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わたし、異世界でも女子高生やってます  作者: 小織 舞(こおり まい)
ノーマルルート
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ダンスパーティーは体力勝負?

 わたしのお別れ会では、キャラメルやチョコを始めとして、年齢は違うけど同じ時に入学した女の子たちがたくさん集まってくれた。教室をひとつ貸し切りにしてくれて、飾り付けやお茶にお菓子、それにプレゼントまで!


 みんなが泣きながら送り出してくれたから、わたしもつい、いっぱい泣いちゃった。


 土曜日にお別れ会、日曜日にはお城でパーティー。そしてその次の日には帰る予定でアイスくんと闇の精霊マカロンさんには話をしてある。


 それにしても、ジャム!

 「ささやかなパーティー」って言ってたはずなのに、これのどこがささやかなの!?


 お城のホールには着飾った貴族たちがめいっぱい。そして若い男女もめいっぱい。キャンディに聞いたら、この国の貴族が全員来てるって。キャラメルやチョコまで来てるじゃない! 昨日泣いてお別れしなかったっけ!?


「それはそれ、これはこれ、ですわ!」

「ですわ〜!」

「……まぁ、いっか! 楽しもう!」


 ジャムの開会宣言のあと、ジャムのお父さんからも演説みたいなのがあった。でも、それもすぐに終わって華やかな音楽と立食&ダンスパーティーが始まった。


 お城の一階にあるホールだけじゃなくて、中庭も全部開放されていて、色んな色の魔力灯がたくさん飾り付けられていた。まだ日の高い夕方から始まって、このパーティーは夜中まで続くんだって。まるでシンデレラみたい。


 ジャムがお客さんへの挨拶に忙しい間、わたしはキャンディと一緒にキャラメルとチョコの婚約者に挨拶したり、美味しそうなひとくちデリカをつまんだりしてた。


「よっ、アスナ!」

「オルさん! 今日はお仕事じゃないんだ?」

「ああ。陛下が休みをくれたんだ」


 後ろから声をかけてきたのは、珍しく鎧を着ていないドーナツさんだった。素敵な上着の上には、いつものとは違うけどやっぱり濃い緑の肩掛けマントをしてる。色が良いよね。


「踊ろうぜ」

「えっ。わ、わたし、踊れないよ」

「大丈夫、今日のダンスはステップなんて関係ないから。見てればすぐできるようになるぜ。ほら、始まった」


 ドーナツさんに言われて見ていると、すごく賑やかな音楽が始まって、男女でそれぞれ列を作って向かい合っていた。そこからまるで花いちもんめみたいに音楽に合わせて踏み込んだり下がったり。タッチして場所を入れ替わってもう一回!


 キャンプファイアのカントリーダンスみたい。


「楽しそう!」

「じゃあ、一緒に」

「うん!」


 踊っていると、いつの間にかエクレア先生やゼリーさんたちまで参加していて、珍しくふたりとも笑顔を浮かべていた。カーリー先生が列の前に来たとき、ウインクしてわたしに言った。


「んもう、まさか帰っちゃうなんて! アスナちゃんになら兄さんでもジェロニモちゃんでも、どっちを任せても良かったのにぃ」

「あはは! カーリー先生、それ本気ですか?」

「当たり前よぉ、今からでもいいわよ、好きな方取ってっちゃいなさいよ!」

「こら、カール!」


 列のどこかからエクレア先生の声がする。怒られてるよ、カーリー先生! 先生はペロッと舌を出してみせた。まったく!


 次に近くに来たのはエクレア先生。カーリー先生とよく似たデザインの色違い。充分仲良しに見えるけどな〜。


「カールが変なことを言ってすみません、気にしないでくださいね、アスナさん」

「先生、大変ですね。でも仲良しっぽい!」

「仲良くなんて……。いえ、でも、アスナさんのおかげで前よりは歩み寄れた気がしますよ。ありがとうございます」

「ええ、わたし何もしてませんよ? でも、そう言うなら……」


 エクレア先生は意外としっかり踊ってて、ちょっとイメージが変わったかな。わたしを見る目は変わらず優しいけど、ドーナツさんやカーリー先生を相手にしているときのエクレア先生はしかめっ面なのも意外だったしね。


「アスナさん。短い間でしたが、貴女と過ごした日々は忘れません。どうか、元の世界で健やかに、幸せになってくださいね」

「ありがとうございます。先生も、これから大変だと思いますけど、頑張ってくださいね」

「はい」


 そしてお次はゼリーさんだった。今日は普通におめかししててビックリ。カーリー先生に着せられたのかな。聞いてみたらマジな顔して頷いた。ちょっとカワイイ。


 ゼリーさんはわたしの手を取って、ヒョイっと列から出てしまった。えっ、そんなのアリなの? 周りから口笛が飛んでくる。あっ、これ、からかわれてるやつ!?


 わたしたちはバルコニーの方まで出ていって、そこで話すことにした。ゼリーさんはまっすぐにわたしを見て、それからゆっくり重い口を開いた。


「……アスナ。世話になったな」

「そう? どういたしまして!」

「アルクレオを助けてくれたこと、感謝している。それに……、俺の態度はあまり良くなかっただろう。それも反省している」

「確かにビックリさせられたことはあったけど、大丈夫だよ。気にしてない」

「……それならいいが。村に連れて行ってやるという約束も、結局、ダメになってしまったな」

「そうだよね。ごめんなさい」

「アスナが謝ることじゃない。少し、残念だが。……元気で」

「ありがとう。ゼリーさんたちもね」


 ゼリーさんはフッと笑う、わたしの頭を撫でて行ってしまった。これがゼリーさん流のお別れなのかな? ダンスからは弾かれちゃったけど、ちょっと疲れてきてたからちょうどいいや。


 バルコニーでほっと一息ついていると、飲み物のグラスが目の前に差し出された。


「どうぞ。ノンアルコールですよ」

「蜂蜜くん!? いつの間に!」

「忍び込むのはお手の物ですから」


 さすが暗殺者! 貴族の息子たちの中に紛れ込んでるわけね。その隣にはアイスくんもいる。……こっちは付き人? ウエイター?


「アイスくん、どうしたのその格好」

「付き人なんです……」

「カワイソウ」

「ですよね」

「いいじゃないですか〜〜、付き人で〜。誰がお金出したと思ってるんです〜?」


 アイスくん、こっちのお金なんて持ってないもんね。


「それにしても、いい服買ったんじゃない?」

「ギースレイヴンの首都に行くなら、このくらいは揃えておかないといけないでしょうからね〜。退職金代わりにくすねたお金で、まずは装備だけでも整えたってワケですよ」

「なるほど」


 さっすが蜜ちゃん、考えてる〜。

 だから今の自白は聞かなかったことにするね!


「ア、アスナさん……! その、あの……綺麗だよ」

「えっ? ありがと〜〜! そう言ってくれるのはアイスくんだけだよ〜!」

「ほ、本当のことだから……」

「ちっ。イイ子ぶって」

「蜜!」

「ハイハイ。ほら、王様が来ますよ。アスナさん、パーティー、楽しんで〜」


 蜂蜜くんがアイスくんを引っ張って人ごみに消えると、ホントにジャムがやってきた。

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