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わたし、異世界でも女子高生やってます  作者: 小織 舞(こおり まい)
ルート:アイスシューク
108/280

分岐点 4

 見たことある子だ。

 金の髪をショートボブみたいに切り揃えた、三歳くらいの小さい子。男の子か女の子かわからないくらい、かわいくって、まるでお人形さんみたい。キューピッドみたいな白い布の服に、小さなベストみたいなのを着てる。


 それにもうひとり、同じような格好をした、こっちは黒髪の男の子かな? 無表情であんまり子どもっぽくない子が一緒にいた。こっちは初めて見る子。


「えっと、前に一度会ったよね。クッキーくん、だっけ」

「光の精霊、ルキック・キークだよ。それで、こっちが闇の精霊、グルニムエマ・カロン」

「アスナちゃんだぁ! わ~い!」


 相変わらず、クッキーとマカロンにしか聞こえないなぁ。

 クッキーくんが走って抱きついてきたから、抱っこしてあげた。三歳児って意外と軽い、ようで重いようで、やっぱり軽いような?


「ルキック、こら!」

「いいよいいよ、平気」

「でも……」


 アイスくんはわたしに抱っこされてるクッキーくんを困ったような表情で見てる。わたしは構わないんだけど、そっか、もうひとりいるもんね。ひいきはダメかな?


「……私のことは気にしないでいい。しかし、ルキック、見苦しいぞ」

「ちぇ~。わかった、下りるよ。ありがと、アスナちゃん」


 マカロンくんがこっちを見上げて、クッキーくんにそう言うと、クッキーくんはすんなり従った。アイスくんの言葉は無視してたのにね!


「こうして出会うのは初めてだな、異世界の少女、アスナ。アイスシュークに紹介されたが、もう一度名乗ろう。闇の精霊、グルニムエマ・カロンだ」

「よ、よろしく、グル、ニ……?」

「呼びやすいように呼んでくれ」

「じゃあ、マカロンくんって呼んでいい?」

「……せめて『くん』呼びを外してくれ」

「わかった。じゃあ、マカロンさんだね!」


 ため息をつかれた。もしかして、呆れられたかな?


「まぁ、いい。それで、移動したいんだったな。どこまで送ればいい」

「王都の広場まで。カフェで朝ごはん食べたいの。ふたりも一緒にどう?」

「わ〜い!」

「いや、遠慮しておく。アイスとふたりで食べるといい」

「ふにゅ〜〜」


 パァッと顔を輝かせていたクッキーくんが、マカロンさんの言葉ですぐさましおれる。ん〜、主導権! クッキーくんは、基本的にマカロンさんには逆らえないみたいだね。


「じゃあ、また今度ね」

「うえ〜〜ん、またね〜〜!」


 抱きついてくるクッキーくんの頭を撫でて、お別れする。マカロンさんのおかげで、わたしたちは女子寮から広場まで移動することができた。


「そういえば、アイスくんと最初に会ったのもここだったね」

「そう、だね……」

「朝ごはん食べながら、話さない? ほら、あのカフェで。一度来てみたかったんだ〜」

「……初めて来るの?」

「うん。いつもは勉強ばっかりで、学校と寮の往復だけなんだもん。宿題しながら、家に帰る方法を探して本を読んでるの。この世界のことを知れば、何か掴めるんじゃないかって思って」

「何かわかったの?」

「ううん。この世界には、七人も精霊がいるってことくらい。わたしが会ったことあるのは、風の精霊、大地の精霊、光の精霊、闇の精霊……皆、アイスくんのおかげで出会えたんだよ」

「僕の……」

「うん! ほら、行こうよ」


 わたしが腕を引っぱると、アイスくんは嬉しそうに笑った。こうしてると、すごくいい子なんだよね、アイスくん。もう首輪も外れて、奴隷じゃないし、心配しなくても平気かな?


