転生生活 魔法都市エディミアル 試験当日二日目3
「フンッ、そんな物出したところで俺は騙されんからな。
そんな事して出したところでどうせ安定しない」
何やら一人で喚いているムストはさておき、少なくとも精霊クラスであるムストに油断は禁物だ。
僕が成長しているようにムストも成長しているはずだ。
とは言え、死地にいきなり放り込まれるようなことはされていないはずだ。
「フンッ、まあいい、小手調べと行こうか」
『強大なる光の槍よその力をもって敵を貫け』
また、のんびりした詠唱だなと一瞬思ったけど、クリアが異常なだけで普通はこんなもんだと思いだした。
勿論僕も黙って見ていない。
まあ、詠唱はしなんだけど、雷の矢を魔法陣から展開する。
「フンッ、その程度で俺の光の槍を止めれるワケがないだろう」
光の槍に雷の矢をぶつけて威力を削っていく。
のんびりではないにしろクリアほどバンバン飛ばしてくるわけでもないので雷の矢連打で光の槍を打ち消す。
「フンッ、ただの小手調べだからな。
ここからが本番だ!」
『武王の斧よ光の力にて顕現せん』
ムストの頭上に巨大な光の斧が現れる。
流石にあれは矢レベルでは無理だ。
魔法陣を三つに増やし構成を剣に変える。
『その強大な力を持って敵を潰したまえ!』
巨大と言って差し支えない斧が飛んできた。
正直言って真正面から受け止める必要はないと思うんだけど、合格条件が分からない。
隙をついてムストを倒すと魔法士としては評価されず合格にならないかも知れない。
真正面からムストを倒せばまあ、合格は間違いないだろうと判断して今度は雷の剣で斧を押し切るつもりで展開する。
しかし、斧の力は僕の想定以上あり押し切れない。
仕方なく僕は詠唱する。
『雷の斧よその力で襲い来る悪意を潰せ』
それに並行して魔法陣を地面に広げる。
これで通ったら流石にどうしようもない。
最初から完全詠唱じゃなくて、擬似多重詠唱を唱えておけばよかったかな。
僕の心配は外れてムストの斧は消え去った。
ほっと安堵の息をこぼしてしまう。
「フ、フンッ、この程度小手調べみたいなもんだ次が本当の本気だ!」
若干表情がこわばっているようにも見えるがまだ余裕はあるようだ。
しかし、冷静さは完全に欠いているようで擬似多重詠唱を唱え始めた。
『光よ幾千も輝く閃光よ
重なれ光芒
重なれより光れ
一つの槍となり敵を滅ぼせ
あまりにも隙だらけなのでこちらは五つ目の魔方陣を展開し雷の槍を発動させる。
これぞ極大の光槍
貫け戦神の槍』
そして完成直前に五つの全ての魔方陣から雷の槍を発射する。
「フン、その程度の数本の槍など」
そして予め仕込んでいた仕掛けを使う。
『貫け三叉の雷槍』
僕はポケットに入れていた魔方陣を広げて呪文を唱えた。
他の雷の槍とは違い三叉になっている槍だ。
貫通能力が一番高い『槍』に破壊力を加えるためにこんな形になった。
切り札ではないのでここで使っても問題はないし、なによりあいつ相手に使っておかないと次に試せる機会がいつ来るかわからない。
「悪あがきをこれで終わりだ!」
こちらの槍が相手の光の槍に当たり続けるが効果は薄い。
とはいえあちらは魔力が尽きたようで肩で息をしている。
こちらはまだまだ雷の槍を出していく。
そして三叉の雷槍が相手の光の槍とぶつかると両方消滅する。
「は? え? お、俺様の戦神の槍と相打ちだと!?」
勿論、雷の槍はまだまだ出せるしこの『三叉の雷槍』も魔方陣なので展開できる。
「ふ、ふざけるな! この俺様が負けるなど」
心の声が駄々漏れだけど僕は、アメリア先生のほうへ視線を投げかける。
アメリア先生は頷く。
「フレアは合格だよ」
「な、試験官は俺だ!
アメリア先生といえど「うるさいよ!
全く、試験の合否は私にも決める権限は与えられているんだよ。
お前さんが試験官になったときにこうなることは予想できたしねぇ」
ため息をついてこちらに歩いてくるアメリア先生。
僕も安堵のため息をつく。
確執があるムストが試験官の時点でいちゃもんをつけて不合格にしてくることは僕でも予想はついた。
一応アメリア先生が付いていたのでもしかしたらそういうことなんだろうなと思いつつこちらの手の内の一つである『三叉の雷槍』を使うことにした。
これで実績的な意味でも評価してもらえるはずである。
むしろしてもらわないと自分の力だけでは精霊クラスになれる気がしない。
「予想できたならとめてくださいよ」
「おい、まだ試験は
「はいはい、フレアは教室に行っていなさい。
ムスト試験官、あなたの仕事はまだ終わっていません」
「ッチ、分かりました」
さすがに試験官としての役割は全うするつもりのようだ。
こちらを睨んでくるムストを尻目に僕は教室へ戻っていった。
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