転生生活 魔法都市エディミアル 試験一週間前
緩急序破急起承転結
ただいま捜索中
魔法都市エディミアルにあるドアゴン街は、魔法道具市場と呼ばれている。
実際にドアゴン街には、その名に恥じない様々な魔法道具が取り揃えられている。
ドアゴン街は、様々な人が行き交う場所で、その中には、魔法学校指定ローブを纏う魔法学校の生徒たちもよく見かける。
かく言う僕も魔法学校の生徒なんだけどね。
何故、僕が、ドアゴン街に来ているかというと試験も一週間に近づいてきたので試験の準備を完了させるためだったりする。
「で、なんでイブまで付いてきてるんだ?」
僕は、イブに向かって尋ねる。
せっかくエリイと二人で買い物出来るというのに
「だって、暇なんだもん」
僕は、嘆息する。
「もう少しマシな理由はなかったのか?」
「じゃあ、先輩が優先して買ったほうが良いものを選んであげるってことで」
「建前は重要だな」
まあ、さっきの理由よりマシだろう。
だからエリイ、頬を膨らませるのをやめて、僕を悶絶させるつもりか。
「けど、試験に必要なものってそんな大層なもんじゃないだろ?
せいぜい、消耗品の補充ぐらいじゃないか?」
その消耗品もインクや魔法に使う触媒くらいなものだろう。
「チッチッチ、甘いなあ。
エリクサーより甘いよ」
「エリクサーって甘いの?」
唐突にエリイが質問してきた。
「らしいよ? じゃなくて、試験の中の一つに精霊クラスとの戦いがあったのは知ってる?」
「うん」
あいつらから聞き出したからな。
「精霊クラスとの戦いでは、実は魔道具の持ち込みはありなんだよ」
「へ、本当に?」
「うん、じゃなかったら精霊クラスの人が手加減する必要があるからね」
「それでいいんじゃないのか?」
「それがね。
試験とは言えせっかくの実戦で本気を出せないというのが案外ストレスなんだ。
だから、ハンデとして精霊クラスの人は、装備品の類は持ち込み禁止になってるんだ」
なるほど。
「ところで精霊クラスの誰が試験の相手になるとかはわかるのか?」
「わからないわよ」
「そうか」
まあ、当然っちゃ当然か。
試験の相手がわかったらその人物の対策をとられてしまうからな。
「だから、フレアの弱点を補うものを用意すればいいと思う」
「僕の弱点か」
しいて言うなら近接戦が苦手なんだけど、それは魔法士全般に言えることだ。
「私なら、爆発力が無いしエリイはそもそも攻撃力自体が無いよね」
「むう、ちゃんとあります」
「けど闇魔法は基本的に攻撃魔法が少ないよね」
「それもそうだけど」
「光魔法は、魔力効率が悪いとか言う話なんだけど」
「フレアは魔力がたくさん持ってる」
「なんだよねぇ」
イブとエリイが僕の魔法について検証してくれている。
「うーん、エリイの時とは違ってとりわけこれと言った弱点が無いね」
「フレアだもの」
「それもそうか、あの魔力量を持つフレアだもんね」
確かに、僕の魔力量は学校の中で一番高いみたいだからめったなことではなくなることは無い。
「あと思いつくのは魔力制御だけど、フレアってどれくらい制御できる?」
「光球を百以上は出せるよ」
魔方陣を書くことを考えれば千はいける。
「はは、なるほど」
そう言って、イブは頬を引きつらせる。
「なら、別にいいか。
今日は、『ルパンテ』に行って甘味でも味わって帰ろう」
「わあ、エリイ一回行ってみたかったんの」
「るぱんて? って何の店だ?」
「最近出来た店でね。
何でもアイスクリームとかいうスイーツを食べられるんだって、せっかくの機会だし行ってみようよ」
「え? でもその店って流行ってるんだろ?」
「うん、よくわかったね」
「なら、並ばないといけないんじゃないか?」
「当然よ」
「うそだろ」
「ほらエリイも説得して」
「一緒に行ってくれないの?」
そんな潤んだ瞳で見つめられたら断れないじゃないか。
「わかったよ」
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僕は早速後悔し始めていた。
なぜなら僕以外の並んでる人全てが女性だからだ。
「アイスクリームってどんなのだろう?」
「冷たくて甘いんだって、それが口の中で溶けてそれはもう幸せを感じられるんだって」
そんな会話が耳に入ってくる。
周りが、女性ばかりだからか形見が狭いが、絶え間なく話が耳に入ってくる。
その中でも気になる話も無くはない。
「なんでも、飲むと魔法が強くなるだって、すごいよね?」
「超スゴイ! それってどうやって手に入るの?」
「それがね……」
「フレア、もうすぐだよ。
って、どうしたの?
気になる人でもいた?」
意地悪な笑みを浮かべながらイブは問いかけてきた。
それを聞いたエリイが不機嫌な表情を作った。
「まさか、で、あとどれくらいだ?」
かれこれ一時間は並ばされている。
「もう少しだよ」
イブが
しかし、よくアイスクリームが残っていたな。
これだけ並んでいたら足りなくなると思うんだけど。
と思っていると店員の人が出てきて人の数を数え始める。
ああ、足りなくなったんだな。
幸いなことに僕らの大分後ろのほうで売り切れが宣言された。
「よかった。 ぎりぎりだった」
「そうだね」
「むむむ」
「どうしたんだ? イブ」
「ほらここは、私たちの前で売り切れになるのが話のネタ的に面白いでしょ?」
「いや、普通に買えた方がいいに決まってるだろう」
僕は呆れた目でイブを見る
「話のネタ的に面白くても今買えなかったら悲しいよ」
「だから、少し葛藤してたんだよ」
「そこは葛藤するところなのか?」
「そうなんだよ」
「そ、そうか……」
「……フレア?」
イブの自信たっぷりな返事に思わず瞠目してしまうが、エリイの声で我に返る。
「いや、どう考えても買えた方がいいだろう?」
危ない危ない、あまりにも堂々とした返事に思わず感心してしまった。
しかし、言っていることがおかしということにかわりない。
「案外、こういう時って後で貰えたりするからね」
「そうか? そんな経験無いが」
「まあ、買って帰ろう」
そうこう言っている間に自分たちの番がやってくる。
一人一つまでだそうだ。
そうじゃないとあっという間になくなるだろうし、売り切れもわかりずらいだろう。
まあ、それはともかくとして、この世界で初めてのアイスクリームだ。
アイスクリームと聞いてソフトクームを連想していたのだけど想像と違いカップにアイスクリームが入っているタイプだった。
カップは木を加工したものが使われている。
スプーンも同じく木製だ。
どうやって作ったか想像も付かないが、大量生産できるものではないだろう。
しかし、よくアイスクリームなんて売りに出そうと思ったものだ。
魔法都市とはいえ物を冷やす魔法を使える者は意外と少ない。
加熱なら使える人が多い。
理由としては冷やすというイメージがしにくいと言うことが大きい。
水魔法から氷魔法に派生させることができるイブが、珍しいぐらいだ。
しかも、アイスクリームを作るとなると相当制御できないと難しいだろう。
どうやって作ったんだろうか?
アイスクリームの作り方を聞いてみたいが教えてくれはしないだろう。
僕の知る限りではこの国に技術を保障する法律はないようだしね。
「さっさと帰って食べようか」
「そうしよう」
「うん」
ふと、アイスを売っている店を振り返る。
黒髪の少年が店内にいるのが目に入った。
ふと前線の記憶からある言葉が頭をよぎった。
「知識チートか?」
拙作をご覧いただきありがとうございます。