表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
わたし、異世界でも女子高生やってます  作者: 小織 舞(こおり まい)
ノーマルルート
104/280

あなたがキョウ?

2話続けて投稿しています。

順番にお気をつけください。こちらノーマルルート、最終話です。

 暗い……。

 いつの間にか夜になっていた。


 そこはだだっ広い草原で、上に星空、下には蛍、真っ暗なのに灯りが届いてるっていう不思議な場所だ。わたしはどんどん進んでいった。そして、人影を見つけた。


 女の子だ。……わたしと同じ制服。

 右端に結んだワンサイドポニーテール、星の柄がついたシュシュ。わたしと同じ、髪の色。


「あなたが、キョウ?」


 わたしの声に振り向いたのは、確かにわたし自身だった……。


『ようこそ、アスナ。異世界の少女。いかにも、わたしはキョウ、今は貴女の姿を借りているよ』

「声まで同じだなんて……」

『ビックリした?』


 そりゃそうでしょ!

 まるで鏡の前にいるみたい。変な感じ……。


「わたしを、元いた世界に送り返してくれるって聞いたんだけど……」

『うん、まぁね。わたしにできるのはそのポイントまで案内することだけ。帰るときはアスナの魔力で帰るんだよ? 魔力は充分ある?』

「あるよ。わたし、魔法なんて使えないから溜まる一方だし、それに、あふれた魔力でできた花びらもちゃんと持ってきたから」

『うんうん、いいね。じゃ、ちょっとお話しよっか。このままバイバイもなんか味気ないじゃない?』


 目の前にいるわたし――時の精霊キョウの言葉にわたしは迷いながら頷いた。帰りたい気持ちに水を差されたのはあるけど、確かに彼女?のこと何も知らないままサヨナラは薄情かなって。


「そこ、座ってもいい?」

『もちろん!』


 わたしたちは暗い草原に体育座りになった。蛍みたいな光がふわふわ空に上っていく不思議な光景を見ながら、わたしはキョウと何を話したらいいのか迷っていた。


「えっと……わたし、アスナっていうの。わたしのことは、マカロンさんから聞いてる? わたしはキョウのこと、何も教えてもらってなかったから、何も知らないの。お話って、どうしたらいいのかな? キョウはどうしてわたしと同じ格好をしてるの? 色々聞いてもいい?」

『あははは、マカロンって! いいよいいよ、何でも聞いてよ。わたしもアスナに聞きたいことあるし』


 いや、だって、マカロンさんの名前って難しいんだもん。本名なんてメモを見ないと思い出せもしないよ。


『そうそう、わたしがアスナの姿をしているのはね、わたしが人間をやめたからだよ。わたしは星を見るのが好きで、星の軌道を計測してた。ずっとひとりで。そしてある日、力尽きちゃってね……』

「キョウ……」


 ひとりぼっちで、死んじゃったってこと?

 そんなのって……


『幸せだった! そこには空と星しかなかった! すっごく興奮した!』

「…………」


 かわいそうではなかったみたい。本人が満足ならそれでいいや。

 でも、わたしの顔と声でそれはやめて。


『そんなわけで、精霊としてのわたしの姿は鏡なの。だから名前もキョウ。アスナのことはマカロン…ふふっ、彼から聞いてるよ。でも、本当に帰っちゃうの? せっかく皆と仲良くなったのに。アスナが好きって言えば、なびく男の子いっぱいいるでしょ? 上手くやれば全員手に入れられるかもしれないのに、もったいなくない?』

「もったいなくはないよ。皆いいひとだけど、わたしは恋愛よりも家族が大事だし、全員とか何それ、逆ハーレム? 興味ないもん、そんなの」

『そっか、残念』


 残念~、じゃないって。何でしれっと逆ハー勧めてきてんのこの精霊。


 それから、わたしたちは好きなお菓子の話をしたり、他の精霊についての話をした。それに、わたしがこの世界で何をして、何をしてこなったのか。将来の夢も……。


「わたし、帰ったらきっと、もっと自分の人生を大事に生きるんだ。家族も友だちも、側にいるのが当たり前じゃないって気づいたから。それで、もっとたくさん勉強するの。大事なひとを助けられるようにね」

