、広いベッドふかふか。ごろごろするの気持ちいい~~。


 なんて、現実逃避していても仕方がない。泣いてても笑ってても、寝てるだけだってお腹は減る。世界規模で迷子になってしまったけど、早々に衣食住が保障されたわたしはきっとラッキーに違いない。たとえその親切が下心付きだとしても。だから、内にこもって泣いたりなんかしてやらない。ちゃんと寝てちゃんと食べて、帰るためのヒントをとにかく探すんだ。やるったら、やる。


 パチンと頬を両手で挟んで起き上がる。髪ぐらい梳かしてから今日着る服を探すか出してもらうかしよう。そう決めて大きめの鏡台にかかっている可愛らしいカーテンを開く。リボンのついたブラシ、ピンクの瓶に入った化粧品たち。わくわくしながら椅子に座ると、見慣れたわたしの顔と、そして電子音。


 電子……音……?


 ステータスがポップアップする例の音、昨日だけでもう何度聞いたことか。絶対に間違えるはずがない。きょろきょろと部屋を見回してみても、ここにはわたししかいない。おそるおそるステータスを開いてみると……


‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

【名前】久坂 明日菜

【性別】女

【年齢】17

【所属】日本

【職業】女子高生

【適性】※※※

【技能】お菓子づくり

【属性】ツッコミ

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥


 これ、わたしのステータス~~~~! 属性、ツッコミかい!! そのまんまだよ!!!

 と、よく見ると他のひとたちのとは違って続きがある。


‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

【魔力】1/100(%)

【備考】シャリアディースによって連れてこられた。

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥


 ………………。


「っ、シャリぃぃぃぃぃぃ!!」


 わたしは今度こそ絶叫した。






 着替えをもらってご飯を食べて、しっかり身支度しても抑えきれない怒りが沸いてくる。あの銀シャリ男、一発くらいビンタしても許されると思うんだよね! お仕事している女性にアイツの居場所を聞くと、案内してくれた。長い廊下も階段も、頭を冷やしてくれることはない。むしろあの銀シャリのせいでこんな大変な目にあっていると思うと……ムカムカする!!


「こらぁ、出てこいシャリーっ!」


 扉を開けて叫ぶと、目的の澄まし顔がひょっこりと出てきた。キラキラと流れる銀の髪、長いまつげに縁取られたビー玉みたいな目。余裕の表情に向けて先手必勝、一発くれてやろうと手を振り上げたら、受け止められてキスされた。


 おっひょ~い!!

 やめて! 寒気がする!!!


「放してよっ!」

「ご機嫌うるわしゅう。もうすぐ昼だよ、妃殿下」

「シャリぃ!」

「ディースと呼んでくれたまえと言っているのに。仕方のない方だ」


 ええいっ、話が進まない。わたしは手を振り払ってシャリを睨みつけて怒った。


「この嘘つき! わたしをここに連れて来たのはアンタだったんじゃないの。知ってるんだからね? 元の世界に帰してよ!」

「……嘘は吐いていないよ。言わなかっただけで、ね……。さて、自信満々なようだけど、どうしてそんなことがわかるのかな?」


 断言する、コイツ性格悪い……!

 ニヤリと口を曲げて、余裕の腕組みをしている銀シャリ男。でも、細くて長い指がトントンって腕を叩いているのは図星って意味なんじゃないですかねぇ!


「わたしにはね~、見えるのよ! アンタたちの名前とか、どんな属性かがね! だから、わたしを連れて来たのがアンタだっていうのはお見通しなんだから!!」


 なんて、ハッタリだけども。

 シャリの目がすっと細められる。意地悪げな笑みも消えて無機質な瞳がわたしを射抜く。負けじとふんぞり反ったら、ふいっと視線を逸らされた。


「……そんな能力、つけていないはずなのになぁ」


 聞こえてるぞ~!!


「ほらぁ! 何の目的でわたしを呼んだとか、知りたくない。早く家に帰して!」

「ふっ……それは無理だよ、妃殿下。私は世界の境目に切れ込みを入れて落とし穴を作っただけ。魔力をふんだんに持った、年若い女性だけが落っこちてくるように細工をしてね。

 待って待って、待ち続けて、もう無理かと思ったときに……きみが来てくれた。おかげさまで、結界の綻びは修復されたよ。ありがとう、妃殿下」


 手を自分の胸に当てて、堂に入ったお辞儀をしてみせるシャリアディース。中空にこぼれ落ちる髪の毛のサラサラ言う音まで聞こえてきそうだった。わたしは……わたしは……!


「か……」

「か?」

「勝手なことばっか言うな、このすっとこどっこーい!!」


 ちょうどいい位置まで下がってきたコイツの頭をパーでぶっ叩いたのだった。

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