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わたし、異世界でも女子高生やってます  作者: 小織 舞(こおり まい)
ノーマルルート
1/280

始まりは広場から?

主人公の名前は

『 久坂 明日菜 』

でよろしいですか?


はい←

いいえ



…Now Loading……

 おっとっと……!


 革靴の爪先がレンガを噛んで浮遊感。

 これは……倒れる!


 しかも運動神経が死んでいるわたしの両手には鞄と体操着入れと、放課後にみんなで食べようと持ってきた手作りクッキー入りの缶があるのですよ。せめてクッキーは……クッキーだけは!


 わたしはギュッと目をつむって痛みを覚悟した。

 地面にぶつかるはずが、待っても待ってもそれはこない。


 というか……あれ、わたし、立ってる。


「あれ……?」


 おかしいなぁと思ってそっと目を開くと、そこは見たことのない広場だった。

 パチパチとまばたきしても、ゴシゴシとこすっても、変化はない。


 ザーッという水音にびっくりして振り向くと、直径一メートルくらいの二段式噴水がまさに大きく高く噴き上がったところだった。遠くからカランカランと鐘の音もする。


「えぇ……?」


 ぐるりと見回すと赤やピンクベージュのレンガが敷かれた広場。そしてそれにしっくりくる、可愛い外装のお店が見える。

 ベンチに腰掛けてハトに餌をやるお爺さん、変わった制服姿の女の子たち、抱き合ってキスしている恋人同士……。


「ここ、どこ?」


 わたし登校途中だったよね?

 通学路にいたよね、こんなところ通ってないよね?


 仮にわたしの知らない、最近できた公園の広場で、おっとっとした拍子に脇道にそれてここに迷い込んだとして、じゃあ、あの道やその道をちょっと行ったら元の道路沿いのいつもの道に戻れるんだろうか。


 ううん、そんなことないんじゃないかな?

 だってここ静か過ぎるもの。車の音も聞こえない、電信柱が見えない、空がすごく青い。ここはきっと、全然別の場所だ。


 夢なら良かったんだけどね、風が頬っぺたにそよそよするこの感じはどう考えても現実だ。


 こんな風に納得してしまうのも、こういうのってアニメやゲームでよくある設定だからだ。

 主人公はみんな、ある日突然異世界に召喚されたり、過去に跳んだり、神隠しにあったりして格好いい男の子と出会うのだ。襲いかかる困難を乗り越えて恋に落ちて、自分の世界に戻るときにはその恋人も一緒に世界を越えていたりして、しかも現代日本にちゃんと存在できるのだ。すごい。……のりちゃんが好きなんだよね、そういうの。


 ちなみにわたしの好きになったキャラクターは攻略対象外でしたけどね!

 お髭を整えた軍人系のナイスミドルとか、ちょっとくたびれた感のある文官系おじ様とか! 眼鏡のクールなイケメンロマンスグレー執事さんとか! わたしとしてはそういうものをお求めなんですよ、のりちゃん!


 あ、ダメだ……。


 現実逃避しても目の前の景色は変わらない。

 それどころか、めまいまでしてきちゃった。めまい、かぁ。ちょっと憧れちゃうよね。儚げな感じで。そんなのまったく縁が無かったんだけど、一度で良いから朝礼で倒れてみたかったな~。


 くるんくるん回る視界に気分が悪くなる。座り込みたいけど、体がなんだかゆっくりとしか動かせなくて……。


「大丈夫?」

「あ……」


 中性的なハスキーヴォイス、よろめいたわたしを後ろから支えてくれたのは、同じくらいの身長の男の子だった。


 最初に目に入ったのは、鮮やかな水色の髪。

 風に揺れる短いくせっ毛は、右の耳を隠すかのようにひと房だけ長く伸ばされていた。

 そして、深い血の色をした瞳に大口を開けたわたしが映っていた……。


 恥ずかしい!


「あ、あの、ありがとう!」

「いいえ。それより体、きつくない? きっと魔力切れを起こしてるだろうから……」

「いやいや、ただの貧血で……って、魔力?」

「うん。こちらに来たばかりのひとは、魔力が枯渇寸前まで減るから……」


 聞き間違いとかじゃなかった!!


 わたしがバッと身を離したせいか、肩を支えてくれていた彼の手がビクンと跳ね上がった。


「あ、ごめんなさ……!」

「………………」


 その瞬間、ポンッという電子音と共に目の前にポップしてきたのは……


 ステータス!?


‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

【名前】アイスシューク

【性別】男

【年齢】15

【所属】ギースレイヴン国

【職業】奴隷

【適性】魔法使い

【技能】◆この項目は隠蔽シールされています◆

【属性】不憫

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥


 奴隷って、奴隷!? 

 てか属性ってそっちかい!! 


 とか、言いたいことはたくさんあるわけですよ。


 どうりでゴツい首輪付けてるなぁとか、名前、アイスシュークっていうんだ、アイスというかソーダ色? アイス……ソーダ……ソーダ味のアイスバー食べたい!!


「あの、本当に大丈夫? ベンチに座る?」

「へっ!?」


 ソーダアイスくんがとても心配そうにわたしを見ている。

 その大きな目の下には隈があって、奴隷の身の上とか不憫属性とかで苦労しているんだなぁと思った。


 それなのに見ず知らずのわたしなんかを心配してくれるなんて、なんて優しい少年だろうか。もう、お姉ちゃん泣いちゃうんだからぁ。


「ありがとね、ソ……アイスくん!」

「え……」


 あっぶな、ついソーダくんって言いかけちゃったよ。

 アイスくんね、アイスくん。ステータス表記ありがたいわ~。


「貴女は…………」

「ん?」


 どうしてだか動揺しているアイスくん。

 何か言いたい事があるのか口を開きかけた時、広場に黒い疾風が舞い込んできた。


「ここかぁ!! 異界人ってどいつだっ!?」


 ははっ、ずいぶん賑やかな疾風だなぁ。

 お読みくださりありがとうございます。

 ゆるい異世界女子高生逆ハーレムライフをお楽しみください。



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― 新着の感想 ―
[良い点] まるでゲームの世界に迷い込んだかのような・・・あ、そうなのかな? 第一話からワクワクが止まらないです! [一言] Twitterのコメントでずっと気になっていた【わたしじょ】! やっと本日…
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