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わたし、異世界でも女子高生やってます  作者: 小織 舞(こおり まい)
ノーマルルート
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精霊さんたちも来てくれたの?

 気がつくと、わたしは草原に立っていた。

 そこには精霊さんたちが勢揃いしていて、わたしを見ていた。


「見送りに来てくれたの?」


 スッと一歩前に出てきたのは風の精霊、ソーダさん。相変わらずキザっぽい感じで胸に手を当てて礼をした。まるで役者さんだよね。


「やぁ、アスナ。いい風が吹いているね、ごきげんよう。最後のお別れに馳せ参じたよ」

「その風を吹かせてるのはソーダさんでしょ! 来てくれてありがとう。それに、たくさん助けてくれて、助けに来てくれて、本当に……ありがとうございました。おかげで、友だちに無事を伝えられたし、ジルヴェストにも帰ってこられたから」

「いいんだよ。ただ風の赴くまま、それが風なのさ」


 うん、このひと、詩人にはまったく向いてない!

 ギター弾くだけにして、歌はやめときなよね。


 そう思ってると、ソーダさんはギターを取り出して鼻歌を歌い始めてしまった。ほっとこ。


 次にわたしの前に出てきたのはコンちゃんだった。すかさず足にすり寄ってきたので蹴飛ばしておく。


「このエロウサギ!」

「ああっ、あんまり乱暴しないでやってくれ……」


 火の精霊、シフォンさんがコンちゃんに駆け寄る。正妻の水の精霊シャーベットさんはニコニコして無視してるのに。


「セクハラ有罪だよ。見てこの態度、お腹出して降伏のポーズしてるフリしてスカートの中覗いてる!」

「の、覗いてないよっ、………たぶん。覗いてないよね、クォンペントゥス?」


 コクコク頷いて可愛いフリしてるけど、絶対覗いてたからぁ!


「シフォンさんも、ジャムを助けるために協力してくれてありがとう。すっごく助かっちゃった。もっと早くに出会えてたら、もう少し仲良くできたのにね。一緒にお茶とかしたかったよ」


 コンちゃんの側に膝をついているシフォンさんに手を差し伸べると、シフォンさんてば赤くなってモジモジしちゃった。


「そ、そんな風に言ってくれるとは思わなかった……。結界の中、実は、私は入れたんだ。でも、今までは、人間には関わろうとはしてなくて……」

「ジルヴェストにいたの? 知ってれば一緒に遊んだのに〜」

「……ありがとう、アスナ。私たちこそ、アスナには助けられてばかりだ。……元気でね」

「そう? ならお互い様だね。シフォンさんも元気でね。悪い男に引っかからないようにね」

「引っかからないよ」


 そうやって笑ってるけど、すでにシフォンさんを引っかけた悪い男が足元に転がってるでしょ。


「ふふふっ、アスナは辛辣ね。でも、そこが好きよ」

「シャーベットさん」

「向こうでもその調子でおやりなさいね。期待しているわ」


 わ〜お。

 なんて答えたらいいやら。


「シャーベットさんにもお世話になりました! おかげで精霊にもならずに、ジャムと一緒に帰れました。ありがとうございます。ところで、シャリアディースのその後とかわかります……?」

「さあね。あの子は妾の作り出した妖精だったけれど、ある人間に名前をもらって、妾から独立した存在になったのだもの。好きに生きるでしょう」

「そっか……」


 何もかも失っちゃって、ジルヴェストにはもう戻れないだろうけど、それ以外では処罰されないんだ、アイツ。ホッとした反面、逃してしまったことを少しだけ後悔してるんだよね。


「シャリアディースのことは、忘れなさい。救われない生き方を選んだのは彼自身よ」

「うん……でも、罪も償わせずに逃しちゃったから……」

「貴女には彼を捕まえる義務なんてなかったわ。それに、人間の理では裁けない存在よ。忘れなさい」

「……わかった。ありがとう、シャーベットさん」

「どういたしまして」


 わたしたちはお互いに「元気でね」って言って握手をした。最後に、わたしは三歳児みたいなふたり、光の精霊クッキーくんと闇の精霊マカロンさんに向き直る。


「アスナ、本当に帰っちゃうの?」


 クッキーくんはわたしのスカートを掴むと、悲しそうな上目遣いで見上げてきた。あざと可愛い。けど、ダメなものはダメ〜!


「クッキーくんてば、まだ懲りてないの?」

「だって〜〜」

「クッキーくんが変なこと吹き込んだせいで、アイスくんが暴走したんじゃないの? マカロンさんにも止められてたでしょ?」

「うえ〜〜ん!」

「すまない、無視してくれ」


 泣き真似をするクッキーくんを、マカロンさんがバッサリ切り捨てていた。対照的だなぁ。


「マカロンさん、助けてくれてありがとう。おかげで元の世界に帰れるよ。……帰れる、よね?」

「大丈夫だ。時の精霊キョウが保証した。すべての時を記録するキョウなら、アスナを元の世界の元の時間に戻せる」

「よかった……。それで、その、キョウさんはどこ?」


 マカロンさんは草原の先を指さした。


「ここから先は、ひとりで行くんだ、アスナ」

「……わかった。ありがとう、マカロンさん。じゃあね、クッキーくん」

「バイバイ、アスナ……!」


 クッキーくんは泣きそうな顔で手を振ってくれた。他の皆にも手を振って、わたしは荷物を持って歩き出した。わたしの魔力が形になった花びらも忘れてない。


 これで……これで、帰れるんだ……!

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