転生生活 魔法都市エディミアル パレアとクーデル
すみません少し遅れました。
フォーミュさんの館に戻ると見知らぬ女性がいた。
「あら可愛い、一体どこの子かしら?」
その女性は、扉を開いて入って来た僕たちのことに気が付いたようで振り向いて笑顔でそう言った。
こちらに振り向き歩いてくる姿はまるでモデルか何かのように洗礼されていた。
肩まで伸びた金髪は片目を隠すようにしてたらされており必然的に顔の半分ほどしか見えないが、それでもなお彼女の美貌がはっきりとわかる。
隠れていない眼の端は垂れておりおっとりとした印象を受けた。
黒いローブを身に纏っているが、はっきりと体のラインが出ておりスタイルがいいのも一目でわかった。
「え、えっと」
「お久しぶりです。
パレアさん」
僕の視界からパレアさんを隠すように前に出てくるイブ。
「あら、イブリスちゃん久しいわね!
ご機嫌いかがかしら?」
「問題なかったです」
「あらそう?」
注目の矛先がそむけられたので安堵と不足を感じながら二人の話を聞く。
「パレアさんはどうですか?」
「ご機嫌よ?」
「ところで、パレアさん何でフォーミュさんの館に来たんですか?」
「なに、旧友の頼みで少しばかりおかしな子を預かったのよ」
「おかしな子?」
「ええ、触媒魔法と剣を両立したおかしな武器を使う子よ」
そういった人物に心当たりがある。
っていうよりは、フォーミュさんに探してもらおうと思っていた人物で間違いないだろう。
僕からすれば子って感じがしないんだけどね。
僕は、イブの後ろからパレアさんの前へと出る。
「あ、あの!」
「あら? なあに?」
「クーデルさんをご存じなんですか?」
「あらら? そういう貴方こそクーデルを知ってるの?」
「はい、兄弟子ですから」
「兄弟子?
ああ、なるほどあなたが雷魔法の子ね?」
パレアさんは、前に出てきた僕の顎に手を当てて顔を近づけてくる。
「だめ」
ドギマギして行動できなかった僕を押し下げるようにしてエリイが僕とパレアさんの間に入る。
「あら、あなたは?」
「……」
「この子は、エリイって言ってフレアの同郷の子で幼馴染なんだよ」
「あら、そうなの?
心配しなくていいわよ?
あなたの勇者さまを取ったりしないから、ね?」
「むう」
きらめく笑顔を見せる彼女だが、エリイの方はまだ警戒しているようだった。
「で、そのおかしな子、じゃなくてクーデルさん?とやらがどうしたんですか?」
イブが脱線した話を戻す。
「その子の頼みで、雷魔法を使うあなたを訪ねに来たのよ」
「僕ですか?
僕になんの用でしょうか?」
「欲しい材料が手に入らなくてね?
その材料となる魔物が少しばかり硬いからフレアくんの力を借りたいらしいのよ」
それは都合がいい。
魔物や薬草の識別能力は僕は低いからね。
「良かった。
僕もクーデルさんに用事があったんです」
「あら、それは奇遇ね?
どんな用事なの?
問題なかったら教えてほしいわ」
「少しばかりお金が必要でして、そのお金を用立てるために冒険者ギルドで依頼を受けたいのですが、獲物の場所とかお金になるものとかの知識がほとんど無くて」
「なるほど、それであの子に手伝って欲しいってことね?」
「はい」
「それなら丁度いいかもしれないわね?」
パレアさんが振り向くと奥の食堂の扉が開き見覚えのある男性が出てきた。
「ん? フレアか!
久しぶりだな!
