転生生活 魔法都市エディミアル 復学
すみません遅れました。
食事が終わりいよいよ魔法学校へいく準備を整える。
と言っても学校に行く準備自体はとっくに終わっているから指定ローブを羽織るだけなんだけど。
しかし、学校でどんな扱いを受けるかという不安がよぎる。
アルヴァンスさんは、生徒には知られていないから大丈夫だって言ってたけど、やはり不安なものは不安だ。
「大丈夫ですよ」
その声に振り向くとフォーミュさんが立っていた。
ああ、そう言えばフォーミュさんがチェックしてくれるんだったな。
服装は大丈夫というところかな?
「フレアくんが捕まったという情報は、生徒たちは一切知りません。
わかりやすく言うと留学に行ってきたような印象を受けていると思いますよ。
マリコさんから指導を受けた以上あながち間違いではないですしね」
うん、まあ、分かっているよね僕の不安ぐらい。
知ってた。
準備が整い、いざ、魔法学校へ。
と、言ったところでエリイとイブが降りてくるのが遅く感じた。
「二人共遅いなぁ」
「淑女の準備には時間がかかるものです」
「前に聞いたことが有るよ」
前世でだけど
「ははは、そうですか。
前にも待たされた事があったのですな」
「うん」
待たされた……うん?
そうなんだろうけど、誰に待たされたのか覚えていないな。
まあ、いいか。
しばらく待っているとエリイとイブが降りてきた。
「待った?」
「いや、それほど」
「そう? それでも待たせてごめんね」
軽い調子で謝るイブ。
「どう?」
「可愛い」
僕がそう言うとエリイは顔を背ける。
髪を編み込んでいるからか、普段よりオシャレだ。
「ふふふ、時間をかけた甲斐はあったね」
編み込みで時間が掛かってたのか。
まあ、急いでいるわけでも無いので問題はない。
「準備は出来た?」
「うん」
「勿論」
エリイは頷き、イブが胸を張る。
「じゃあ、行こうか」
「うん」
「おう」
「行ってらっしゃいませ」
フォーミュさんの見送りと館を後にして僕達は魔法学校へ向かった。
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魔法学校に着くと久しぶりの姿に僕は、思わずため息を付いた。
「そう言えば、二人共精霊クラスだったんだっけ」
「うん」
「フレアもすぐになれるよ」
イブのいい返事の後に、エリイが励ましてくれる。
「そう? でもちょっと不安だな」
「なんで?」
イブの疑問の言葉にエリイが頷く。
「ほら、ちょっと性格に難はあったけどあのムストが精霊クラスになれなかったからちょっと不安でさ」
もし、あの時のままなら負ける気はしないけど、あれから数ヶ月は経っているんだ成長しているだろう。
「そういえばあいつ、精霊クラスに昇級したんだよな?」
あれから成長しているなら昇級は固いんじゃないか?
もし、それでも無理なら少し自分のことが心配になるんだけど。
「さあ? 知らないよエリイは?」
イブの質問に首を横に振るエリイ。
「そうか」
まあ、他のクラスだし交流があるわけでも無いから仕方ないか。
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教室へ向かう途中でエリイたちと別れて光の妖精クラスに向かう。
久しぶりに教室の前に立つと懐かしく感じられた。
教室の中からは話し声が聞こえてくる。
複数の話し声がありにぎやかな印象を受けた。
僕は、一息深呼吸をして教室の中に入った。
それまで教室を包んでいたにぎやかな音は、僕が教室に入ると同時にピタリと止まった。
僕は、その状況を気にせずに前に座っていた場所、生徒の席の前の方に座る。
「久しぶりだなフレア」
後ろから声をかけられたので振り返ると比較的なじみのあった生徒の一人を視界にとらえた。
「ああ、久しぶりドラフ」
その人物は赤色がかった茶髪の少年だった。
やや鋭い目をしているが笑みを浮かべているためか人相はそこまで悪く見えない。
しかし、誤解を受ける人もいるだろうと思わせる程度には鋭い目つきの持ち主だ。
「ペンドラゴン領に言って来たとかいう話は本当か?」
「どうやって知ったんだ?」
「担任のアメリア先生が言ってたぜ。
お前の大きすぎる光の魔力の使い方とかを覚えるためとか言ってたけど本当か?」
「まあ、確かに魔力制御の特訓は向こうでかなりやったよ」
魔方陣を複数展開するにはどうしても魔力制御を上げる必要があった。
それに実戦形式の訓練も何回かやる必要があったので制御が甘いと実戦に使えないから徹底的に鍛える必要があったのだ。
「なるほど、けどただでさえ制御がうまかったのにさらに上手くなったんだろう?
羨ましいな」
「羨んでないで自分でもやってみたら?
