転生生活 魔法都市エディミアル 他称黒騎士と自称白騎士
冒険者登録も終わり依頼を確認する。
「えっと、良さそうな依頼は無いかな?」
「どんな依頼を探す?」
「出来れば狩猟の依頼があれば良いんだけど一番儲けやすいからね」
「ふうん、そうなんだ。
ところで人を探すんじゃなかったの?」
「うん、そうだけど?」
イブが何を言いたいのかよくわからない。
「先に探さなくていいの?」
「どういうこと?」
「だって、このまま依頼に行くんでしょ?
探している暇ないんじゃないの?」
ああ、そういうことね。
すぐに依頼に行くと思ったのか。
「いや、今日は下見に来ただけだよ。
この都市のギルドを確認しておきたかったんだ。
そのついでにどんな依頼があるか探すんだ」
「探しても意味がないんじゃ」
「依頼の傾向で対策を立てられるからね。
それに協力をお願いする人は、前情報をかなり重要視する人だからね」
使う武器の性質上どうしてもある程度の準備をする必要があるからね。
その代わり対応能力は非常に高いから頼りになる。
素材の知識なんかも豊富だ。
「なるほど、でもそんな人だったら、前もってここの依頼のことを把握してるんじゃ?」
「そうだけどね。
協力をお願いする以上どんな依頼を受ける予定なのかあらかじめ決めておいた方がいいでしょ」
「それもそうね」
さて、イブの疑問に答えたところでふと一つの依頼が視界に入る。
『石竜の討伐』
「石竜?」
「竜って名前があるってことは強いんじゃないの?」
そりゃそうだろう。
なんったって魔法学校の最上位のクラスが竜だからね。
しかし、石竜ってどんなやつだったっけ?
ううん、聞いたことあるんだけど思い出せない。
思い出そうと考えていると背後で騒めきが起きた。
思考を中断し騒めきの方を見ると、いつか見た黒い鎧の人が入ってきていた。
そしてその黒い鎧の人にさっきの白騎士さんが絡んでいる。
「まさか、こんなところに足を運んでくるなんて、いや、そんなことより私と勝負しろ黒騎士!」
「いや、すまないが今日は所用があってな、勝負している暇はないんだ。」
「なんだと!?
私との勝負から逃げる気か?」
「そう判断されてもかまわないから通してくれないか?」
「断る!」
「全く、強情だな」
黒騎士と呼ばれた黒い鎧の人は、やれやれと仕草で表現する。
そして次の瞬間、黒い鎧の人の姿がブレたかと思うとアレックスさんがひっくり返っていた。
「すまない、本当に急いでいるんだ」
そう言って黒い鎧の人は、カウンターの方へ歩いていく。
僕には気が付いていないのだろうか?
まあ、気付かなくっても何ら不思議はない。
アレックスさんが倒されたことによりギルド内の一部が殺気だっているんだ。
殺気の方へ注意が向きこちらに気が付かないのは仕方がない。
まあ、一部を除いては面白そうに見ているのだけどね。
しかし、何しに来たんだろうか?
「【黄昏の姫巫女】に依頼をしたい」
「指名依頼ということでよろしいでしょうか?」
受付嬢の表情が心なしか硬い。
いや、実際に不快そうな感じがひしひしと伝わってくる。
「ああそうだ」
「少々お待ちください」
受付嬢はそう言うとカウンターから離れた。
そして、二階へと続く階段を登って行った。
しばらく様子を見ていると黒い鎧の人が周りを見渡す。
そして、こちらに視線(と言っても兜越しなのでこちらを向いたように見えるだけなんだけど)が止まる。
しばらくこちらを見て首を振り受付嬢が消えた階段に顔を向ける。
黒い鎧の人の動きが止まってしばらくすると他の冒険者たちがざわめき始める。
そろそろ帰ろうかと思っていると受付嬢が下りてきた。
「申し訳ございませんが、【黄昏の姫巫女】は只今他の依頼を受けております。
通常依頼か他の冒険者又はグループを指名して下さい」
「む、なるほど、そうなっているのか。
分かった出なおして来よう」
黒い鎧の人はあっさりと引き下がり踵を返し颯爽と去っていった。
黒い鎧の人が去ると同時にギルド内は、大きな騒ぎとなる。
「あれが黒騎士か。
アレックスが赤子の手をひねるようにやられるとは、噂は馬鹿にできねえな」
「ああ、まさかあれほどだったとは、一人で竜退治をしたとかいう話もまんざら嘘なんじゃねえかって思えるな」
「俺は、蛮族の集団を殲滅したとか聞いたことがあるぞ」
「そういえばこの前の氷獣の暴走時も撃退したそうだな」
「おいおい、まじかよ。
あの魔獣って、竜より強いって言われていたよな?」
とかいろいろ聞こえてきた。
すごい人だったんだなあの人。
「イブは、あの人のこと知ってる?」
「もちろん、『暗黒騎士』様のことはよく知っているわ」
「『暗黒騎士』様ね。
どんな人か教えてくれないか」
「エリイも知ってる!」
「そうなのか?」
あれ、なんだかこのやり取り前にもあったような?
拙作をご覧いただきありがとうございます。