 カフェのテラス席にふたり向かい合わせに座ってメニューを開く。モーニング用のセットがあって、いくつかの組み合わせから選べるみたい。


「アイスくんは何が食べたい?」

「僕は、アスナさんと同じ物がいいなぁ」

「飲み物も?」

「うん」


 アイスくんと向かい合うと、首の痛々しい傷が目立つ。スカーフとかバンダナとか、あれば巻いてあげられるんだけどなぁ。


「アイスくん、その首……もう痛くない? 後で何か、首に巻けるの選びに行かない?」

「もう痛くないよ。ジフの火で焼いてもらったから」

「焼いたの!?」

「うん。傷口を塞ぐためにね。ジフは火の精霊だから、コントロールはバッチリだったよ」


 傷を塞ぐ魔法とか、ないんだ!?

 痛そう……。


「無茶して……! 痛かったでしょ……」

「アスナさん……。もう、大丈夫だよ。大丈夫だから……泣かないで……」


 アイスくんは席を立って、わたしの椅子の横にしゃがみこんだ。ニコニコ笑ってるけど、目の下のクマはすごいし、顔色も悪いよ……。


 そっと首に触れたら、驚いた顔をして、安心させるようにわたしの手を上から押さえてきた。どうして、こんなに幸せそうに笑えるんだろう。


「ありがとう、アスナさん。この傷、やっぱり目立つよね……。もしもアスナさんが、隠したほうがいいって言うなら、僕に首輪をくれる?」

「く、首輪?」

「うん」


 わたしは、首に巻くものを選びに行こうって言ったのに、よりによって首輪なの? アイスくんてば、ヘンだよ……? ビックリして涙も引っ込んじゃった。


「ホントに首輪でいいの?」

「うん。アスナさんになら、いいよ」


 何が「いいよ」なのかわかんないけど、本人がそう言うなら、いっか。


「じゃあ、後で買いに行こうね。モーニングセット、頼もう。きっとすぐ来るよ」

「うん。じゃあ、食べた後で」


 わたしの肩に手を置いてそう言うと、アイスくんは向かいの席に戻った。そんな仕草にちょっぴりドキッとする。同年代の男の子とこんな近い距離にいることってあんまりないからな〜。


 いけない、いけない!

 わたしのほうがお姉さんなんだから、しっかりしなくちゃ!


 注文したモーニングセットはすぐに運ばれてきて、わたしたちはしばらく食べることに集中した。あつあつカリカリのベーコンと、ふわふわオムレツ、バター香るパリパリのクロワッサン!


「美味し〜い! こんなに美味しい朝ごはんが食べられるなんて、幸せ〜〜!」

「本当だ、美味しいね。……アスナさんは、美味しいものが好き?」

「うん、大好き! 美味しいものを食べると元気が出るし、頑張ろうって気になれるから。だからわたし、お菓子とか作るのって好きなんだ」

「お菓子、作れるんだ……」

「作れるよ。材料と道具があればね。今度、何か作ってあげるね」

「うん」


 アイスくんはどんなお菓子が好きかなぁ。クッキーとか、カップケーキとかなら、すぐ作れるよね。あ、でも、おこづかい足りるかなぁ?


「アスナさん、食べ終わったら、買い物をして帰ろうね」

「うん。でも、その前に、アイスくんの話を聞きたいな。そのために寮を出てきたんだもん」

「僕の、話?」

「そうだよ。だって、アイスくんはわたしに話があるから、夜中にコッソリ忍び込んできたんでしょ? わたしとふたりきりで話したかったからでしょ?」

「………………」


 あれ?

 なんか違ったかな?


「その話は、帰ってからにしようよ。さ、行こう? 首輪、選んでくれるんだよね」

「えっ、待ってよ、ここで話そうよ。昨日の夜、アイスくん、なんて言ってたっけ? 助けに来てくれたんだよね? 何か、新しい情報があるとか? それともまさか、ギースレイヴンが何かしようとしてる、とか?」

「……いいから、行こう」


 アイスくんは硬い表情で席を立った。

 どうしよう、思った以上に深刻な話みたい……。


 わたしは


▶【今すぐ事情を聞くことにする】

▷【アイスくんに従う】

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