転生生活 魔法都市エディミアル 試験当日二日目2
簡易検査は魔力を水晶に送り込むだけでオーケーだった。
さすがに第一試験のように精密に測ることはない様だった。
検査が終わり次第生徒たちは訓練場へ向かう。
訓練場では、それぞれのクラスに分かれて試験が行われるようだった。
勿論僕らは光のクラスとしてひと塊となった。
「遅い、いつまで待たせるつもりだ」
そう言ったのはみんな大好きムストだ。
……うん、無理があるのは分かってるけど皮肉を言っとかないと心の平穏を保てそうにない。
ムストが立っている場所を察するに今回の試験官はムストだろうと推測できた。
てっきりアメリア先生が試験官をしてくれると思っていたのだが、アメリア先生は、ムストの後ろで目を光らせていた。
しかし、そんな視線も何のそのムストは偉そうな態度を崩さない。
……もしかして、後ろから見られてるの気が付いてないんじゃないか?
「今回は俺が試験官をすることになったありがたく思えよ」
つい最近まで妖精クラスだった奴がよくここまで偉そうにできるな。
むしろ、感心してしまう。
しかし、どうやらその尊大な態度も全てが全て虚飾ではない事はすぐにわかることになる。
「では、試験を始める。
フレアお前からだ」
ニヤついた表情を見せるムストに少しの嫌な予感を感じるも試験である以上受けるしかない。
そのために僕は、一つだけ仕掛けを施してムストの前に立った。
「はははは、これで、俺はお前より優秀だと認めてもらえる」
なんだかよくわからないけどやけにテンション高いですね。
あんまりと見たくはないけどムストの顔を見る、その眼も。
そして一息ため息を吐いた。
なんでこんな奴が試験官をやってんだと僕はアメリア先生を見ずにはいられなかった。
アメリア先生は首を振る。
それにどういう意味があるかははっきりわからなかったが、少なくとも試験官のチェンジはきかないということは、なんとなく察することができた。
そしてもう一度ため息を吐く。
果たして、こいつから合格をもぎ取ることができるのか少々、いやかなり不安だ。
とはいえ、やるしかない。
僕は意を決して魔方陣を展開するのだった。
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「全く、誰だこの俺様の仕事をややこしくするやつは」
そう言って真っ黒なローブを纏い全身黒ずくねの男は愚痴をこぼす。
「ただの釣りになる思っていたが、まさかこっちにまで手を伸ばすとは」
今、闇のクラスは荒れ放題だった。
そして、五人ほどの男たちが転がっていたその横で三人の生徒が顔を蒼くして腰を抜かしていた。
その三人とは打って変わって一人倒れ伏す男たちの隣で腰に手を当ててどや顔をしている少女がいた。
「しかし、見違えたな。
相手は精霊クラスだっただろうに、よく持ちこたえたな」
「みんなが魔力を貸してくれたおかげで何とかなったよ」
「まあ、比較的戦闘向きなのはお前だけだからな」
「けどこの人たちなんでエリイのことを狙って来たの?」
「それは、まあ直接本人に聞いてみるさ」
流石に今回釣りたい奴らとは関係なさそうだ。
しかし、こう頻繁に侵入されるとなると異常だな。
フォーミュの野郎ちゃんと結界仕事してねえじゃねえか。
「グッ」
一人の男が意識を戻したようだ。
「セメテヒトリダケデモ、グォオオオオオオオ!」
男が何かを呟くとたちまちのうちに体が膨張し肌が黒ずんでいく。
「ああ、なるほどそういうことだったのか。
めんどくせえから」
『潰れろ』
まさか生徒の中に悪魔付きが出るとはな。
流石に俺の重力魔法の中では動けないか。
幸いというか下級レベルの悪魔のようだな。
もし中級が一匹でもまざっていたらエリイ一人だけではどうにもならなかっただろうな。
念のため他の四人にも重力魔法をかける。
しかし、これはどうしたものか。
さすがにこうなったら結界が作動するだろうが、他の誰かが来るまで俺が動けない。
なによりどれだけ侵入を許しているのか分からないからうかつに助けを呼びに行かせるわけにもいかん。
フレアが心配だが、アメリアも居るし大丈夫だとは思う。
他のクラスが襲われているかどうかが気になるところだが……、考えていても仕方がないな。
とりあえず使い魔で連絡を取るか。
言うことを聞けばいいが、とりあえず懐から紙を取り出してそれを広げる。
エリイとその他三人が不思議そうにこちらを見る。
「これが気になるか?」
俺が四人に向かって尋ねると四人はほぼ同時に頷く。
「これは、召喚術に使うものだ。
召喚術用の魔法陣を刻んである。
これに魔力を通して呪文を唱える」
『召喚アルフェス』
そうして出てきたのは、手のひらサイズのドラゴンだ。
アルフェスは、俺が拾ったドラゴンでもうかれこれ十年以上飼い続けている。
一向に大きくならないのでそういう種族なんだろうが、小ささの割には、我儘というか自分勝手と言うかそんな性格をしている。
使い魔としては使い勝手は悪いが、必要なところではしっかり働いてくれるので完全にお払い箱にできないのが困りどころだ。
「アルフェス、悪いが、校長を連れてきてくれ」
今回は、必要なことだと認めてくれたようで素直に飛んでいった。
しかし、時間稼ぎにしては少々おそまつなような気もするが、敵の目的はなんだろうか?
拙作をご覧いただきありがとうございます。