ねえ、フレア特訓の内容を教えてくれたりしない?」
「ああ、いいよクリア」
「ありがとう」
クリアは、おっとりした雰囲気を持つたれ目の少年だ。
頭部に煌めく金色の短髪を伸ばして女性ものの服を着れば10人中9.5人ぐらいは女性と認識するだろうそんな感じの優男だ。
まるで昨日にも僕がこの場にいたかのように話し始めるところに天然な感じがにじみ出ている。
「久しぶりです。 フレアさん」
「ああ、久しぶりミーミア」
ミーミアは、銀色の髪をした少女だ。
素朴な見た目でそばかすがある。
銀髪のせいで年寄りと勘違いされるのが悩みの種だと言っていたのを思い出す。
それは、今でも変わらないだろう。
しかし、彼女はそれほど気にしていないだろう。
少なくともあのことがあってからは気にした様子を見たことないしね。
銀髪は三つ編みに結われて眼鏡をかけた印象は、前世の図書委員を彷彿とさせるセットだ。
「ペンドラゴン領での特訓って厳しかったの?」
「そうだね。
死んでいてもおかしくないものもあったからね」
「そんなに!?」
「ああ、特訓より最初の試練の方が危なかったと思うけどね」
あの金髪のツンツン頭の少年がいなかったら死んでいた可能性が高い。
なにより、間違いなく途中の魔方陣の罠に引っかかっていただろう。
一通りペンドラゴン領での出来事を話したら今度はこちらが尋ねる。
「ところで昇級試験ってどんなのだった?」
「難しかったよ」
最初に答えてくれたのは、クリアだった。
「どう難しかったんだ?」
「魔法をバーンってやってぴったりだったら合格だって」
「はい?」
「魔法を放って的にぶつけて全て壊せば第一次審査は合格だったということだけどそれじゃあわかりにくいぜクリア」
「そう?」
僕に向かって聞いてきたので頷く。
「クリアって感覚で生きてるもんね」
「ん? ちょっと待って、今、第一次審査とか言った?」
「ああ、俺たちみんな仲良く第一次審査で落ちた」
「試験って何個あるの?」
「第三次まであって、二次は、筆記試験だな」
「うわ」
「なんだ、苦手なのか?
ああ、そういえば学校にいなかったから魔法基礎知識の授業途中までしか受けれて無かったよな」
「うん」
「まあ、フレアなら大丈夫だろ?
お前、授業受けてたときは大体わかってたじゃねえか」
「そうか?」
僕は、ミーミアを見ると勢いよく首を縦に振ってくれる。
「それで、第三次だが、これは精霊クラスの人と魔法合戦をして、その結果で判断されるらしい」
「なるほど」
前世の試験のイメージ通りなのは第二次だけか。
しかも聞く限りでは、主軸にはなってないみたいだ。
第一次は最低限の魔法制御を身に着けれているかを試すためだろう。
その程度のことを出来ない人物を上に上がらせるつもりは無いというところか。
まさしく振るいにかけられるわけだ。
第二次も似たようなものだろう。
魔法をいかに操るかが魔法士としてもっとも重要なことだ。
魔法を専門としてしている以上魔法学校は、前世で言うところの大学と専門学校を足して長くしたような学校なのだろう。
「因みにこのクラスからも合格者が何人か出てる」
ドラフの言葉にミーミアが反応する。
「あ、あれすごかったよね」
「ああ、ずっどーんってやつ?」
「そうそう、上級生を倒せるなんて意外とすごい奴だったんだね。
性格は、最悪だけど」
クリアのずっどーんが何なのかを教えてほしいんだけど。
「何のことだ?」
「ほら、あなたに突っかかってきてた侯爵家のお坊ちゃんよ」
ミーミアの言葉に奴の顔を思い出す。
「ああ、あいつか」
上級生を倒すのがどれだけすごいのかわからないが、少なくとも上級生に勝てると言うことはわかった。
「そんなに強くなったのか」
「ええ、けれど変だったわよ」
「変って?」
「クリアが一番何かを感じたみたいだけど」
「うん、あの人が戦ってた時、モヤモヤした感じだったよ」
「モヤモヤ?」
クリアの言うことはハッキリしない。
「うん、モヤモヤ」
「どういうことだ?」
僕は、二人を見るが、
「さあ、わからないわ」
「俺もわからなかった」
答えるだけだった。
まあ、何にせよ。
「そのモヤモヤが何にせよ、あいつは精霊クラスになったわけか」
そう呟くと三人とも頷いた。
妖精クラスでさえでかい顔をしてたやつが精霊クラスに上がったかと思うとげんなりするのだった。
拙作をご覧いただきありがとうございます。