転生生活 魔法都市エディミアル 冒険者ギルド
やることがなくなり家路につこうと思ったときふと思い至る。
そういえばまだこの都市の冒険者ギルドに行ったことがない。
まあ、行く必要が無かったのだけど今回、資金集めをする以上は予め足を運んでおいた方がいいだろう。
幸いまだ時間に余裕がありギルドに寄る分には問題はない。
「エリイ、イブ、ちょっと寄り道していい?」
「どうしたの?」
「ちょっと冒険者ギルドに行こうと思って」
「え? あそこ荒くれ者の巣窟だよ?」
「そうなの? なら、エリイとイブは先に帰ってて、僕一人で行くから。
二人を危ない目に合わせたくはないし」
「エリイは付いていく」
「エリイ?」
唐突の発言に驚きの声を上げるイブ。
「わかったよ」
「ええ? 危ないんだよ?」
「エリイは、一度言ったらよっぽどのことがない限りは自分の意志を曲げないからね」
「それじゃあ、私も行くよ」
「いいの?」
「どうせなら、冒険者登録しておくよ。
なにかの役に立つかもしれないし」
「わかった。
それじゃあ三人で行こう」
「ええ」
「うん」
さて、久しぶりの冒険者ギルドだけどペンドラゴン領のギルドよりは人は多いらしいしどんなだろうか?
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イブの案内で到着したギルドは、ペンドラゴン領よりも大きい建物だった。
「思ってたより大きい」
「そう?」
「ペンドラゴン領のギルドと同じくらいの大きさだと思っていたから」
「ふうん、でもペンドラゴン領の都市と魔法都市の大きさを考えたらそんなもんでしょう」
イブの返答に頷きつつギルドを見上げる。
「ほら、見てないで入りましょう。
用事はさっさと終わらせるほうがいいでしょう?」
イブに急かされて中に入る。
中では、ガタイのいい男たちが何やら騒いでいた。
「喧嘩?」
「流石、冒険者ギルド昼間から物騒ね」
入り口で面食らっていると騒いでいた厳つい顔の男が話しかけてきた。
いや、絡んできたという方が適切か?
「おい、ガキどもそんなところで立ち止まってたら邪魔だ。
それにここはお前らみたいな学生が来るところじゃねぇ」
男が酒を飲んでいることはすぐにわかった。
まず明らかな赤ら顔、そして息が酒臭いのだ。
「可愛い子二人も連れてこんなとこに来やがって、何しに来たんだ?」
もうひとりの悪人顔の男がこちらに向かってきた。
「おいおい、お前酔っ払いすぎだ。
わりいな、普段はおとなしいやつなんだ。
だが、ここはお前らみたいな学生が来る場所じゃねえさっさと帰りな」
「ご忠告ありがとうございます。
でも大丈夫です。
これでも僕、冒険者ギルドに登録はしていますから」
そう言って、ギルド証を見せる。
「何だ?
学生のくせにギルドに登録してるのか?」
悪人顔の男は、顔を歪ませる。
「おいおい、君たちみたいな顔が近くにいたら子供たちが怯えるだろう」
そう言って現れたのはギルドの中ではあまりに細く見えるイケメンだ。
「すまないね、どうも荒くたい奴らばかりで」
「あなたは?」
「ああ、ごめんごめん、白騎士で通ってるアレックスだ」
「自称な」
悪人顔の男が茶々を入れて、その男を睨むアレックス。
悪人顔を素知らぬ顔で明後日の方を見る。
アレックスはため息を付いてこちらを向く。
「今日は、ちょっとした大仕事が終わってね。
その加減でどうしても浮足立ってるんだよ」
「そうなんですか」
「君たちは、ああ、君を除いて、そこのお二人が冒険者登録に来たのかな?」
「ええ」
「……」
イブは警戒気味だが僕の横に立ち、エリイは僕の背中に隠れている。
「はは、そう警戒しなくても取って食ったりしないよ。
けど、ここは君たちみたいな将来ある人間が来るような場所じゃないからね。
不審に思っているのはこちらの方なのは理解しておいてくれ」
そう言われて僕は、言われてみればと納得する。
「わかってくれてのならいいや。
何しに来たのか知らないけど死なないようにね」
そう言って手を振って踵を返し立ち去る。
「はっ、かっこつけやがって」
悪人顔の男がいかつい顔の男を連れてイケメンの後を付いてく。
「気をつけろよ」
いかつい顔の男の唇がそう動いたのが見えた。
冒険者家業だ。
当然命を落とす可能性もあるだろう。
「ありがとう」
僕は、思わずそう返した。
「一体何だったのよ」
そう愚痴ったのは、イブだった。
「まあ、なんだっていいじゃないか。
それよりもさっさと冒険者登録をしてしまおう」
「それもそうね」
冒険者登録するためにひとまず受付に向かう。
ところでエリイいつまで僕の背中にひっついているつもりなんだ?
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