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わたし、異世界でも女子高生やってます  作者: 小織 舞(こおり まい)
ノーマルルート
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交換条件がズルすぎない?

 まだわたしの肩に手を回しているすかし男を肘鉄で追い払って、シャリさんの真正面に立つ。向こうは視線を逸らしてるけど、構うもんか。


「帰る方法、教えてください」

「……嫌だと言ったら?」

「なっ……!」


 嫌って……嫌ってどういうことなの!?

 わたしはむかっ腹が立って仕方がなかった。こっちにとっては一大事だってぇの!


「……妃殿下、オースティアンはまだ若いけれど立派にこの国を治めているよ。このジルヴェストはとても豊かなところだし、贅沢三昧とは言わないけれど王妃になればなに不自由なく暮らしていける。それだけじゃない、皆に愛されて充実した人生を送ることができる。それだけは保証するよ。どうか……うんと言ってくれないだろうか」

「いや!」

「どうして……」


 シャリさんが何か言いかけたところに、すかし男が割り込んできた。


「なんでそこまでオレを嫌う!! 今までどんな女もオレの愛を求めずにはいられなかったというのに! くそ、なにが足りないんだ。そうだ、キスしてやろう、オレのテクニックを知れば……」

「好みのタイプじゃない!」

「な…………」


 あ、また固まった。


 っていうか何が「テクニックを知れば」だよ、ばっかじゃないの? そこはせめて「互いのことを良く知れば」だろうが、このオレサマナルシスト下半身男が!!


「お、お前……このオレを目の前にしてタイプじゃないとか……だったらどんな男がタイプなんだ言ってみろ!」

「わたしはねぇ、30オーバーのイケてるオジサマとか、もっとカッチリした気品のあるお髭のオジサマとかが好きなの! 優しげでほんわかしてて支えてあげたくなっちゃうようなオジサマも好みだけど、それはちゃんと大人として成熟した精神あってのことで、ダメ大人は好きじゃないの。

 そもそも! あなたみたいに勘違いしたオレサマ系でガツガツしてるお子様はお呼びじゃないのよ、オースティン様!」

「お、オレは……オレは、オースティアンだ!」

「あ、ごめん」


 口をパクパクさせてた王様は、他に言うべき言葉が見つからないとでもいった様子だった。


 まー、名前を呼び間違えたのはいけないよね。でも、オースティアンって言いにくいんだもん。オースティンじゃダメなの? ダメか。


「呼びにくいんだもんオースティアン。王様だし、王君とかでいい?」

「なんだそのテキトーなニックネームは。断じて拒否するぞ」

「んー、じゃあ、オースちん」

「おい?」


 さすがにふざけすぎたかな? でも、どうせセクハラ王だし。オースティアンだし。


「はぁ……。アスナ、そんなにオレの名が言いにくいなら、特別に、特に親しい者だけに許す呼び名を教えてやろう」


 え、いらないよ、めんどくさいし。

 あと、肩を抱くのやめてよ。名前を間違えたのは悪かったからさ。というか、あれだけ言われてよくそんなに親しげにしようとできるよね? おら、離せ!


「ジェムと呼ぶがいい。ほら、覚えやすいし言いやすいだろう?」

「ジェム……。宝石ジェムねぇ。どっちかって言うとジェムじゃなくてジャムって感じ?」


 ベタベタしてくるし。イチゴジャムみたいな髪の色してるしね。


「なぜジャム……」

「あ、そっちはシャリさんね」

「……どうせならオースティアンが呼ぶようにディースと呼んではくれまいか、妃殿下」


 だから、誰が妃殿下だ、誰が。


「だ~から結婚はしないって! で、シャリさんに教える気がないなら、わたしはもう行く。あとはエクレア先生に聞くからいいよ」

「誰だそれは……」

「えっ? あ、そっか。えーと」


 エクレア先生の特徴を教えると、二人ともわたしの言っているのが誰のことかわかってくれた。すかし男、改めジャムは、フフンと鼻で笑った。


「残念だったな、ギズヴァインはウチの宮廷礼儀作法の教授であって、学者じゃない。専門分野以外はからっきしだぞ」


 な、ななな、なんですと?

 え、だってすごく賢そうだったじゃん……。と、思いつつも、そうか実はまだ未成年だったよね、先生。無理か……。


「そういう事柄はこのディースが詳しいぞ。専門家だからな」


 なんでアンタが自慢げなのよ、ジャム。

 フフンと笑った顔がまるで悪ガキだ。


「でもシャリさん教えてくんないじゃない」

「まぁ、そうだな」

「……こいつ」

「だが、城の図書室には国中の良書が揃っている。それを読み解けばあるいは……」

「帰れるってこと!?」


 ジャムは面白くなさそうに頷いた。 


「それ、見せて! ううん、見せてください、お願いします!」

「ふぅん、急にしおらしくなったな」

「…………」


 わたしはじっとジャムを見つめた。

 当然と言えば当然な話、家へ帰るための何か手がかりが掴めるなら、その可能性があるなら、何だってする。たとえいけすかないチャラ男の王様にだって頭を下げてやるわよ!


「……なぁ、何か失礼なことを考えてないか?」

「ううん、別に!」


 勘が鋭いなぁ!


「それで、見せてくれるの?」

「さて、どうしようかなぁ」


 あ、意地の悪い顔。

 や~な予感が体を走り抜ける。


「見せてやってもいいぞ。アスナ、お前がオレと結婚してこの城に住むのならな」

「!!」


 やっぱりか!


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