転生生活 魔法都市エディミアル 放課後の寄り道
少し長めになっています。
筆が進んだと言うよりは助長になってしまった感があります。
学校も終わり、放課後の自由時間。
僕は、久しぶりにドアゴン街へ来ていた。
人が多く行き来するその風景は、どこか前世の都会を彷彿とさせるものだった。
「で、何を見に来たの?」
僕の左に当然のようにいるイブが尋ねてきた。
「多重詠唱の授業では何も出来なかったから先生に聞いたら魔力を抑える魔道具とかがあれば補助にはなるんじゃないかって聞いたからね」
「フォーミュさんに相談しなかったの?」
「フォーミュさんに相談する前に自分で解決できるならその方が良いだろうと思ってね」
何よりこちらに戻って来てから前世でいう繁華街のような場所でゆっくり散策する余裕がなかったしね。
「なるほどね。
じゃあ、目的は、魔道具屋といったところね」
イブは、ニッコリと頷くと前方方向を指差す。
「あっちに品揃えが良いお店があるから行こう」
イブは、僕の手を掴むとズンズンと進んでいく。
「そんなに慌てなくて良いって」
僕は少し抵抗して右後ろにいたエリイの手をとる。
「ほら、エリイついて来て」
「う、うん」
僕の言葉に頷き僕の手をとるエリイ。
ただ、少しイブに引っ張られて、周りからの視線に気がついて思った。
普通に手を繋いでいるわけでないにしろ女の子が二人それぞれ手を握っている状況だ。
両手に花と言っても良い状況だ。
まあ、ニンマリする余裕もないんだけど。
「あ、見えてきた」
そう言ってイブは、掴んでいた僕の手を放す。
イブが指差すその先には出来損ないのまるっとした人形とその人形の首に掛けられた看板が目に入った。
「『魔道具屋ラードン』? 変な名前の店だな」
「そう? まあ、名前はいいから中に入ろうよ。
品揃えがいいんだ」
促されるがままにエリイを道連れに店内に入る。
心なしか抵抗されたのは気の所為だ。
店内には、水晶玉や剣のような普段遣いしないものからごく普通の服のように見えるものなど色々なものがおいてあった。
まるで雑貨屋のような様相を呈している。
「いらっしゃい」
店の奥からしわがれた声が聞こえてきた。
そちらを見ると、いかにもな雰囲気のおじいさんがタバコを吹かしていた。
「すみません、ちょっと魔道具を探してるのですが」
「どんなだ?」
「え?」
「だから、どんなやつだって聞いてるんだ」
面倒くさそうにこちらを見据えるおじいさんの言葉に反応し遅れるが、なんとか思考が追いつく。
「えっと、魔力を抑える魔道具を探してるところでして」
「魔力を抑えるだぁ? なんに使うんだ?」
「えっと、自分の魔力を抑えるためです」
「……ちょっと待ってろ」
よっこらしょっと言って立ち上がると店内に消えていった。
僕は、どうしたものかとエリイを見るが、エリイは首を傾げるだけで。
「あ」
エリイの手を握りっぱなしだったのを思い出して手を離す。
「むう」
不満そうに頬をふくらませるが流石に四六時中手を繋いでいるわけにはいかない。
「後でな」
だから、そんな目で見ないで、僕だってつないでいたいけどいくつかイブに聞かないといけないし。
その肝心のイブだが、さっきから店内を行ったり来たりしている。
「イブ、おじいさん中に入っていったけど個々の店大丈夫なのか?」
「うん、表の人形あったでしょ?」
「ああ」
「あれは魔導人形って言ってねそこらの警備兵より強いんだよ」
「へえ」
あのまるっとしたやつが?
ゴーレムといえばマリコさんのところにいた鎧ゴーレムが思い浮かぶ。
ああ、あの逃げるときに助けてくれたでかい土の塊もそうだったっけか。
「まあ、何にせよ良からぬことを企まないことだ」
「そんなつもりはこれっぽっちもないよ」
「それは良かった」
大げさに安心するそぶりを見せるイブ。
「待たせたな」
声があった方を振り返るとおじいさんが戻ってきていた。
「あったぞ、この指輪がそうだ」
僕はこんなに簡単に見つかったことに驚いた。
「それが、……値段はいくらですか?」
「十万だ」
「……」
思ったより高かった。
いや、魔道具なのだむしろ安い方なのかもしれない。
「なんだ?