調子はどうだ?」
「いいですよ」
「そうかそれはよかった。
しかし、そこのおば……」
「ギロリ」
「お姉さんにいらないことはされてないか?」
「特に何もされてないです」
「可愛いからって何でもすると思わないでね?」
パレアさんに睨まれて、冷や汗を流すクーデル
「そうか、それならいいんだが」
「それより、フレア君に用事があったんでしょ?」
そう言ってエリイを抱きしめるパレアさん。
エリイもまさか自分が標的にされると思わずあっさりと捕まった。
「あ、ああそうだったな。
実は、石竜の鱗がどうしても欲しくてな。
頑張れば取れないことも無いんだが、足が出てしまうからな。
お前の完全詠唱の力を借りたいんだが」
「良いですよ」
「そうか!
それは良かった」
「ただ、条件があります」
「条件?
まあ、言ってみろ」
「今お金が必要ですから、お金になる依頼を手伝ってほしいんですよ。
薬草の場所とか獲物の場所とかの依頼を受けるとなると依頼対象を探すのが得意なクーデルさんの力を借りたほうが良いと思っていましたから」
「なるほどな。
それならお安い御用だが、なんでまたお金を集めてるんだ?」
「ちょっと、魔道具が必要だったからです」
「なんの魔道具だ?」
「魔力を抑える魔道具です」
「魔力を抑えるって、お前魔力制御は大得意だっただろう?」
「僕じゃなくてバレリア先生が僕の魔力を扱いきれないらしいんです」
「そういうことか。
それならお前が多重詠唱を行えばよかったのにな」
「無理ですよ。
まだ、一回見ただけですよ?
詠唱の方はともかく他の人の魔力を掌握するのは難しそうでしたし」
「完全詠唱ができるんだったら多重詠唱するのに問題はないはずだが」
「そうなんですか?」
「まあ、お前が多重詠唱する意味は薄いけどな。
多重詠唱は、魔力が少ない人をひとかたまりにして強大な魔法を発動させるための技術だからな」
「そうだったんですか」
「はいはい、難しい話はそこまでにして、依頼はいつ受けに行くの?」
パレアさんが話に区切りをつける。
キリッとしてかっこいいと思えるんだけどなエリイごと僕を抱きしめていなかったら。
ひとまず、ある程度のことは決めておかないと。
「少し依頼するだけなら明日にでも行けますよ」
「石竜は、竜の中ではそこまで強くはない存在だが、それなりの準備をしておいたほうが良いし、万全の状態で行きたい。
フレア次の学校の休日はいつだ?」
「明々後日です」
「なら二日後に一度ここに来るから準備はしておいてくれ」
「明後日ですか?」
「ああ、明後日の放課後に移動して明々後日には戻ってくる予定を組む」
「そうですか。
因みに必要なものとかありますか?」
「こっちで用意しておくから気にするな。
しっかりと体調だけ整えておいてくれ」
「わかりました」
「ちなみのそこの二人は付いてくるのか?」
「はい!」
「うん」
「えっ?」
「まあ、そこら編はそちらで決めてくれ
じゃ、俺はこれで、あ、お前の方の依頼はいつ受ける?」
「一応見繕ってはいるんですが、これはというものがなかったので、石竜の依頼のついでに受けれるものを当日受けることにします」
「偉いわね?」
エリイの上から僕を撫でるパレアさん。
エリイも防ごうとするが無理なようだ。
僕はわざわざ躱すようなことをしないためグリグリ撫でられる。
「そうか、わかった。
それじゃあな」
「私も来るからよろしくね?」
そう言い残して、クーデルさんは苦笑しつつパレアさんは名残惜しそうに扉を開けて出ていった。
館のエントランスに残った僕とエリイとイブは顔を見合わせる。
「なんか嬉しそうでしたね」
「エリイもそう思う」
「ご、誤解だよ。
そんなことより、ふたりとも明々後日ついてくるのか?
結構危ないぞ?」
魔法士としては、僕より学んでいるイブや特殊な魔法を使いこなすエリイの心配は必要無いのだろうけど男としては、懐いてくれる女の子の心配はしてしまう。
「うん、あれから私の魔法も強くなってるし足手まといにはならないよ」
「エリイも」
「わかった」
後衛が多くなることは問題ありそうだけどそこらへんはクーデルさんが考えてくれるだろう。
拙作をご覧いただきありがとうございます。