『アスナは大人だね~』

「わたしより小さい子が頑張ってるからね。そういう子の手助けがしたいんだ……」


 わたしはクリームくんのことを頭に思い描いていた。

 助けてあげたかったのに、わたしには、その覚悟がなかった。今だって、引き返したい気持ちがないわけじゃない。でも、でも……。じんわりと涙で視界が滲む。


『帰りたいんだね』

「うん……! お母さんと、お父さんに、会いたい……!」

『じゃあ、もう引き止められないね。扉を開くよ。ちゃんと帰りたい場所を、思い描いて』

「わたし、帰れるの?」

『うん。もうどこにも行かなくていい、ここから帰れるよ。時間は少しズレるかもしれない、そればっかりはしょうがない。許してくれる?』

「もちろん! 早く帰らせて!」

『じゃあ、花びらちょうだい。そして、わたしの手を握って。魔力を手渡しするイメージをして』

「うん」


 わたしたちは座ったまま、向かい合って手を握った。

 魔力を手渡しするイメージ……うまくいってるかな?


『いいよ。その調子。グラグラするから目を閉じてたほうがいいよ』

「えっ、もう遅いよっ」


 まるでプラネタリウムの銀河みたいな、光る星の渦がわたしたちの周りを回っていた。眩しさと、飲み込まれそうな感覚……わたしは思わず目をつむっていた。


『さよなら、アスナ』

「キョウ!」

『落っこちてきたのがアスナでよかった。お話できて、楽しかったよ、アスナ! バイバイ!』

「キョウ! ありがとう! 本当に……!」


 ありがとう!


 届いたかどうかはわからない。でも、わたしのこと、帰してくれて、親切にしてくれて……ありがとうね! 





 目を開くと、自分の靴と見慣れたレンガ道。

 わたしは鞄をギュッと抱いて立っていた。


 キョロキョロと辺りを見回すと、懐かしい景色。慌ててスマホを取り出してみると、わたしがあの世界に飛ばされたのと同じ日の、同じ時間だった。


「夢……?」


 ううん、夢じゃない!

 鞄の他に抱えてるものは、キャンディたちから貰ったプレゼントだもん!


「……!」


 わたしはクルッと向きを変えて、来た道を走った。

 家へ、帰らなくちゃ! 


 走って、角を曲がって、家の玄関がもうすぐ見えてくる。

 門のところには仕事に出かけようとしてるお父さん、それを見送るお母さん。ああ、わたし、本当に帰ってきたんだ!


「明日菜……?」

「ただいま!」

「ぐえっ!?」


 わたしはお父さんに体当りして叫んだ。

 ふたりともビックリした顔をしてて、わたしは笑いが止まらなかった。ようやく帰ってこられた……!


「どうしたの、急に」

「なんでもない! ちょっと、友だちとお別れしてきただけ! 学校にも行くよ!」


 わたしが大荷物を見せると、ふたりとも頷いて笑ってくれた。

 キャンディ、皆! わたし、普通の女子高生に戻ります!







ノーマルルートエンド!

『そして明日へ!』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] よし、感想書くぞ!とゆわけで改めて、深く素潜りし、感想文では。 まず、潔さ。異世界召喚される前のあれよこれよを省略し、召喚されてからのキスするぐらいならゲームオーバーを選ぶアスナのキャラ付…
[良い点] ノーマルエンド到達お疲れ様でした! 大勢のキャラが出演していたのに、みんな個性的でしっかり覚えられました。 [一言] マルチエンディングを採用しているゲームをやると、全ルート制覇(バッド含…
[良い点] ノーマルルートの完結お疲れ様です。 ルートがたくさんあるので、ゲームをしているような気分になり、楽しかったです。 途中でバッドエンドルートがいくつもあったので、本当にドキドキしましたが、み…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