ねえのか?
それじゃあ、ひとまず出直して来な。
因みに値切りには応じねえからな」
おじいさんはそう言って追い払う動作をする。
「ありがとうございました」
「おう、金を用意して来いよ」
僕は、トボトボと店を出る。
「何落ち込んでるの?」
イブの言葉に僕は、当然のように返す。
「だって、目的のものが見つかったのに手が届かないんだよそりゃ落ち込むよ」
「へえ、てっきり下見に来ただけだと思ってたよ」
「何で?」
「魔道具って安くても一万は下らないからね。
それこそノミ市でもない限りは、そんな安い金額では手に入らないよ」
「なるほど」
「で、どうやってかお金を稼ぐつもりか聞くつもりだったんだけど」
僕は、考えてもないことを考えていたと思われてたことにこそばゆくもやるせない気分になった。
「その感じじゃ何も考えてないよね」
「エリイが出す」
「え?」
「へ?」
唐突なエリイの言葉にエリイの方を振り向く。
「エ、エリイ? 十万も出せるの?」
「うん」
「ふうん、それなら私も出すから五万でいいんじゃない?」
「え?」
急にお金を出してくれると言ったエリイに対抗したかのようにお金を出すと言ってくれるイブ。
「えっと、気持ちはうれしいけど今回のことは出来る限り自分で解決したいんだ」
女の子にお金を出してもらうなんて情けないことしたくはない。
「それならプレゼントでどう?
ほら、復学祝いまだだったでしょ?」
そんな祝いは欲しくないけども流石に面と向かっていらないと言えない。
「復学しただけで十万もするプレゼントはさすがに」
「そう?
丁度いいと思ったんだけど」
「それにエリイ、なんでそんなに持ってるの?」
「研究費」
「おい」
駄目だろう、研究費私用に使っちゃ。
「魔力を抑える研究に使ったって言えば問題ない」
っていうかそんなのあるの?
「影魔法を使えるのは私だけだから貰えるの」
「ダメだよ。
自費ならともかく研究費を使うのは」
「え、なんで」
疑問の声を上げたのはまさかのイブだった。
「もしかしてイブも研究費から出そうとしてた?」
「テヘッ☆」
「テヘッ☆じゃない。
そもそも、研究費って何処から出てるんだ?」
愚問だが、あくまで確認のための質問だ。
「勿論、魔法学校からだよ」
「エリイもそう」
「僕なんかのためにお前達に不都合なことが起きると思うと気が気でなくなるからやめてくれ」
「えー、問題ないのに」
「いっぱいあるから大丈夫なのに」
「そういう問題じゃない!」
しかし、この二人に研究費をだすあの学校は、いろいろな意味で大丈夫なのだろうか?
いろいろと心配だ。
前世の大きな組織も腐敗があったようにあの学校でもあるのだろうか?
あるなら、そのうちとんでもないことが起きるかもしれない。
「まあ、幸いなことに僕には稼ぐ手段があるから
寧ろそちらを助けてくれた方がありがたいよ」
二人の研究時間を潰すことにもなるけど少なくとも僕の心労的にはそうしてくれた方がありがたい。
「なーんだ、やっぱり考えはあったんだ」
「いや、考えってほどじゃないよ。
それに一応同行者をひとり探さないといけないし」
といってもフォーミュさんに頼めばあっさりと見つけてくれるかもしれない。
勿論、魔力を抑える魔道具も頼めばだしてくれるかもしれないが、のび○になるつもりはないので探すだけにしてもらおう。
フォミュえもんに頼り過ぎないようにしておかないとね。
ただでさえ見えないところで支えてもらっている節があるしせめて表面だけでも取り繕いたいものだ。
まあ、人探しだけは、手を貸して貰うけどね。
拙作をご覧いただきありがとうございます。